EEE会議(Re:「原子力2法人統合に関する報告書案」に対する意見).......................2003.9.8


先週(9/4)お伝えしましたように、「原子力2法人統合に関する報告書(案)」が文
部科学大臣の下に設置されている統合準備会議の第15回会合において取りまとめら
れ、これに対するパブリック・コメントの募集が6日から始まっております。提出期
限は9月16日で、宛先は次のとおりです。

〒100−8966
東京都千代田区霞が関1−3−2   郵政事業庁庁舎11階
  文部科学省研究開発局原子力課   宛
(FAX) 03−5253−4162
(電子メール) genshi@mext.go.jp

意見書の書式は特に指定はありません。なお、提出方法の詳細は 次のサイトに記載
されています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/public/index.htm

ご参考までに、小生が本日提出した意見を以下のとおりご披露いたします。
--KK
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文部科学省研究開発局原子力課   御中

拝啓
以下のとおり本件に関する意見を提出します。

氏名: 金子 熊夫
所属組織: エネルギー環境外交研究会会長、EEE会議代表
住所: 東京都世田谷区代沢2-31-24
電話番号: 030-3421-0210
報告書(案)の該当箇所: 全体
御意見:

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「原子力二法人の統合に関する報告書(案)」に対する意見


1.新法人の使命について

 新法人の使命の第一番目にエネルギーの安定供給と地球環境問題の解決に資する
としたことは、短期的にも直接国民に益する組織であること、さらにはグローバルな
視点でもその存在が有意義であることを明確にしたものであり、独立行政法人の役割
として評価できる。基本報告と比較し、より現実的なものとなったと思う。また、廃

物問題についても、新法人の「負債」となる位置づけのものに対し、主要業務として
明示
したことも評価でき、このことは是非個別法に明記すべきである。その結果として、
国民
の一層の信頼を確保することになるであろう。

2.業務の運営方法:とくに国の役割

 新法人は我が国のみならず世界にも目を向けたスケールの大きい、真に原子力の研
究開発及び関連業務を実施していくという「」COE組織」にふさわしい業務運営方法

持つべきであると考える。よって、個々の業務を設定する際には、官民の役割を明確

整理した上で国としての役割をより明確にすべきではないか。特に電力自由化の議論
の方向も見極め、実用化に向けた研究開発においては、エネルギー・セキュリティ確

のための技術確保への国、民間の投資はどのくらいであるべきか、新法人の開発する
技術の利用主体(たとえば電力自由化による状況変化の電気事業者)の状況などを踏
まえた上で、それぞれの役割分担を明確に設定することが不可欠である。これは、円

な技術移転や利用主体が期待する技術協力を円滑に推進する上でも重要である。

3.業務の運営方法:新法人の中期目標の設定

 独立行政法人として、新法人は主務大臣より中期目標を与えられ、自ら中期計画を
策定することになるが、今日の独立行政法人の中期目標の議論においては、総理大臣
より、「積極的な合理化、経費削減、民間委託をやるようにしてほしい。役所は(事
業や予算が)『必要だ』『必要だ』と言うが、閣僚は何が必要かを見抜くことが大事
だ」との指示も出ている。独立行政法人の趣旨に則れば、また、整理合理化という今
回の統合の出発点に戻れば、効率的・効果的運営は是非とも必要とされるところであ
る。新法人もその趣旨に則って運営されるべきである。重要なことは、新法人は原子

政策(原子力委員会策定のいわゆる原子力長計であると認識)を実現する組織である
こと、及び果たすべき目標として与えられる中期目標は国の原子力政策と整合性を持
っていることであり、他の多くの独立行政法人とは性格が異なることを認識し、単に
合理化推進のみに流されてはいけないということである。今日の特殊法人等改革推進
本部参与会議の議論を踏まえれば、一般管理経費等における合理化は大いに進める
べきものであるが、政策実現のための新法人の役割を果たすための研究開発事業
(もちろん効率的に実施)に関わる予算等については、その必要性を国は認識すべで
あって、このことを報告書は強く主張し、かつ新法人の特異性とともに特殊法人等改

