EEE会議(日本核武装論の陥穽:吉田康彦氏の意見).......................................2003.9.3


昨今、北朝鮮核問題との関連で日本核武装論が論壇や政界で横行しておりますが、こ
れを野放しにすることは、日本の安全保障にとっても、さらに、日本の原子力発電や
核燃料サイクル政策のためにも好ましくないことは、小生も当EEE会議で何度も繰
り返し申し述べているところです。 しかも日本核武装論は現実的にも戦略的にもほ
とんど全く成り立たない議論であると思いますが、にもかかわらず、かかる無責任な
言論がいつまでもまかり通っているのは何故でしょうか? それは、忌憚なく言え
ば、一般国民だけでなく、政治家も学者も、核・原子力問題の国際法的、外交的側面
についてあまりにも無知だからだと言わざるをえません。その点に関しては(他の論
点については異論が多々ありますが)、小生は、吉田康彦氏の先日のご意見(8/28)
と、本日付けのメール(下記)に基本的に同感です。

それにつけても、北朝鮮核開発問題や日本核武装問題に関して、原子力技術の専門家
の皆さんが未だに沈黙を守っているのは納得が行きません。この際、原子力技術(と
くに再処理、プルトニウム)の専門家諸氏や国内でIAEA査察(保障措置)業務に
関係している方々がもっと積極的に発言されることを期待します。もっとも、皆様の
中で日本も早期に核武装すべきだとか、その気になれば日本は簡単に核兵器を製造で
きるのだというお考えの方がもしおられるのならば、是非はっきりご意見を開陳して
いただきたいと思います。匿名(ハンドルネーム)でもOKです。
--KK
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相変わらず、国際法、国際関係法の基本知識を持ち合わせておられない方が素朴な感
情論で核武装論を開陳しているのが気になります。大兄は提言案を起草せよとのこと
でしたが、これは提言以前の問題で、IAEAとの関係、NPT加盟国としての履行
義務からいって、「核武装したくても絶対に出来ない」のだから、それをどうクリア
するか、それでも核武装すべきなら、どういう手順で進めるのか、その議論が不可欠
です。単に、他の主要先進国がいずれも核保有国だからとか、北朝鮮の脅威、中国の
潜在的脅威に対抗するためとか、という根拠は素朴な対抗意識でしかなく、国際政治
の現実には適用できないのです。つまり、

(1)IAEAのフルスコープ(包括的)保障措置から離脱するということはどのよ
うな結果を招くか、
(2)NPT脱退はいかなる結果を招くか、
(3)軍事転用を禁じている日米原子力協定ほか一連の二国間協定破棄の結果はどう
なるか

以上3点に関して、きちんと論理を積み重ねて議論を展開していただきたいと思いま
す。ちなみに、IAEAもNPTも、日本とドイツの核武装を阻止するために創設さ
れたレジームで、現在も、IAEAの全査察業務の4分の1以上が、日本の核物質関
連施設に対する査察に振り向けられています。再処理済みのプルトニウムをため込む
だけで、国際社会の疑惑と不信を招いているという現実をまず直視すべきです。

吉田康彦