EEE会議(核燃料サイクル政策への提言:高速増殖炉の開発時期).................................2003.9.19


先般来豊田正敏氏(8/15)、柴山哲男氏(8/17)等の間で展開されてきた核燃料サイク
ル・オプション論争の続きとして、とくに高速増殖炉の開発時期(実用化についての
見通しを立てるべき時期、あるいは開発断念を含め政策転換を行うべき時期)等の問
題につき、本日永崎隆雄氏から以下のようなメールをいただきました。同氏の問題提
起に対し皆様方のコメントをお願いいたします。
--KK
******************************************

 先月8月17日のEEE会議で高速増殖炉の開発時期等について、豊田様と柴山様の
以下の議論があり、柴山様から高速炉開発時期についての問題提起がありました。こ
の問題提起について私の考えを提案いたします。
  
豊田様の提言:

2015年までに実用化の見通しをつけ、つかない場合は開発を中断。

柴山様の提言:

高速増殖炉の開発を断念することはウランープルトニウム路線の放棄につながり、日
本として政策の転換をしなければならない時期が何時かという観点で議論されるべ
き。使用済み燃料の中間貯蔵などの観点より2030年頃が一つの時期。この時期ま
でにはある程度の代替策の準備も必要。これらを含めて高速増殖炉の開発を打ち切る
最終時期についてはもっと幅広い論議が必要。

私は柴山様とほぼ同じ考えです。以下に柴山様の問題提起に対する私の考えを提案い
たします。何卒皆様のご意見を賜りますようにお願いいたします。


1.政策転換時期について

政策転換は以下の条件を満たす市場経済性のある代替エネルギーの出現ではないで
しょうか。

(1)  日本のエネルギー自給問題が解決する事

(2)  世界の持続可能発展を支えるエネルギー問題が解決する事

(3)  環境負荷の増大問題が解決する事

これはなかなか困難で時間を要すると思います。

海水ウランの実用化に希望をかける向きもありますが、劣化ウランが無限に溜まって
くるという環境上の本質的な問題があります。海水ウランは劣化ウランを燃やす高速
炉との共存して、環境問題を解消して、半永久的エネルギーを我々に与えてくれるの
だと思います。

トリウムサイクルと言う案も理想はよいのですが、高ガンマー放射性線問題からプル
トニウムよりはるかに実際のメンテナンスが難しく、DOEのマグウッド局長の評価に
もありますが、近未来の実現は困難と思います。

2.高速炉導入のチャンス時期

一方、高速炉導入は下記のような条件が整う事が必要ではないでしょうか。


(1)  現軽水炉の限界を乗り越える事

   建設費、熱効率、燃焼度、稼動率、燃料増殖、環境負荷、核不拡散等

(2)  初装荷の原料プルトニウムが得られること

(3)  原子炉の更新等の新規需要

(4)  ウランの価格の高騰や枯渇も含めた、対軽水炉競争力を持つこと

これらの条件は高速炉開発の努力やウラン市況、資源枯渇等により、時を追うにつ
れ、満たされ、導入のチャンスが大きくなってくると考えられます。


2009年頃: 六ヶ所再処理Pu燃料工場の稼働、Pu供給


2010年頃: ロシアBN600、フランスのフェニックスの実績

        実験炉常陽の実績ともんじゅの再開と運転実績

        熱効率、燃焼度、稼動率、燃料増殖、環境負荷等の実データ取得

2015年頃: ロシア商業炉BN800等の建設運転実績

         電力自由化で原子力の革新需要が増大

2016年頃: 我国原子炉の新設計画が途絶える

2030年頃: 我国と米国等世界の原子炉の更新時期が到来

2020〜50: ウラン資源の高騰見込み時期 

 そのため、柴山様の御指摘のように2015年断念は早すぎますし、ある時期までに開
発をして、それ以降、中断とは行かないのではと思います。

 しかし、予算が無限にあるわけではありませんので、対応を考えなければなりませ
ん。


 対応案としては、JNCが2015年導入を提案しているパイロット炉は商業炉のナビ
ゲータの役割を果たさせ、発電売電収入で長期に運転継続し、旧式軽水炉の更新やウ
ラン高騰等の導入チャンスの到来を待つべきと考えますが如何でしょうか。


先導商業高速炉

1 諸トラブルとその対応・補修・予防の先行経験・学習と寿命測定

2 安全かつ効率運転技術の向上

3 実商業炉の運転員の教育

4 商業炉スタートのための競争力評価

他電源との経済競争力や安定性や安全性や環境因子等の評価

5 技術の改良・考案と実証

   以上