EEE会議(Re:核燃料サイクル・オプション論争: 豊田氏→河田氏).....................................................2003.8.8

 
標記テーマに関し、豊田正敏氏より河田東海夫氏宛てに、再び次のようなメールをいただきました。ご参考まで。
--KK
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7月28日の私のメールに対するコメントをまだ戴いていないので、次に、そのコメントに加え、MIT報告の安、
鈴木氏の討論に対する私のコメントを加えて、再掲しますので、これらに対するコメントないし反論をお願い
します。特に再三にわたり提出を要請し、住所までお教えしているにも拘わらず、提出して頂けない資料を早
急に提出されるよう要請します。

『私は、高速増殖炉が実用化されるまでの40~50年間、長期貯蔵し、40~50年後に高速増殖炉が実用化された時
点で、再処理・プルトニウムリサイクルをする方が遥かに得策であると提案しており、現段階で直接処分に賛
成しているわけではない。

もし、高速増殖炉が40~50年以内に実用化されるのであれば、再処理によって回収される大部分のプルトニウ
ムは、高速増殖炉の初装荷燃料として利用されることとなるので、直接処分を考える必要はなく、逆に実用化
の見通しがないとすれば、ウランの寿命は今世紀限りで終わりとなり、処分場の面積を心配する必要はない。
即ち、貴殿の言っておられる「日本が今後何世紀に亘って、原発に依存する」ためには、高速増殖炉の実用化
が前提条件となり、その場合には、その時点で長期貯蔵した使用済燃料を再処理しプルトニウムを回収し、高
速増殖炉の初装荷燃料として供給しなければならないので、直接処分は考えられない。問題は何時になっても
高速増殖炉の実用化の見通しが不透明な点にある。以上の点から、処分場の所要面積の議論は極論すれば意味
がないと考える。

処分場の面積については、安、鈴木両氏も指摘されているように、現在考えられている
よりも多くの廃棄物を処分出来ると考えるが、処分場が決まった段階にその岩盤特性や深度を考慮の上、処分
概念を決め、最適設計を考えるべきである。

また、処分場の数については、わが国の場合、地下水の下流に人家があるような所は、下流の住民の反対で難
しいと考えられるので、海岸線か、沖合い立地または人口の殆んどない無人島に近い島に限られるが、このよ
うな適地は我が国に多数存在し、何れも地下水の動きがゼロであるので、地元住民の理解が得やすいと考え
る。問題は、一般国民の9割以上が高レベル放射性廃棄物の処分は危険であると思っている現状を打開するた
め説明の仕方に一段の工夫をした理解活動を積極的に行う必要があり、今のような状態では、処分場を了承す
る知事は一人もいないのではないかと考えられ、処分場は一ヶ所も作ることが出来ないと考える。私の経験か
らは、新しいプラントの立地については、最初の地点は、地域住民にプラントや施設の内容や安全性を説明
し、理解してもらうのに苦労するが、次の立地からは、我が国、特に近くに同じプラントや施設があり、それ
が順調に稼動している場合には、遥かに受け入れられやすい。

私が安、鈴木両氏の討議に対するコメントの中で提案したトリウム発電炉は、技術開発項目が、燃料の成型加
工技術のみであり、プルサーマルに比べて、燃料の利用効率が高く、経済性も優れていると考える。また、プ
ルトニウムは燃え尽くされるので、核不拡散の観点からも優れており、アクチニド元素(両氏が問題とされて
いるAm241も含めて)も殆んど発生しないので、今回議論している処分場の面積もウラン燃料の使用済燃料(MOX
使用済燃料を含む)の直接処分よりは勿論、アクチニド元素の殆んど大部分が含まれるガラス固化体よりも所
要面積が小さくなるのではないかと考える。Am241については、原子炉運転中のものの他に、最近の使用済燃
料が発電所に大量に貯まっている状況から燃料取出しから再処理までの期間は平均15~20年と見込まれ、その
間に溜まるAm241もガラス固化体に含まれる。しかし、私は、処分場の面積が、核燃料サイクル・オプション
の決め手になるといった本末転倒の議論をするつもりはない。
     
私が、再三に亘りその提出を要請している計算の前提条件、処分場の設計内容及び検討結果の詳細についての
資料を至急私宛に送付願いたい。何故、国際会議に提出されている資料が、直ちに提出できないのでしょう
か。』

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp