EEE会議(中国の電力自由化は?)...................................................2003.8.28


電力自由化というのは、米国のように進みすぎてもいけないし、どこかの国(日本と
は言っていません)のように進まなくてもまずいわけで、その辺の兼ね合いは国に
よっても時代によっても違うのでしょう。 隣の超大国・中国の場合はどうでしょう
か? 永崎隆雄氏(EEE会議特別会員、元動燃の北京事務所長)のご報告です。
--KK

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 中国の電力自由化が進んでいます。中国は我国などより遥かに遅れていたわけ
ですが、遅れを取り戻すべく、大きな改革を大胆に進めています。
 我国も過去の繁栄に酔いしれ、改革を怠ると三流国に転落するかもしれませ
ん。
 中国の基本戦略は対外開放、対内改革で外国を取り入れて、国を豊にし、国内
を改革しようと言う事です。
 外国企業やよい人材が来るためのよい環境を作れば、世界の繁栄が得られると
考えているようです。
 我国も外国に門戸を開く、自由化政策を取らないと中国に優良な企業を吸い取
られます。

 中国の電力自由化は発送電分離政策を取り、国家電力公司を2002年12月29日に
5発電公司、2電網公司、4補助事業公司に改組。
 我国よりも発送電分離等の新しい芽を生む既得権限の破壊が進んでいます。
 発送電分離になれば、原子力発電所も地場会社化するというようなことが起こ
るわけで、地元対策上は良いわけです。この結果がよく出るかどうかは今後見守
る必要がありますが。

 もう1つ注目すべきエネルギー部門改革は石油部門です。
 ここでは石油探鉱採鉱国有企業が利潤が上がらず、新しい油田開発ができなく
なりました。そのため、ここでは発送電分離でなく逆の上下流統合が行われてい
ます。これから原子力の核燃料サイクル開発資金を得るためにはこれも必要と思
われますが、如何なものでしょうか。皆様のご意見を賜れば幸いです。

中国の電力自由化
 中国政府(国務院)は1997年の行政改革(政府機関と企業の分離)で国有電力
会社、国家電力公司を設立し、1998年には電力工業省を廃止した。
 国家電力公司は発電設備、約1.8億kw(全中国の約60%)の国有企業で
日本の全電力設備(2.3億kw(01年))規模の巨大企業。

更に、2002年12月、電力自由化(発電と送電の分離,価格競争電力網接続制
度)のため電力組織改革方案(発電所と電力網の企業分離の実施等)に則って、
国家電力公司を以下の通り改組した。

1) 発電部門の再編
 5社の全国的な独立発電事業者(IPP)に再編成

2) 送電部門の再編
 南北の二大電力網会社に再編成

@ 国家電網公司が華北、東北、西北、華東、華中(5電力網)を管理
A 中国南方電網有限責任公司(広東省、海南省と国家電網公司の共同出資会
社)が広東・海南と雲南・貴州・広西を管理

3)  国家電力管理監督委員会の新設
 国務院直属の電気事業管理監督機関。職責は以下の通り。

@ 市場運営規則の制定及び市場監督
A 電気料金調整
B 品質の監督検査及び業務許可証の発行・管理
C 市場紛争処理をはじめ政策実施監督

(海外電力調査会の北京事務所調査報告より)
 

中国石油部門改革

 石油は80年代まで、安く統制された上に利益も全て国に上納されたため,生
産が減少。

 これを改善する為81年国務院は一部の石油を統制価格より高い価格で輸出や
国内販売できる様にし、その利益を探査開発基金に組み入れたが、これでも充分
な開発投資金が得られなかった。

 そのため、1998年7月、探鉱・開発の中国石油天然気総公司CNPCと精製・
石油化学工業の中国石油化工総公司(SINOPEC)を上下流垂直統合し、万里の長
城を境界として北東をCNPCと南をSINOPECに地域2分割・再編。それぞれの管轄
地で探鉱開発・精製・製品販売・輸出入ができるようにした。

 さらに、輸入の統制・密輸の取り締まりを強化し、業界を保護した。

 これで99年1月には石油業界は黒字に転化した。更に99年は石油の国際価
格が高騰化し、利益が出やすくなった。

      中国石油業界の状況
  原油生産能力  精製能力 天然ガス生産能力   領域    利益
  (百万d) ( 百万d)  億立米        99年1月
    CNPC   107    93      148    長城より北東  40億元
(600億円)
  SINOPEC   37   120    23.7    長城より南西  34.2億
元(513億円)