EEE会議(米国の原子力の好調さの原因)....................................................2003.9.2

ブッシュ政権になって、米国のエネルギー政策の中で原子力はかつてなく重要視され
ていますが、それに見合うように、原子力発電自体の実績も著しく改善されており、
このところ低迷を続ける日本の原子力からみると、まさに羨ましいような状況です。
 何が現在の米国の原子力の好調を支えているのでしょうか? そうした観点から次
のメールは興味深いと思います。本件情報の提供者は、特別会員の永崎隆雄氏(日本
原子力産業会議 調査役)です。ご参考まで。
--KK
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米国原子力発電は稼動率92%を背景に国民の支持率が64%を超え、原子力が
復活している。
この復活の背景には米国原子力エネルギー協会NEIの活発な活動があり、原子力
が低迷している我国に役立つ点が多い。
日本原子力産業会議はこのNEI活動についてNEI幹部を招待してセミナーを8月29
日に開催しました。
我国の原子力界の改革に役立つ、多くの教訓がありましたので報告いたします。
 原産 永崎

T.講演テーマ
@米国原子力機関の沿革  Angie Howard     NEI上級副理事長

 A原子力規制の変遷    Tony Pietrangelo リスク規制担当上席部長

 B規制活動を高める活動     同上

 C産業界の取組み     Alex Marion    技術工学担当上席部長

 Dマスコミ、国民、産業界  Stev Kerekes        メディア部長

U.主論点
1 米国原子力機関の沿革
@ 日本の規制強化動きについてのコメント
規制当局も民間も目指すところは安全である。規制当局は国民で、民間は事業者
の安全を追求。両者の対立(交流)は効率的な安全を導く。
強力な規制当局は大切で、民間と緊密な交流が必要である。
 A将来の基盤作りは
新規制法作り、サイト認可(調査中)、税制課税インセンティブ、新原価償却等
制度作成中、高齢化対策、エネルギー法案、競争力強化策立案
BVISION 2020は可能か
目標は野心を高くしなければ駄目。1970年代に多くの建設をやった。日本での成
功例もある。だからできる。

 2 原子力規制の変遷
@ NRC組織:4地域事務所、60原子力サイト各2名検査官、専従2800名
       産業界OB多数、国立研究所との協力。
  A 規制の考え方の革新
   旧:最悪想定設計で決定論(機器故障データなし)
→スリーマイル事故→通達数百発布→発電所建設遅れ→投資金利上昇
→設備利用率低下→コスト増大
  
完璧な人間、完璧機器なし→ランダムに事故発生、誤差許容
→保修規則を発布(1991〜1996年)→監視を要求

   新:過去のデータを解析し、未来にフィード・フォワード
1)確率論的リスク調査で機器の重要度付け(データ蓄積で精度向上)
2)保修でリスクを実測解析評価(規制者と運転者の共同データ学習)
3)故障前交換など予防保全(部品交換の指標:学習向上)

成果:重大事故 70年代0.9→ 現在 0.03
        稼動率 60% → 92% 小さなステップを積み重ねる。
        保修コスト低減、安全性と生産性向上は同時達成可能

3 規制プロセスを高める活動
@ オンラインメンテナンス(操業中補修)
A 燃料再装荷時定検の短縮 76日→34日
B ROP(原子炉Oversightプロセス):測定で予見し、改善、改修
C 保守基準バンド(18の保修指標):
緑色(許可)、黄色(追加規制・改修)、…、赤色(停止)
D NEIとNRCの関係: アームズレンスの一定距離を置き、ギブ&テイク
  大きな共通目標:  安全第一
  NRCとの対峙  :  原則運転者(安全性が最も深刻)。一般的事項はNEI。

4 産業界の取組み
@ 戦略立案メンバーを電力各社の最高責任者の80%投票で決定
A 安全文化:社員やNRC等多くの人々の参加で取り組む
B セルフ・アセス(ベンチマーキング法)自己責任・批判で常に改善

5 マスコミ、国民、産業界
@ 経営幹部のメディア・トレイニング実施中
A 原子力は違う基準が適用されると言う事を推進者は受け入れる事
B 発表の遅れ、会社側発表が信頼を喪失(スリマイル、数時間後発表)
誤りをすぐ認め、実行措置。遅れれば反対派登場。幹部の迅速決断を
C 危機対応は自治体首長がよい(貿易センタテロ、炭鉱火災)姿勢が大切
D 地元自治体や地域住民との定例会議、見学会が効果的、地域ボランティア、
奨学金、慈善活動等広く頻繁に
E テロで原子力非公開化。原子力ミステリー除去立ち消え。公開を求めよ
F 人々の原子力支持の根本は稼働率の改善の認識
G 日本の原子力不信払拭:どんな時でも良い面を出す。弱点攻められても。
H 安全企業文化の要諦:透明性と開放環境
          
            以上