EEE会議(Re:核燃料サイクル・オプション論争: 豊田氏→河田氏)................................2003/7/28
 
標記件名の河田東海夫氏のメール(7/25)に対し、豊田正敏氏から次のようなメールをいただきました。ご参考まで。
--KK
 
************************************************
 
河田氏の解答に対して次のようにコメントします。

私は、高速増殖炉が実用化されるまでの40~50年間、長期貯蔵し、40~50年後に高速増殖炉が実用化された時点
で、再処理・プルトニウムリサイクルをする方が遥かに得策であると提案しており、現段階で直接処分に賛成
しているわれではない。もし、高速増殖炉が40~50年後に実用化されれば、直接処分することは考えられない
し、逆に、実用化されなければ、原子力は今世紀限りでやめることになろうから、処分場の面積についてそれ
ほど心配する必要はない。即ち、貴殿の言っておられる「日本が今後何世紀に亘って、原発に依存する」ため
には、高速増殖炉の実用化が前提条件となり、その場合には、その時点で長期貯蔵した使用済燃料を再処理し
プルトニウムを回収し、高速増殖炉の初装荷燃料として供給しなければならないので、直接処分は考えられな
い。問題は何時になっても高速増殖炉の実用化の見通しが不透明な点にある。以上の点から、処分場の所要面
積の議論は極論すれば意味がないと考える。

しかし、私は参考までに、貴殿の計算をチェックしたいと考えているが、私が要請したベントナイトの厚さ及
び密度(珪砂含有量)、岩盤特性、深度、ベントナイトの飽和に伴う熱伝達率の時間的変化、ガラス固化体の場
合のオーバーパックの腐食膨張に伴うベントナイトの力学特性特に流動化現象なども含め、計算の前提条件、
処分場の設計内容及び検討結果の詳細については、殆んど説明されておらず、チェックのしようがない。再三
にわたりその提出を要請しているこれらの資料を至急私宛に送付願いたい。何故、国際会議に提出されている
資料が、直ちに提出できないのでしょうか。

「SKBの場合、ベントナイトを厚さ70cmでキャニスターの周りを埋める」と仮定しておられるが、ベントナ
イトの厚さ及び密度は、
@ 核種保持性能
A 熱伝導性
B 力学特性(弾塑性体として、クリープ特性、過剰間隙水圧、膨潤圧)
C 膨潤性
D 機械的及び化学的緩衝性
E 通気性
を考慮して決めるべきであるが、SKBの場合、キャニスターは、厚さ10cmでCuの外張りがされているので腐食
膨張を考慮する必要がないので、50cmで十分と考える。私はこの点についてSKBの副社長に聞いたことがある
がそこまで考えて決めたものではないとの返事であった。これに対し、ガラス固化体の場合、厚さが20~30cm
の炭素鋼の場合、腐食膨張により、容積が3倍になる点を考慮すれば、70cm程度の厚さが必要になるのではな
いかと考えている。
計算の前提となる飽和に伴うベントナイトの熱伝導率の時間的変化などその技術的根拠をもっと具体的に教え
てほしい。また、両ケースについてそれぞれの処分場の設計とアクセス坑道及び連絡坑道を含む寸法の入った
処分場レイアウトの具体的図面を示してほしい。

もっとも、私は、処分場のサイトが決まっていない現段階で、最適設計を検討することに意味があるとは考え
ていない。岩盤の特性や深度によって大幅に違ってくるし、ベントナイトの長期力学特性などについても十分
なデータが得られているとは思えないからである。貴殿の言っておられる軟岩の堆積岩の場合は、岩盤の強度
と深度によっては、アクセス坑道や連絡坑道の掘削の方が至難となることが考えられ、連続水平配置は
retrievableの観点から可能かどうかと言った問題もある。また、外部から岩圧がかかり、内部からキャニス
ターの腐食膨張に伴う応力がかかる場合の長期に亘る力学的挙動は解析は可能であろうが、それが正しいかど
うかの実証ないし確証は現段階では不可能と考える。

最後に、「原子炉級プルトニウム」に関する発言は、極めて重要であり、もし、これが事実であるとするなら
ば、わが国が「余分のプルトニウムを持たない」との国際約束をする必要もなく、再処理工場及びMOX燃料工
場の保障措置やMOX燃料の物的防護対策も、厳重にする必要がないと考えるからである。このような重要な問
題に対し、貴殿は、1962年の古いデータのみで推論されており、その後の爆縮の技術進歩について何ら検討も
しないで無責任な発言されるのは、問題であると言わざるを得ない。   以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp