EEE会議(Re:米国の大停電をどう見るか:豊田正敏氏の感想).........................................2003.8.17
 
今回米国・カナダ両国の東北部地域で突発した大規模停電については、現在伝えられている情報から判断すると、発送配電システムが基本的に異なる我が国では同様な事態は起こりえない、という見方が一般的のようですが、これを単なる「対岸の火事」ではなく「他山の石」とすべきだという意見も出てきております。豊田正敏氏からいただいた次のメールは、そのような観点で大変重要なご指摘であると思います。--KK
 
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 <米国東北部地域の大停電に思う>

 私は、約50年前電力系統計画を担当し、また、米国に出張して、米国の電力会社間の電力融通及びそれに関連
する送電連携の調査をした経験があるのでその経験から、感想を述べます。
 今回の停電の原因は、送電系統の擾乱により、送電安定度が崩れ、脱調を起こして全系統が停止したのであっ
て、伝えられているような送電線設備の老朽化が原因ではないと考えます。 
 その原因としては、
@ 送電線に接地事故が起こり、その事故回線の遮断または、再閉路が遅れたため
A ある地域の発電所が停止し、その地域の電力需要を供給ための送電電力が増したため
勿論、power grid が長距離で、送電電力に対して送電容量が不足気味であったことも一因と考えられます。 
 その対策としては、
@ power grid の強化
A 送電線事故に対する保護系統の近代化(高速遮断、高速再閉路方式の採用)
B 送電安定度が崩れそうになった時に、周波数及び電圧の以下を検知して一部の系統を急速に切り離すこと
により、全系統の脱調を防ぐ保護方式の整備

 わが国の場合は、発送配電が一元化されており、電力系統計画を一貫して担当するシステムエンジニアがいる
ので、先ず、このような停電は起こらないと考えます。
 今回の場合、多数の電力会社特に、米国とカナダにまたがる電力会社で構成されているので、電力系統計画を
誰が担当し、送電系統の近代化のための改善工事は誰の責任で行うのかをはっきりさせておく必要があると考
えます。単に新エネルギー法案を作れば解決するとは考えられません。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp