EEE会議(核燃料サイクル論議に関する提言:古川和男氏)...................................................2003.8.4
 
先日(8/2)の豊田正敏氏の「雑感」に続いて、古川 和男氏(トリウム熔融塩国際フォーラム代表)からも次のようなメールをいただきました。ご参考まで。他の方々もどしどしご意見、ご感想をお寄せください。暑いときですから、あまり固く考えないで、気軽にメールしてください。主題から多少外れても構いません。匿名(ハンドル名)での配信もOKです。--KK
 
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    核燃料サイクル論議に関する提言                    
                            古川 和男

本会において、豊田正敏氏を中心に、JNC筋の中神・河田・永崎氏が「核燃料サイク
ル」問題について膨大な論議を積み上げられて居られる。その熱意誠意に深く敬意を表
したい。それに対し金子会長は第3者の発言を希望されているが応答は無いようであ
る。これは我々の怠慢と思うので、私の考えはかねがね公表済みでもあり、適役ではな
いがコメントを試みたい。

@論議すれ違いがあるようであるが、その根底には世代相違による「R&D 
Project」概念認識の差があるように思われる。これは、約四十年前の動燃団創設問題
とも関連して国内でも活発に論議されたが、FBR・ATR projects発足後は、我々
が注意(初心を忘れるな)を喚起しようとしても振り向かなくなった問題点である。
これは一言で示せば「Project Leaderを置く」ということだと承知している。意味す
る所は深く重い。それを豊田氏は強調されているが、若い?人には通じないのかと勘ぐ
る次第である。

A私のFBR評価も、ほとんど豊田氏と同じではないかと考える。1961-1980年辺りま
では、世界の動きと徹底的に関わったからである。それに基づいて新構想(増殖発電炉
概念否定[世界展開不可能]が基盤)を主張始めた。
私事が挟まるが一言補足すると、1987年末にはフランスで高速増殖炉Superphenix
が完成したが、仏電力庁(EdF)は「二号機を作れば国家は破産。古川案を検討した
い。」と、EdF総裁より松前重義東海大総長へ親書が送られ、翌年EdF・Clamart研
究所(パリ郊外 Fontenay-aux-Roses)で、「Th-MSR開発計画報告書」を共同作成した
が、仏原子力庁が巻返し実を結ばなかった。 しかし1998年にはSuperphenixの廃棄
決定です。我々は10年間、時代に先行しすぎたわけである。なお、OECD(経済協力
開発機構)内の2機関の国際エネルギー機関IEA(Int.Ene.Agency)と原子力エネルギー機
関NEA (Nucl.Ene. Agency)、およびIAEA(国際原子力機関)との異例の「共同調査
研究」:Three Agency Study(TAS)『次世代用原発の研究開発』が数年がかりで進めら
れ、2002年秋に公表されたが、そこでは我々の「FUJI」を含む12炉型が、国
際共同開発に推薦されている。

B Purex系の再処理技術が再生できるとは思えない。安全性・経済性から乾式、しか
も仏が基礎を作り、ソ連が仏・チェコの援助で開発した「直接弗素化揮発法(FREGATE)
が単純明快な解と思う。
 しかも、それで使用済み燃料を弗化物熔融塩にしたものは、また無理に固体燃料に戻
さず、そのまま熔融塩原発で燃やすのが全く合理的である。そして、安全性・核拡散な
どで決定的に有利な「トリウム熔融塩核燃料サイクル」に円滑に移行していったらよい
であろう。

C Pu thermalなどは、もしFBR実用化を確信しているならば一層、豊田氏も言わ
れるようにPuの無駄使い(目減りしてしまう)で、自己矛盾。Puは不足で困るからで
ある。
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以上で終わるが、基本思想は 拙著"「原発」革命":文春新書、文芸春秋社(2001.8.20)
を参照いただければ幸いである。蛇足までに少し持論を加えると、

D      どうも、JNC(原子力委員会?)の論議は、世界が視野に入っていないように
思われてしょうがない。それ(世界救済)を含まなくては日本は救えない。日本の戦略と
はなり得ないのではないか?
  さらにその前に、今後四十年?間にわたる人材"志気"に不安はないのであろうか?
 学部はなくなりーーー。(そのためにも、世界戦略でなければならないだろう。) も
しあれば、皆の問題である。聞かせて欲しい。これを豊田氏も最も心配されていると読
んだ。

E 四十年前とは違い、種々のproject事業主体は「企業」であるべきではないか? 
経済性見通し良好ならば、企業が飛びつく筈。リスクはあるだろうから、国民の同意の
もとに国家が一部支援するにしても、企業でなければ産業化は絶対無理である。正に、
Fermi炉から60年なのである。                (以上)