EEE会議(Re:「原子力二法人の統合に関する報告書(案)」に対する意見)............................2003.9.18


標記の件に関し、「エネルギー問題に発言する会」の会員である大井 昇氏(武蔵工
業大学・講師)が次のような意見を政府に提出された由です。 同氏はEEE会議の
会員ではありませんが、「新法人のトップに外国人を!」という提案などはちょっと
面白いアイディアだと思いますので、ご本人の了解を得てとくにご披露いたします。
このご意見に対しコメントのある方はどうぞ。
--KK

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>
> 原子力二法人の統合に関する報告書(案)についての意見
>
> 1. 氏名: 大井 昇
> 2. 所属組織: 武蔵工業大学・講師 (非常勤)
> 5. 報告書(案)の該当箇所: 全般、とくに1(2) 原子力二法人の研究開発の実績

    評価、3。新法人の使命、5。新法人に求められる組織・運営のあり方
>
> 意見:
>
> 要旨:長年、巨額な国費を注入した割りには、原子力二法人の過去の成果はお粗末

> 思います。まず実績の評価をしっかりやり、その反省に立って新法人の使命、運営

> 考えるべきでしょう。それにつけても報告書の、理念や使命についての記述に、
> “民”の字が見当たりません。原子力システムの高度化を図るなどの新法人の使命

> 達成には“民”との連携が不可欠なはずです。まずは新法人の成果目標を明示すべ

> です。次に、その目標を達成するための“民”との関連をはっきりすべきです。新

> 人のR&Dの成果が実用化されるべく、特にプロジェクト研究については、R&D

> イクルの確立、すなわち政府の金を、研究のニーズを持つ“民”から新法人に発注

> きる「改革的」な方式を生み出すことが必要です。さらに新法人のトップには、従

> の常識、枠組みや発想に捕らわれない人を国際的に公募し、出来れば外国人を選ぶ

> とが良いと考えます。
>
>
> 説明:
> 原子力二法人の過去の実績の評価ですが、残念なことに期待外れでした。基礎研究

> ノーベル賞の話題に上ったものはありません。報告書にあるように、日本の先頭に
> 立って多くの成果を上げてはいますが、皮肉な言い方をすれば、その多くが研究者

> お金を付ければ出来る話です。再処理については、巨額の研究費を使って、原研の

> 処理特研から始まり、動燃/JNCの東海再処理工場で、ずいぶんと研鑽を重ねたの
に、
> 六ヶ所村の再処理工場は、基本的にはフランスの技術であること、プルトニウム燃

> の開発を長年、動燃/JNCで実施したのですが、六ヶ所村に建設されるMOXプラント

> 事実上フランスの技術であること、さらに自力で進めているウラン濃縮の成果も
> URENCOと比較すると格段に劣るなど、残念な面が多いのです。「なんでもない」も

> じゅの事故で高速炉の開発が頓挫したのもその大きな例です。
>
> それにしても、この報告書(案)には“民”の字が見えませんね。新法人だけで「原

> 力システムの高度化を図ることにより、エネルギーの安定確保と地球環境問題の解
> 決」を図ろうとされているのでしょうか?上記の「期待外れ」の事態になった大き

> 原因の一つは、原子力二法人と民間の事業者との連携が上手く行かなかったためと

> います。役所の縄張り争いのせいとも言われてもいますが、もし研究費が事業者か

> 出ていれば、すなわち国のお金であっても、何らかの方策を講じて、研究が事業者

> ら発注されていれば、こんな残念なストーリーにならなかったでしょう。つまり、

> 究とその成果とが上手くフィードバックするサイクルが出来ていないのです。新法

> では、今度こそR&Dサイクルが回るように考えるべきです。そうすれば研究者は活

> 化する筈ですし、手探りで研究をして、折角の成果が使われないという無駄も減る

> ずです。
>
> 現在の日本では、原子力二法人には、比較的潤沢なお金が毎年付いているようです
> が、他方新規開発のために、研究、設計、開発をする民間側はお金が無く、将来へ

> 開発意欲や希望を失ってきている状態です。幾らか偏見かもしれませんが、原研と
> JNCは御殿のような建物で、研究費用も潤沢に研究をしている。他方民間の研究者

> プレハブの建屋に詰め込まれていると感じています。先般、大洗JNCで新しい建

> を拝見しての実感です。これでは原子力の将来はありません。お金の流れ、使い方

> 成果の評価など、もっと踏み込む必要があります。官が上、民間は下という意識で

> 駄目ですね。
>
> 正直言って、民間の事業者は新法人にあまり期待していないのではと思います。あ

> り大きなお金を使わず研究をやって頂き、基礎研究、ノーベル賞を取れるような研
> 究、人材の養成やインフラの整備などをやって頂ければ良い、などと考えているの

> はないでしょうか?安全規制のための研究も幾らかは必要でしょう。しかし実際に

> 品を作る民間の研究・開発より国の安全規制のための研究が先行するのも困ったも

> です。報告書(案)の新法人設立の意義に「この原子力二法人の統合は、わが国の原

> 力研究開発の再構築のため建設的かつ有意義なものでなければならない。今般の原

> 力二法人の統合が、このような改革をなしうる絶好の、そして最後の機会であると

> う不退転の決意」と熱い思いが書かれていますが、全くその通りと思います。ぜひ

> 本の原子力の将来のために、また納税者ががっかりしないように、熱い思いで「改
> 革」をやって頂きたい。そのためにもキープレイヤーである新法人にはR&Dサイク

> が回るような大胆な方策が必要です。また新法人のトップには、従来の枠組みや発

> に捕らわれない人、「世界の非常識である日本の常識」に捕らわれない外国人を選

> ことが良いのではと考えます。世界的なCEOを目指すのでしょう。国際的に公募

> ては如何でしょう?
>
>