EEE会議(Re:電気料金の国際比較:日本とイタリア)............................................2003.8.24


標記件名の小生のメールに対し、EEE会議特別会員の天野 治氏(日本原子力学会
の企画委員、東京電力技術開発研究所)から次のようなコメントをいただきました。
ご参考まで。--KK

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本件に関して少し順を追って説明してまいりたいと思います。

1.日本の一般の建設費は、先進7カ国の中で最も高く、その比率は3倍から5倍
で、1999、2001の統計で見ると、2001年は少し改善されてきている。

 (補足) 先進7カ国を調査したKPMGの資料参照

2.すなわち、国内向けの例えば、建築、土木、道路建設、下水道などの価格は国際
競争力はない。車や電気製品など、マーケットが国際的なものは早くから競争にされ
され、必死の努力、創意・工夫により、品質面でも価格面でも国際競争力があり、日
本を牽引してきた。

3.何故、先進諸国に比べて、3倍から5倍の価格差がついてしまったのだろうか。
日本は、敗戦から国全体で復興を開始した。それは大きな意味で開発である。開発段
階の初期では、コストよりもいかに時間との戦いで、効率的に開発するか。外貨を稼
ぐものと、国土の復興の二つに分類される。国土の復興に分類されるものは、あわせ
て、日本の経済的公平社会、国民皆中流という仕組みになっていった。ある時期まで
はそれでよかったのかもしれないが、実は、10年あるいは、20年前あたりから、
開発時代から成熟時代の移行として、経済公平社会から創意・工夫を活性化させる競
争原理を取り込んで、社会を活性化させる必要があったのではないか。日本が島国で
あり、そのような競争雰囲気の情報が伝わりにくかった点が10年、20年遅らせて
しまったのではないか。

4.現在の日本の不況は、このような日本を牽引してきたもののパワーが弱まったこ
とと、国際競争力のないものが足を引っ張りつつある。

5.そのような先進7ヶ国に比べて、3倍から5倍高い建設費をもちいて、電気設
備、原子力設備を作るわけですから、設備の建設費が高くなってしまう、また補修費
用もたかくなる。

6.対策として、競争で何処まで国際レベルまで戻せるか。たとえば、郵政3事業や
道路公団の民営化など、民の活用による競争原理の導入である。

7.電気料金特に、原子力のコスト削減をどうするか。競争原理のどんな具体的対策
で10年間でどの程度下げることが可能か、日米の専門家のインタビュー結果も踏ま
えて、米国原子力学会 燃料・廃棄物部会理事のターナー氏より講演していただく予
定です。(原子力学会秋の大会、9月25日 15時半から静岡大学 L会場、一般
公開で参加無料、金子先生の講演の後15時から)、(あるいは9月30日 9時半
から日本橋東友会館で 原子力学会主催、「変革の時、50年を振り返り、これから
の50年を考え始めよう、アトムズ フォア ピース イン ジャパン (アジア)
会議」 参加費 一万円)

8.原子力もコスト削減の努力はこれまでも実施してきた。基準の合理化、稼働率の
向上、点検期間の短縮など国際レベルに近づけるように努力してきた。その都度、大
きなトラブル、不具合の発生によりそのスピードが大きく減速もした。

9.原子力のコストを国際レベルに近づけるには、規制や考え方を国際標準にする必
要がある。これは、近藤先生からもメールをいただいており(2003年6月9
日)、継続して議論していきたいテーマです。また「アトムズ フォア ピース イ
ン ジャパン (アジア)会議」の「正しく恐がる、理解する、発信する」 のセッ
ションでも低放射線の影響(ホルミシス効果、毒物も微量では、薬の効果がある)な
どを取り上げる予定です。

10.       開発時代から成熟時代、そして価格を国際レベルにするには、さまざ
まなところで痛みを伴います。痛みを共有しながら、かつしかめっ面ではなく、楽し
みながら、論理的にかつオープンに議論しながら努力していきたいと思います。日本
人はもともと勤勉で勉強家で努力家です。それこそ、実は国際競争力の原点なので
す。一方、非常に雰囲気に流されやすい。自信過剰になったり(日本 イズ No
1)、自信喪失になったり、このため、幅広く正しい議論を展開する必要がある。論
理性については、原子力学会で議論し、政策的な点については、EEE会議などで議論
していくべきではないでしょうか。そして、日本の若手、ミドル、シニア、皆様の挑
戦者精神を刺激し、創意、工夫を活性化し、コスト面でも倫理面でも日本をリバイバ
ルさせましょう。

天野 治拝

(参考)「変革の時、50年を振り返り、これからの50年を考え始めよう、アトム
ズ フォア ピース イン ジャパン (アジア)会議」 プログラムと概要、およ
び申し込み方法は原子力学会HPのNewsの第2項目をご覧下さい。(なお、EEE会
議が後援しています)。またこのHPのNewsの第1項目には、原子力学会 秋の大
会のプログラムが掲載されています。)

http://wwwsoc.nii.ac.jp/aesj/