EEE会議(Re:原子力開発の進め方: 核燃料サイクル・オプション:豊田氏のコメント)....2003/7/29
 
標記テーマに関し、豊田正敏氏からさらに次のようなメールをいただきました。同氏も(条件付で?)この論争の継続に同意されておられますので、どうぞ皆様で、引き続き活発かつ建設的な議論をお願いいたします。
 
また、豊田氏のご指摘を待つまでもなく、建設的な議論を行うためには、少なくとも論争相手の最近の発言(Eメール)には十分目を通しておいていただきたく、そのために当会議のホームページ(http://www.eeecom.jp/) の「バックナンバー」欄を最大限に活用してください。現在は、どなたでも自由に閲覧可能になっています(ユーザー名:backnumber, パスワード:rose)。8月10日以降は、正式に入会手続きをとられた会員(特別会員、法人会員、一般会員、海外会員)のみ閲覧可能となります。右念のため。
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 私が、今回で打ち止めにするといったのは、私の説明を理解しようとしないのか、理解する能力がないのか
は判らないが、同じ説明を何回も繰り返さなければならず、また、本質的な議論に関連のない失礼な質問を繰
り返される相手との討論をやめることにしたのであって、この問題の重要性にかんがみ、この議論そのもの
を止めることを考えているのではありません。今回の柴山氏の今後の進め方についての提案は、私の考えてい
ることとほぼ同じでありますが、もう少し、具体的、かつ効率的に議論が進められるようにするために、今ま
での原子力学会や「エネルギー」での討論などから、私の考えを整理して述べ、今後の進め方の参考にされる
ことを希望します。十分予習をされた上での忌憚ないご意見や反論は歓迎します。ただ、議論がすれ違いに
ならないよう進められることを希望します。

1. 核燃料サイクル政策の基本
わが国の核燃料サイクル政策の基本は、ウラン資源を60~70%有効活用できる高速増殖炉・プルトニウムリサイ
クルであって、プルサーマルは高速増殖炉が実用化されるまでの短期間のつなぎにすぎない。

2. 当面の再処理、プルサーマルの必要性と長期貯蔵
当面、英仏への再処理委託に伴って返還される32トンのプルトニウムは、米国始め関係諸国の核転用に対する
疑念を晴らすため「余分のプルトニウムは持たない」との国際約束をしていることからも出来るだけ早くプル
サーマルで燃やさざるを得ない。高速増殖炉の実用化が不透明な現状では、軽水炉で燃やすプルサーマルによ
らざるを得ない。

また、六ヶ所再処理工場は、現在、原子力発電所に大量の使用済燃料が貯まり続けており、もし、再処理しな
ければさらに使用済燃料が貯まり、大部分の原子力発電所が停止に追い込まれ、大停電となり、国民生活及び
わが国経済に深刻な打撃を与えることになるので、当面、再処理を続けざるを得ない。
然しながら、ウランの需給は緩んでおり、価格が安い状態が当分続く見通しであるのに対し、再処理費及び
MOX燃料加工費が、従来予想値の数倍になっているので、プルサーマルは従来の予想より極めて割高となって
来ている。しかも、高速増殖炉は実用化の見通しが不透明である。このような現状を考慮すると、中期的に
は、ウラン価格が安い間はウランを燃やし、使用済燃料は40~50年間、長期貯蔵し、長期貯蔵された使用済燃
料は、40~50年後の時点に、ウラン価格が上昇し、かつ、高速増殖炉またはプルサーマルが経済的になってお
れば、再処理・プルトニウムリサイクルを行い、それらが経済的になる見通しがなければ、直接処分を選択肢
とすべきである。しかし、この選択は、現在決めるべきでなく、40~50年後の後世の世代がそのときの状況を
判断して決める権利があり、現在のわれわれは、いずれの選択肢が採用されても可能なような資金を積立金制
度により、積み立てておく義務がある。

長期貯蔵実現のためには、まず、原子力委員会が、その後の情勢変化により、使用済燃料の原子力発電所敷地
内での長期貯蔵を有力な選択肢と位置づける政策変更を行い、次いで地元に原子力発電所の敷地内に貯蔵施設
を作ることを了承して貰い、そして、電力会社により貯蔵施設を完成させるという3段階のステップが必要で
ある。勿論、地元の理解を得るためには、40~50年後には、使用済燃料を敷地から持ち出すという確約をすべ
きである。
従来、原子力委員会が地元に使用済燃料は必ず再処理工場に運び出すとの約束をしている経緯もあり、地元の
了承を得て貯蔵施設完成までには、少なくとも10~15年かかると考えられ、その間は再処理を続けざるを得
ない。なお、40~50年間、長期貯蔵した場合と即時再処理の場合の経済比較を実質金利3%とし、即時再処理費
を1.0とnormalizeして比較すれば、表1に示すように長期貯蔵の方が遥かに安くなる。なお、長期貯蔵期間中の
放射能の減衰及び再処理技術の今後の進歩による再処理費の減を考慮すれば、差はさらに広がることになる。
従って、積立金としては、即時再処理の再処理費の1/3程度を積み立てておけばよいと考える。
  
表1 長期貯蔵後再処理と即時再処理との経済比較
        即時再処理   長期貯蔵後再処理   
                (40~50年間)
再処理費      1.0       1/4~1/3
廃棄物中間貯蔵費  1/5         −
使用済燃料貯蔵費  −         1/5
合計        1.2       0.45^0.53
高速増殖炉が実用化されれば、その立ち上げの段階に大量の初装荷プルトニウムを必要とする。このために
は、拙著「原子力に明日はあるか」(1999年原子力情報センター発行)p.57~58にPuバランスの検討結果を説明
しているように、軽水炉の使用済燃料を約2万トン貯蔵しておき、再処理容量も2千トン程度に増やして、再処
理によって回収されるプルトニウムを初期炉心に供給する必要がある。これが、長期貯蔵を必要とする理由の
一つである。

3. プルサーマルと直接処分
 高速増殖炉が実用化されれば、再処理によって回収されるプルトニウムは、高速増殖炉の燃料として活用す
るのが最も望ましく、直接処分を考える人は皆無である。私の提案する長期貯蔵では、高速増殖炉が実用化さ
れることを前提にすれば、直接処分をする必要は全くなく、現段階では、直接処分に賛成しているわけではな
い。特に、JNCが言っているように、2030年に実用化されるのであれば、高速増殖炉の立ち上げの段階に大量
の初装荷Puを必要とするので、プルサーマルでPuを無駄に燃やす余裕はほとんどないはずである。しかし、後
述のように高速増殖炉の実用化の見通しが不透明であることが問題である。

 現在貯まっているプルトニウムは、2で述べたような理由により、プルサーマルによって燃やさざるを得な
い。しかし、原子力委員会は、この本音の理由によって地元住民の理解を得ようとせず、理由にならない理由
を並べ立てて理解を得ようとしているところに問題がある。このような態度では福島県知事始め地元住民の理
解は得られないのではないかと懸念される。次に原子力委員会がプルサーマルが直接処分に比して優れている
と主張している主な理由が不適当である理由を述べる。

@ エネルギー・セキュリティ
原子力発電のエネルギー・セキュリティのためには、プルサーマルによる僅か1割程度の自前のエネルギーを
持つだけでは不十分であって、国際的地域紛争などによるウランの供給杜絶に備えて、ウラン供給国を3カ国
以上に分散すると共に、3年間の備蓄により、ウランの供給確保をはかる必要がある。

A 高速増殖炉の実用化に備えてプルトニウムの取り扱いの経験
  プルトニウムの取り扱いの経験は、当面プルサーマルを行うことと六ヶ所で再処理することにより、十分
な経験は得られる。しかし、高速増殖炉及び高度再処理技術は、それとはかなり違った技術であり、その早期
実用化のための技術開発のテンポがあまりにも遅すぎ、実用化の見通しが不透明である点が問題である。

B 環境負荷
環境負荷については、ガラス固化体の処分も直接処分も、高レベル放射性廃棄物の処分のため、放射能を封じ
込めるバリアとして、オーバーパツク、ベントナイト及び地質の3つのバリアを考えており、直接処分の場
合、オーバーパックに鉄の容器の外側に銅またはTi合金の外張りをすることによって、地下水に対する腐食を
小さくし、耐久性を高め、封じ込めに万全を期している。従って、各国の安全評価の結果によれば、両者に環
境負荷に対する影響に大差はない。
 
しかしながら、再処理の場合、ガラス固化体の20~30倍の容積のTRU(超ウラン元素)廃棄物が発生し、しかも、
その処分概念は確立されておらず、特に、ハル・エンド・ピースや沃素除去フィルターなど封じ込めが難し
く、環境負荷への影響が大きいと想定されるものがある。さらに、再処理、MOX燃料成型加工工場及びTRU処理
での従事者の被曝及び環境への影響も考慮しなければならない。以上のことを考慮すると、再処理、プルサー
マルの方が環境への負荷は大きいと考える。

 C 核拡散抵抗性
 使用済燃料の直接処分は、使用済燃料を地下数百メートルに深地層処分し、人間環境から隔離することであ
り、強力な国際テロ組織といえども地下数百メートルの処分場から放射能の高い使用済燃料を持ち出すには、地
上に大きな櫓を建て、大量の土砂を搬出し、放射線防護措置をした上で取り出すことになるが、このためには
1~2年以上の歳月が必要であり、周辺住民に気づかれずに作業することは不可能である。原子力委員会は、長期
的には、放射能が低減し接近が容易になり、盗掘の可能性があるというが、これを取り出すためには、周辺住
民に気づかれずに、盗掘することは不可能である上に、これを取り出すためには、処分するための資金より遥
かに多額の資金が必要である。また、廃棄体からプルトニウムを取り出すためには、放射線下で、オーバー
パックを剥がし、ガラス固化体をフッ素で溶かした上でなければ、ウランとプルトニウムの分離は出来ない。
それよりも、再処理工場からプルトニウムとウランの混合粉末を持ち出すとか、MOX加工工場や原子力発電所
からMOX燃料を持ち出すとか、MOX燃料を輸送途中に奪取する方が容易であり、核拡散の潜在的危険性は遥かに
高い。従って、厳重な保障措置と自衛隊の軍艦による警護などの物的防護対策をとることにより、核物質の転
用防止に万全を期す必要がある。要するに、地上のプルトニウム粉末ないしMOX燃料のほうが、地層処分され
た使用済燃料より遥かに核拡散の危険性が高く、地層処分された使用済燃料の核拡散の危険性を心配している
世界の核不拡散論者はいないと思う。世界の常識は日本の非常識にならないように願う。

D 経済性
 原子力発電の発電原価が、コンバインド・サイクル火力に比べて高いのは周知の事実である。しかし、原子
力発電は大量の電力を安定的に供給することが出来、しかも地球環境に対する影響が少なく、かつ、エネル
ギー・セキュリティのため電源の多様化をはかる必要から、発電原価が多少高くても原子力発電は続けるべき
である。 
しかし、ウラン価格が安いままであるのに対し、再処理費及びMOX燃料加工費が予想外に高騰してきており、
プルサーマルは経済的に極めて不利である。電力自由化を控えて、発電原価を極力安くして国際価格に比して
割高な我が国の電力コストを出来るだけ安くし、わが国産業の国際競争力を高めることは電力会社の責務であ
る。発電原価が1円/kWh程度高くなってもたいしたことはないと言うようなことを電力消費者、特に、大口電
力消費会社が聞いたら、どのような反応を示すであろうか。彼らは、国際競争に打ち勝ち、生き残りをかけ
て、血のにじむようなコスト低減の努力をしているのに、電力経営者がそのような甘い考えで経営しているの
かといった非難が起こることは必至である。
従って、当面は安いウランを燃やし、使用済燃料は高速増殖炉の実用化または、プルサーマルが経済的になる時
点まで長期貯蔵すべきである。

 再処理・プルサーマルを採用することによる長期に亘る経済的負担増の妥当性については、原子力委員会の
みによって決めるべきでなく、一般国民、電力大口消費者、株主、県知事を始めとする地域住民、技術評論
家、経済評論家及びマスコミ関係者などの意見を幅広く聞いた上で政策的判断をすべきである。
 原子力委員会は、理由にならない理由を並べ立てるのではなく、何故、2で述べた本音の理由によって、地
元住民の理解を得ようとされないのか疑問である。

4. 高速増殖炉の実用化の時期
上述のように、核燃料サイクル政策を考える場合に、高速増殖炉及び高度再処理技術の実用化が何時可能にな
るかが重要な問題点である。
 昭和42年発足した動燃事業団は、それまで原研で進められていた高速増殖炉の概念設計を引き継ぎ、2000年
に高速増殖炉を実用化する目標で、実験炉「常陽」に続き原型炉「もんじゅ」の技術開発を進めてきている
が、それから35年経った現在、2次系のナトリウム漏洩事故により、その後の対応のまずさから今なお停止し
たままであり、何時になったら実用化出来るか不透明である。
「もんじゅ」の建設費は、当初、4000億円と見積もられていたが、その後、6000億円に増額修正された。しか
も、この6000億円には、建設利息や人件費などの管理費は含まれていない。この「もんじゅ」が電気出力28万
kWであるのに対し、フランスの電気出力124万kWの実証炉スーパーフェニックスの建設費も同程度の約6000億
円である。 そのフランスが経済性の見込みがないとして技術開発を中断した事実を厳粛に受け止めるべきで
ある。
高速増殖炉の実用化のためには、高度再処理技術の経済性のある実用化も含めて軽水炉並みの経済性が得られ
ることが条件である。高速増殖炉の実用化のために最も重要なのは、経済性の見通しのある単純化された設計
概念とコンパクトなプラント・レイアウトの確立であり、地域住民の安心が得られる安全性の確保である。こ
のような実用化のためには、

(1) 高度の高速増殖炉技術ではなく、ブレイクスルーによる設計概念、プラント・レイア    ウトを確立
し、それに基づく要素技術開発による実証確認によって実用化の見通しを得る必要がある。現在、JNCが実プ
ラントとして検討している熱交換器と一次ポンプの合体程度では、一次冷却系及び二次冷却系がなく、原子炉
容器内に内部循環ポンプを収めているA-BWRに比べて系統が複雑でプラントも大きくなり、経済的に比肩し得
るとは考えられない。フランスが経済性の見通しがないとして中断した実証炉スーパーフェニックスで採用し
たタンク型と比べても系統はむしろ複雑でプラントも小さくならないのではなかろうか。これら3者の系統図
及びプラントレイアウトを比較して見られれば明らかである。A-BWR並みの経済性を得るには、更なるブレー
クスルーが必要である。

(2) 要素技術開発の成果に基づき、経済性の見通しが得られれば、実証炉を建設する。
この際、問題なのは、プルサーマルに比してプルトニウム含有量が多く、ナトリウムのボイド反応度が正であ
り、かつ化学的活性の強いナトリウムを取り扱うことなどの理由から、現状では、地方自治体の了承を得るこ
とは極めて難しいことである。新設の軽水型原子力発電所の場合でさえ、計画決定から運転開始までに20年近
くかかっていることを考慮すべきである。また、どの機関が建設、運転を担当するかという問題もある。

(3) 実証炉での数年間の運転実績を見た上で、実用炉の建設に踏み切ることになろうが、この場合にも、同様
の問題があり、運転開始までには、長期間を要する。実用炉での数年間の運転実績を見た上で、その運転実績
が良好な場合に初めて電力会社は、商業用原子力発電所が建設に踏み切ることが出来ると考える。
  これらの点は、高度再処理技術の技術開発についても同じことを配慮すべきである。
 
 以上の点を踏まえて、時間軸をはっきりした実用化までの技術開発スケジュールを各段階ごとに詳細に作
り、計画どおりに確実に実施すべきであるが、現在のような技術開発体制で、漫然と「柔軟に」研究開発をして
いるのでは、40~50年後にも実用化の見通しは暗いと言わざるを得ない。JNCが2030年代に実用化できるといっ
ておられるのは、あまりにも楽観的過ぎると考えるが、もし、確信があるのであれば、実用化までの詳細な具
体的実施スケジュールを示して下さるよう重ねて要請する。ATRの経済性について、当初、軽水炉並になると
主張し、次に、石炭火力程度にはなると訂正し、結局は中断せざるを得なかったことを想起されたい。
 この問題に関連して、JNCの体質及び技術開発の進め方の改善も含めて中神氏と討論したいと考えている。
特に、動燃事業団は、原研では、高速増殖炉及び再処理施設などの大型プロジェクトの技術開発は無理である
として、作られたのであって、今回原研と統合されることになって十分な技術開発が出来るのか懸念してい
る。

