EEE会議(Re:核燃料サイクル・オプション論争:永崎氏→豊田氏)................2003/7/25
 
標記論争につきましては、豊田正敏氏のご意向もありますが、まだまだ議論すべき問題点があるので今しばらく続けてほしいというご要望も多々ありますので、豊田氏にも是非ご理解いただいて今まで通り継続したいと考えております。
 
という次第で、永崎隆雄氏(日本原子力産業会議)から次のようなメールをいただきましたので、早速ご紹介します。ご参考まで。
他の方々からの建設的なご発言を歓迎します。原則として署名メールが望ましいですが、状況によって「匿名」(ハンドルネーム)での配信も可能です。
--KK
 
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  豊田様は私の無理解を理由に、論争取りやめを提案され、ご自分の説を要約されました。

私といたしましてはまだまだご教示を頂きたい点もあります。私の回答や質問に対してどのようなお考えなのか、不愉快とは思いますが、何卒お答えいただけたら幸いです。

豊田様と同意できる点を以下にまとめて見ました。又、豊田様の回答に同意できなかった点を以下に明記いたします。 私の質問に対して回答が得られず、私の理解が進まなかった点を最後にあげてあります。よろしくご教示ください。

T. 豊田様に同意している点

 @わが国の核燃料政策の基本は、高速増殖炉・プルトニウムリサイクルである。

 そのためには、高速増殖炉及び高度再処理技術の経済的な実用化が不可欠で、全力で取り組むべきである。

A燃料サイクル政策は、経済性のみで判断すべきではないが、経済性は重要な判断材料の一つである。

 

U. 豊田様と不同意の点

1.    「  プルサーマルは短期間のつなぎにすぎず、これを続けたからといって高速増殖炉・プルトニウムリサイクルが実現するわけではない。

  現段階で、プルサーマルに他に重要なメリットがあるとは考えられない。」  

(私の考え)

プルサーマルは高速炉プルトニウムサイクル実現の重要な第1歩で、高速炉システムへ移行が完了するまでの約70年〜100年間、重要な役割を果たすと思います。

 

     国産エネルギーであり、石油やウランを安く購入するためのバーゲニングパワーである

     将来世代への未処理使用済燃料という負の遺産を残さない方法である

     使用済燃料の使捨てより、高レベル廃棄物の環境負荷が時間的にも量的にも遥かに少なくなる

     プルトニウムの迅速な燃焼処分による核不拡散性を向上し、国際信用を高める

     米国もロシアも解体核プルトニウムは軽水炉で燃焼処分する

5  軽水炉再処理技術の習熟、改良によるコストダウンができる

     高速炉立ち上げ初期のプルトニウム供給ができる

     高速炉再処理技術基盤の構築

     科学技術立国の新産業創生

     原子力の発電利用から有用放射性物質利用への発展進化

 

2.     「   高速増殖炉またはプルサーマルが経済的になる40~50年間、長期貯蔵し、40~50年後に、これらが経済的になれば、プルトニウムリサイクルをするほうが遥かに経済的に得策である。

  六ヶ所の再処理を長期間続けても、次に作る第二再処理工場の再処理費は安くならない。」

  

 (私の考え)

プルサーマルはもう既に火力や水力に比べ充分安くできるので、これを実施しながら経済性改良や高速炉再処理の準備をするのが良いと思う。

直接処分や長期貯蔵方式は脱硫装置のない火力と同じで、確かに安そうですが、社会的に許されるとは思えません。

また直接処分・使い捨てもちゃんとしたガラス固化等の処置をすれば、許されるのでしょうが、再処理プルトニウムリサイクルより高くなる可能性がある。

 

我々は今、世界のトップランナーで核燃料サイクルを改良する立場にあり、民間再処理事業主体も持っているのですから、今ある事業主体が既存の技術で早く商業化し、早く利潤を挙げ、自らR&Dを実施し、事業を発展させるのが良いのではないでしょうか?

長期貯蔵で35年間も事業を中断していたら、経済的になるどころか、折角できた事業主体も滅び、事業化基盤が完全に崩壊しませんか?

技術基盤が崩壊したら、誰も安くしてくれないのではないでしょうか?

民間事業主体ができているのに国にR&Dを35年もやってくれとも言えません。

 

3.     「   高速炉が実用化されれば、貴説のように大量の初装荷プルトニウムを必要とする。このためには、軽水炉の使用済燃料を約2万トン貯蔵しておき、高速増殖炉の立ち上げの段階に再処理容量も2千トン程度に増やして、再処理によって回収されるプルトニウムを初期炉心に供給する必要がある。長期貯蔵を必要とする理由の一つはここにある。従って、プルサーマルによってプルトニウムを無駄に燃やす余裕はそれほどないはずである。」

(私の考え)

 豊田様の説では高速炉建設が急成長すぎ、原子力産業が断絶しませんか?

