EEE会議(Re:エネルギー基本計画案に対する意見).........................................2003.8.28


もう1つのコメントです。--KK

********************************************

件名:「エネルギー基本計画案に対する意見」

 1.氏名
    伊東慶四郎(イトウケイシロウ)
 
3.職業/所属
  ・職業:シンクタンク研究員 
 ・所属:財団法人 政策科学研究所 

4.意見の概要(100字以内で記載)
  政策評価の時代を迎え、エネルギー基本法のエネルギー関連施策の効果評価に関す
る事項は、政府の「国民への説明責任」に係わる事項として、エネルギー基本計画に
おいても課題として明確に位置づけられていなければならない。

5.意見及び理由(本文)
  エネルギー基本法では、第12条5項において、エネルギー関連施策の効果評価結
果を踏まえ、少なくとも3年ごとにエネルギー基本計画に検討を加えることとされて
いる。この規定は、第14条の知識の普及も含め、政府が、エネルギー政策に関する
「国民への説明責任」を果たしていく上で非常に重要な規定である。開かれた熟慮型
民主主義の時代、政策評価の時代を迎え、このエネルギー政策・施策の効果評価は、
エネルギー基本計画においても、本来、一つの章として明示的に位置づけられていな
ければならないほど重要な課題である。それは、経常的に巨額の財政支出を伴うエネ
ルギー政策・施策を、刻々と変化するエネルギー情勢の変化のもとで、効果的・効率
的に運用し、その硬直化を避けるためには、主要政策・施策の評価を絶えず行い、政
策形成にフィードバックしていくことが不可欠だからである。

 だが、このエネルギー政策・施策の評価にあたっては、評価概念枠組みの構築、学
術的知識基盤の整備、評価理論・方法論の体系化、及び評価システムの開発など、政
策評価面からみたソフトな研究開発活動を体系的かつ継続的に展開することが必要と
なる。また、ここで開発された評価概念枠組みや評価システムを、具体的なエネル
ギー政策・施策の評価に適用し、政策・施策評価の事例研究の積み上げとその知識
ベース化を図ることにより、現実の開かれたエネルギー政策・施策の形成プロセスに
生かしていくことが求められる。
 このためには、エネルギー政策・施策評価に係わる多岐にわたる関係学会や非営利
シンクタンクの協力による多角的かつ持続的な研究開発の展開が必要となるが、その
活動を支援し育成していくことも政府の責務の一つとなる。

 日本原子力学会では、この政策評価の概念枠組みや評価方法論の体系化を指向し
て、昨年、「原子力エネルギーの外部性」研究専門委員会(委員:50名、主査:筆
者)を設置し、基礎的な研究開発活動を開始した。ここでは、以下、その成果を若干
紹介させていただく。

 近年、エネルギーの開発と利用に伴い、社会が負う費用や受ける便益全体を評価す
る観点から、エネルギー政策やシステムの総合評価が重視されつつある。この評価研
究の領域は、次図にも示すように多岐にわたっている。この内、大気汚染や気候変動
等の環境リスクの経済的評価に関しては、欧州委員会が、米国エネルギー省の協力も
得つつ、1991年から9ヶ年にもわたって、発電システムや輸送システムを対象とした
包括的な研究開発プロジェクト(ExternE)を展開し、発電システムに関しては膨大
な研究成果が公表されている。わが国では、この点の研究開発がかなり立ち遅れてい
るため、その挽回が課題となっている。

また、わが国のエネルギー政策の根幹であるエネルギー安定供給政策のスコープにつ
いても、これまで国際的なエネルギー安定供給上の脅威や長期の資源枯渇リスクに対
する施策に限定して運用されてきた。しかし、今後は、以下に示す内政的なセキュリ
ティ阻害要因や国際安全保障上の要因にも配慮することにより、現実のエネルギー政
策の実態と政策概念の乖離をなくし、国民の直感と整合した分かりやすい政策概念の
形成に努めることが望まれる。このセキュリティ政策概念の見直しは、現実の政策枠
組みにもかなりの改革を要請する可能性があるが、エネルギー政策・施策評価の前提
となる課題であるため、今後、検討を深めていくことが望まれる。

@ 電力自由化の制度設計の失敗、自然保護規制による供給力制約、原子力安全規制
制度の欠陥など、制度的な要因による新たなエネルギーセキュリティ問題の出現
A 開かれた熟慮型民主主義の時代を迎え、住民投票など社会的・政治的な要因によ
る新たなエネルギーセキュリティ問題の出現
B 原子力関連施設の破壊テロや放射能爆弾など、エネルギーセキュリティに関連し
た新たな国家・国際安全保障上のリスクの出現