5. 21世紀後半以降の高速増殖炉に代わる選択肢
上述のように、高速増殖炉の実用化の見通しは40~50年後にも不透明であり、核融合発電炉はさらに見通しが
暗い。従って、これらが実用化できない場合に備えて他の原子力エネルギーの選択肢についてその実現可能性
について検討すべきである。この問題については、EEE会議でも牧氏などとの間で討論されているが、さらに
次の観点から討議することが必要と考える。
検討すべき原子炉型式の候補としては、
@ 現在技術開発が進められているナトリウム冷却型高速増殖炉以外の増殖炉
ガス冷却高速炉、トリウム発電炉(溶融塩またはキャンドウ型)、鉛合金冷却高速炉など
A 高転換炉
高温ガス炉、低減速軽水炉、トリウム発電炉(再処理なしの溶融塩炉または軽水冷却型)
   これらの候補の中から、@ 安全性(原子力関係者の考える安全性のみでなく、地域住民の
安心が得られる安全性が必要である) A 信頼性 B 経済性 C技術開発の難易度D 技
術開発のための所要期間と資金 E 実施主体 などの観点から候補を2つ程度に絞り、その
実現可能性を技術開発とプラント設計を実施することにより評価すべきである。これらの候補
の大部分は、高転換炉または、増殖比が1に近いものであるので、今後百年程度の燃料供給
には、対応出来るが、その後の供給をどうするかを考えておく必要がある。

このためには、
(イ) 海水からのウラン採取
(ロ) 大電流陽子加速器による陽子とトリウムとの核スポレーション反応によって生成された中性子がトリウ
ムに吸収され、ウラン233を作る。
(ハ) 核融合炉(核融合発電炉ではなく、核分裂性物質の生成を目的とした小型炉である)の高速中性子をトリ
ウムに照射し、ハイブリッドによりウラン233を作る。
(ニ)  長期貯蔵の使用済燃料を再処理することにより、ウラン233またはプルトニウムを回収する。
などによるウラン資源の補給を必要とする。

  なお、柴山氏は、『海水からのウラン採取は、まだ基礎研究の段階であり、研究継続の必要はあるが、経
済性を含めて量産の可能性についての見通しが得られた後に議論すべきと考える。』といっておられるが、海
水中には、約45億トンのウランが含まれているが、その濃度が、1立方メートルあたり、僅か3mgである. し
かし、拙著「原子力に明日はあるか」(日本原子力情報センター発行) p.69~72に述べているように、最近、原
研により、捕集効率100万倍の捕集材が開発され、津軽海峡で実規模実験によって実地で確かめている。また、
海水温度が10℃上昇すれば、捕集効率が2倍になる。 その上、バナジュウム、コバルト及びチタンも副産物と
して回収される。今後捕集材の織り方の技術開発により、捕集効率をさらに2倍程度に高めることは可能と考え
られ、価格は、100ドル/kg程度になる可能性が゛十分あると考えている。 問題は、ウラン回収のためのイン
フラストラクチャーの建設費が高くつくのでその低減を図る必要があり、そのためには、適地の選定とコンサ
ルタント会社またはジェネコンの積極的な協力が必要と考える。私の再三の要請にも拘わらず、原研は、研究
開発機関であり、実用化はその使命でないことや原子力技術に関係のない海洋土木工学主体の技術開発である
こともあり、了承が得られなかった。
   以上のような検討にあたっては、さきに、提案している原子力開発の進め方に関する提言の4. 国際競
争力のあるナショナル・プロジェクトの進め方を参考にされたい。             以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp
 

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PS
上記文中(とくに冒頭部分)2箇所だけ、小生の判断で文言を修正してあります。--KK