EEE会議(Re:核燃料サイクル論争:地層処分:河田氏→豊田氏)............................2003.8.8
 
標記テーマに関する豊田正敏氏と河田東海夫氏の論議のなかで、豊田氏より河田氏に対し関係資料の提供方ご要望がありましたところ、これに関し河田氏より次のようなメール(豊田氏あて)をいただきました。話がかなり専門的になっておりますが、ご参考までに。
--KK
 
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豊田様

ご依頼のありました資料は、来週ご自宅宛に発送させていただきますので、もうしば
らくお待ちください。

この解析で使用した緩衝材(乾燥密度1.6g/cm3,ケイ砂混合率30%)の熱伝導度は、
含水比が7%の時の値で、0.78 W/m/k です。 これは、今回の解析が、第2次取り
まとめのガラス固化体の評価との比較を目的としており、それと条件を揃えたためで
す。

同じ緩衝材仕様で飽和時(含水比約25%)には,熱伝導率は2.0程度となり、そう
した値を使えば温度はもう少し下がります。しかし、その場合、ガラス固化体の場合
の温度も下がることになります。

含水比の変化を考慮した解析を実施するためには,熱の変化と水の浸潤の変化を解析
の中で連成させる必要があり、第2次取りまとめでは、緩衝材の再冠水効果を評価す
るための解析を、熱・水・応力連成解析モデルによって別途実施しています。

今回は、概略の傾向を把握するための解析ですので、そのような複雑なモデルは使わ
ずに、通常の有限要素法コード(3次元、時間依存)で計算しています。また、同様
の理由で、ベントナイトの厚さなども仮設定で、最適化設計は一切行っておりません
(この段階でそうする意味はないことはご指摘のとおりです)。

一連の議論で、直接処分のデメリットについて言及してきましたが、これは豊田様は
現時点で直接処分を支持しているわけではないことを重々承知の上で、この点を述べ
てきました。それは、一部の新聞などに、「日本も直接処分でよいではないか」との
意見が散見されることと、その一方で技術サイドから、「直接処分にするとどういう
問題があるのか」について誰も意見を述べるものがいなかったため、あえてこの点に
ついて私見を述べさせていただいた次第です。「処分場の面積が、核燃料サイクル・
オプションの決め手になるといった本末転倒の議論」とのご批判をいただいておりま
すが、私自身、処分場の面積だけで、核燃料サイクル・オプションを決めるべきとは
決して考えておりません。しかし、地層処分の観点からは、直接処分は、ガラス固化
オプションに比べるとはるかに望ましくないオプションだという見解を持っているの
は事実です。

先月末出張が重なり、今月に入ってからは机の移動があり、本件の対応が遅れたまし
たことを陳謝いたします。

JNC 河田