EEE会議(核実験禁止未だ成らず! CTBT発効促進会議の開催)...............................2003.9.2


ご承知のように、明日(9/3)からウィーンで包括的核実験禁止条約(CTBT
=Comprehensive Test Ban Treaty)の第3回発効促進会議が開催されます。

改めてご説明するまでもなく、このCTBT条約は、地下実験を含むすべての核実験を禁
止するための条約で、日本人から見たら大変結構な条約ですが、現実はそれほど簡単
ではありません。

この条約の経緯を簡単にご説明しますと、1995年の核不拡散条約(NPT)の無
期限延長決定と引き換えのような形で、1996年9月の国連特別総会でかなりの紛
糾の後に辛うじて採択されました。しかし、インド、パキスタン、北朝鮮などが当初
から署名しないほか、米国は署名はしたものの、その後上院の反対で批准しない方針
に転じ、中国やイスラエルも未批准で、このため本条約は未だに発効するに至ってお
りません。なぜならば、この条約が発効するためには、原子炉(研究炉を含む)を
持っている44ヶ国の批准を必要とする規定になっているからです。

ご参考までに、2003年9月1日現在の署名国と批准国数は次のとおりです。

 ■ 署名国: 168ヶ国  (41カ国)

 ■ 批准国: 104ヶ国   (32カ国)

括弧の中の数字は、上記44ヶ国(「発効要件国」と称される国々)のうちこれだけ
が署名または批准を了しているということを示しています。逆にいえば、発効要件国
中まだ3ヶ国(インド、パキスタン、北朝鮮)が署名すらもしておらず、12ヶ国が
署名はしたが、批准をしていないということで、この中には、米国、中国のほか、ア
ジアではイラン、インドネシア、ベトナムなど重要な国が含まれております。 ちな
みに、日本は極めて早い段階で批准済み(1997年)。

せっかく苦労してCTBT条約を作っても発効しなければ無意味です。そこで、この
条約の早期発効を促進する目的で、CTBT発効促進会議と称する国際会議が定期的
に開かれることになっており、2001年11月の第2回会議に続く今回の会議で
も、CTBT早期発効に向けた進展状況を点検し、今後の促進策について話し合うこ
とになっております。

しかし、今回の会議には、約80ヶ国が参加を表明しているものの、米国は前回に続
き、国家安全保障の観点から核実験禁止には重大な懸念があるとしてボイコットする
見込み。また北朝鮮、インドも欠席。核疑惑の渦中にあるイランは出席の予定。未署
名のパキスタンはオブザーバー参加。

ちなみに、国連総会第1委員会は2002年10月、日本などがCTBTの早期発効
を目指して提出した核廃絶決議「核兵器全面的廃絶への道程」を賛成多数で採択しま
したが、米国はこれにも反対票を投じています。

核兵器を保有している以上、その維持・管理には実験は欠かせないというのが米国の
一貫した立場で、とくに9.11テロ以後は、対テロ戦争遂行上、戦略的観点から小
型戦術核兵器(「バンカーバスター」と言われる地中貫通型核爆弾など)の使用のオ
プションを保持する必要があるとしており、現にブッシュ政権下では、国防総省が近
い将来の核実験再開を検討中のようです。議会も、こうした小型戦術核兵器の研究開
発予算はすでに承認しており、実践配備についても前向きの議員が少なくないようで
す。

最大の核兵器保有国である米国がこういう姿勢ですから、他の国々、とりわけ、いわ
ゆる「無法者国家」(rogue States)も堂々とCTBT不参加を決め込んでいるわけで
す。当然、CTBT早期発効の見通しは全く立っておりません。残念ながら、これが
国際政治の現実です。

以上、ご参考まで。

EEE会議代表
金子熊夫