 

   原子力の建設導入はそれを支えるメーカへの発注が断絶せず、メーカ事業が持続できるように均質化することが望ましい。これによって建設コストも低減できると思われます。又、メーカ断絶は我国原子力基盤の弱体化につながります。

       我国原子力の目標規模を70GWとし、原子炉の寿命を約60年として、60年で原子炉が更新していくとしますと、毎年1.2GW規模で建設導入していけばよい事になります。

       高速炉の導入を毎年約1.2GWずつ増強すれば、60年で70GWになり、更新を迎え、またの1.2GWずつの導入につながります。こうして、メーカは受注が途絶えず、事業を継続できます。

       その時の再処理規模は年間約7.2dPufを供給する規模になります。使用済燃料で約1200dの規模で、六ヶ所工場の800dに後400dを追加すればよいことになります。

       豊田様の2000d規模といたしますと約35年で高速炉が70GW規模に立ち上がり、後の25年は高速炉の発注がなくなります。そしてこの断絶期間に我国より高速炉メーカは消滅してしまいます。今の米国は約25年の断絶に直面し、その対策に政府が乗り出していますが、うまく行くのか世界が注目しています。

       実際は我国の軽水炉の寿命更新とそして現状の六ヶ所再処理工場規模と合わせた導入になります。その時には軽水炉の集中的な更新を均質化した更新と軽水炉での更新も必要になります。

 

4.       「 原子力がコンバインドサイクル火力に比して高いことは周知の事実である。」

(私の考え)

まだコンバインドサイクル火力は大規模に導入されておらず、インフラ整備まで入れたら、果たして原子力より安くなるかどうかは分かりません。

原子力も米国のように保修等の改善で稼動率が92%になり、又、第三世代炉のABWRAP1000が現在建設費の半額の1000j程度を提示している事より、決して黙って負けているとは思えません。フランス電力EDFも原子力のコストダウンで頑張っています。

 

5.      「  このままでは、六ヶ所で再処理してプルトニウムを回収すれば、プルトニウムが増え続けることになり「余分のプルトニウムは持たない」との国際約束に違反し、米国始めアジア諸国の了承が得られないのではないかと懸念している。」

 (私の考え)

    国家がこのプルトニウムを核兵器にする意思がない事、そして原子力委員会の平和利用監視機能が大切と思います。

     この約束は国の約束ですから国が平和利用の方針を変えない事が第一の国際信用と思います。

     この約束は”使用目的のない”余剰プルトニウムを持たないとなっています。

     国と電力はプルサーマルを実施するという明確な方針ですので国際信義は保たれていると思います。

     本年初めに原子力委員会は再処理工場の稼動条件として電力のプルサーマル計画の提示を求めました。

     本年4月、関西電力の藤社長は福井県知事にプルサーマル実施の再申しこみを行いました。

     そして今のところ米国もIAEAも近隣アジア諸国も日本を信頼し、クレームをつけて来ていません。

 

 6. 「原子力委員会の「核燃料サイクルのあり方を考える会」は単に聞き置くだけで硬直した政策を押し付けるための会であって、政策に反映するつもりがなければ無意味である。」

 (参考までに)

 原子力委員会は各界の意見を取りまとめ、これを地元の人や各界の国民に提示し、また次期長計に反映させる計画であるといっていました。

 

7.何故、施設外の中間貯蔵はよくて、原子力発電所敷地内の長期貯蔵は認められないのか、疑問である。 発電所サイトでの使用済燃料貯蔵の増設に地元が了解しないのは、原子力委員会が地元に使用済燃料は敷地から運び出すと約束しているので、地元の了解を得ることが難しいのであって、状況変化により、長期貯蔵を選択肢とする政策変更をするとともに、地元に対しては、長期貯蔵は、発電所敷地には、十分なスペースがあり、かつ、40~50年の期間、貯蔵しても安全上問題ないことを説明して了解してもらう必要がある。勿論、地元住民の理解を得るためには、40~50年後に必ず運び出すことを確約すべきである。」

 (私の考え)

 地元の人の身になって考えてください。経済性が良いというだけの身勝手で何時までも置いておかれては迷惑ではありませんか。豊田様の提案の“40〜50年後に必ず運び出す”との確約をだれが信じますか?六ヶ所再処理工場なら行き先も決まっていますが、立地未定の直接処分場に地元が了解しますか?その時になって経済性を鑑みて等と優柔不断では誰も了解はしてくれないと思います。

 

8.「 しかし、高速増殖炉の実用化の見通しが暗いとか、実用化されても、プルサーマルさえ、思うように進まない状況では、大量のプルトニウム、ナトリウム、正のナトリウムボイド反応度などにより、地元住民に軽水炉並に理解が得られるか、どうか疑問がある。」

(私の考え)

あれだけ反原子力の強かった米国が、今では国民の過半数以上が原子力支持になっています。日本も原子力の諸々のマイナス発展因子を構造改革すれば、米国のように発展モードになると思います。そして今の構造改革期が最もそのチャンスと思います。

  

V.豊田様無回答の点

 上記の私の不同意理由についての豊田様の考えをご教示ください。また、上記に追加する以下についてもご教示ください。

1.プルサーマルは高くつくと言っていますが、石油火力や水力等と比較してkWh当たり幾ら高くなりますか。

2.経済性第一ではないとおっしゃいましたが、経済性から使用済燃料は長期貯蔵し、後世にその処理を回す方が得策との御意見と矛盾しませんか?

3.豊田様は一体どのような日本の将来像創りたいのですか?

再処理事業は豊田様にとってなんだったのですか?

4.プルサーマルは米国、ロシアで解体核の処分に使う計画ですが、これをどう考えられますか?

5.プルサーマルは高いと批判される豊田様は当時の社長として、何故、六ヶ所再処理工場建設費を1.7兆円と言う高額で納得されたのですか?他人事のように再処理が高いと責める理由は何ですか?部下が建設コストを鵜呑みにしたと激怒されたそうですが、ご自身の責任はどう考えられたのですか?

                   以上