EEE 会議(Re:燃料電池=水素エネルギー開発の問題点:中村裕司氏)   2003/7/22
 
標記のテーマに関連して、中村裕司氏(新日鉄エネルギーエンジニアリング事業部、本年7月1日まで世界平
和研究所へ出向)から次のようなメールをいただきました。ご参考まで。--KK
 
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さて、EEE会議で水素エネルギーに関する議論がありましたので、弊社の大橋
一彦氏に意見を聞いてみました。ご参考までに本文を転送いたします。
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A)全くご心配の通りで、其のために我々は平田 東大名誉教授と1987年から、第一
次、第二次石油ショック以後、天然資源の乏しい日本は、貴重な輸入エネルギーを
高度利用しなくてはならない。そうするには、水力発電所と同じに、エネルギーも
カスケード利用するべきである。

B)そのためには、コージェネレーションの普及が不可欠であり、その燃料として
は、地球温暖化問題が益々激しくなるので、化石燃料中で最もクリーンな天然ガス
をこれまでのようにLNG一辺倒で輸入するのを避け、セラーから足元を見られること
を防ぐ意味でも、ロシア極東に広く埋蔵されている天然ガスを直接パイプラインで
輸入し、域内のエネルギー・セキュリティーを高める必要があると主張してきた。

C)そのために、我々は1997年から北東アジア天然ガス&パイプライン・フォーラム
を立ち上げ、ロシア、中国、モンゴル、韓国とともに北東アジア天然ガス・パイプ
ライン・ネットワーク案を立案し、以後、国際的に推進している。

D)2020年ごろからは水素時代になるので、1999年には同上、平田先生と小生とで、
日本水素フォーラムを設立し、2000年12月には日経新聞社と共同で、世界の水素
研究の第一人者を集め、日本経済新聞社ホールで第1回東京国際水素フォーラムを
成功裏に開催した。この時に、世界の専門家から、日本は欧米のようにNatioanl
Hydrogen Associationなるものがないので(あるが横浜国立大学の大田時夫
先生が、排他的な主として学究的な日本水素エネルギー協会HESSを推進)、是非、
設立して欲しいとの要請を受けた。

E)水素の製造は、今後の10年間は間違いなく、天然ガスを原料として蒸気改質
(MRS)で製造するのが最も経済的であり、次第に風力、ソーラー等の再生可能エネ
ルギーで製造することになる。したがって、出来るだけ早期に北東アジアに天然ガ
ス・パイプライン網を完備し、次第に、水素が製造されるようになったら、そのパ
イプラインを利用して水素を少しずつ注入して所謂ハイタン(Hythane+Hydrogen
ーー米国の商標登録)として、またさらに水素の濃度を高くして、ハイドローセン
として輸送することになる。我々はそのために、文部科学省の委託で、新日鉄
中央研究所でそのラインパイプ材の研究も実施している。

F)また今年アジアでは初めて開催された世界ガス会議で国際共同論文として発表
し、最優秀論文集を受賞したのが、この国際的な水素輸送パイプラインのパイ
ロット・パイプラインの実現を目指すものである。

G)小生および平田 賢先生のこれらに関する論文は多数出しているのでご要請が
あれば、コピーを作成させていただきます。

H)今年も、9月4日〜15日にかけて、環境省の委託で、平田、大橋は、欧米の
第一線水素研究所を訪問し、最新R&D状況をヒアリングする予定である。

   中村裕司拝