の基準の多様性を主張すべきではないか。

4.事業の重点化の指標

 新法人に対しては、4つの明確な使命が記されており、さらに8つの主要業務が記
されてはいるが、現実に新法人を稼働させていく上で、予算、人員等リソースの振り
分け、割付を行っていくことになる。その際、その基準となる「優先度」なるものを
明示しておく必要がある。新法人の持つ資源をどのように配分するのか。本報告書
は、冒頭述べたとおり、使命の一番目にあるエネルギーの安定供給と地球環境問題の
解決に資するための原子力システムの高度化は実用化にむけた研究開発分野であり、
その規模も大きくなるものである。基本報告と比べ、基礎研究指向から実用化研究指
向、すなわちその課題設定も重点化する基礎基盤研究はプロジェクト研究開発を支え
るものであり、プロジェクト研究開発は実用化を睨んだものと考えると、これらの分
野、特に国民に直接、益する核燃料サイクルの確立に関わる研究開発、民間の期待に
応える研究開発事業に最も高い優先度をおくべきであると考える。

5.原子力委員会の関与

 報告書にも述べられている通り、新法人の中期目標実現への原子力委員会へ関与
は、原子力政策(原子力長計と認識)との整合を持たせる意味で、必要不可欠なこと
である。独立行政法人制度での関与のあり方を他の独立行政法人と同じ視点で見る
べきものではなく、原子力政策の実現という新法人の役割という点で、その関与のあ

方は、新法人の個別法に明記しておくべきものである。原子力政策の強力かつ着実な
推進のため、原子力委員会が強力な指導力を発揮することは、多くの関係機関、さら
には多くの国民からも期待されているところであり、この期待に応えるためにも、そ

方向性まで踏み込んで報告書では明記すべきである。さらに、新法人の事業を進めて
行くにあたっては、政策実現のための明確な方針・計画が不可欠であり、このための
国レベルの事業評価、実行計画のオーソライゼーションについても原子力委員会が
強力な指導性を発揮することが求められる。このためにも原子力委員会自体が、
制度面でも人材面でも、一層強化される必要があることは言うまでもない。


6.原子力予算における新法人予算の確保

 ITER予算について文部科学省では、原子力予算の中で実施していくと総合科学
技術会議で説明している。その際の条件として、核燃料サイクル、及び廃棄物対策に
関わる予算の削減、および原子力予算を毎年3〜4%拡大していくという前提であっ
た。今回の報告書では、ITER計画への積極的協力を述べているが、特に新法人の
主要業務に関わる事業(核燃料サイクルの確立、廃止地・放射性廃棄物処理処分対
策)を進めていく上で懸念すべき取り組み方と考える。新法人の財務基盤に関わる課
題として、原子力予算における新法人業務への予算確保は、現状では高速増殖炉と
異なり、学術領域にある核融合との優先度の相違を踏まえ、着実に実施されることが
不可欠であり、後送りせず、報告書でその旨、明記しておくべきものである。

7.統合を機にした関係法の整備、調整の促進

   本報告書にも述べられている放射性廃棄物処理処分のための安全基準の整備
等に関する法令等の整備および原子炉安全規制上の地位承継など、統合の前後に
関わらず、主務大臣は、関係行政機関との迅速な調整を関係当事者だけに任せるの
ではなく、国全体としてその調整を推進することが必要である。また、報告書では放
射性廃棄物の処理処分事業については、「新法人の当該民間事業の運営への参画
の可能性の検討も」との指摘がなされているが、具体的には民間への出資機能など
その具体化が重要と考える。その意味ではこれら問題も含め、統合準備会議等が、
本報告書内容が適切に実現されていくことをフォローアップできる仕組みを作り、
法案提出等、統合準備作業を遅滞なく円滑に進めていくことが必要である。

8.統合までのスケジュールの明確化について

   本報告書に取りまとめられた内容について、国および法人は着実にこれを実現さ
せて行かねばならないが、そのためには、統合までのスケジュールなどを早期に
策定・明示し、統合準備作業が関係者の協力を得て円滑に進められ、早期に法案を
提出し、新法人設立を迎えられるようにしなければならない。

      以上