EEE会議(Re:核燃料サイクル政策への提言:再処理・プルサーマルの経済性など)........2003.9.19


標記の件に関し、豊田正敏氏から次のようなメールをいただきました。 ご参考ま
で。
--KK

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永崎氏の原子力未来研究会等の再処理一時中止論者の再処理の経済性とプルトニウム
利用に対する反論に対し
てコメントします。私の9/9の原子力未来研究会の論点に対する反論を全く読んでい
ただけていないのは遺憾
であります。

再処理・プルサーマルは極めて割高であるにもかかわらず、それを正当化しようとす
るようなことをしないで、
「六ヶ所再処理工場は、現在、原子力発電所に大量の使用済燃料が貯まり続けてお
り、もし、再処理しなけれ
ばさらに使用済燃料が貯まり、大部分の原子力発電所が停止に追い込まれ、大停電と
なり、国民生活及びわが
国経済に深刻な打撃を与えることになるので、当面、再処理を続けざるを得ない。」
という本音の理由によっ
て理解を得ようとしないため、議論が混迷していると考えます。

永崎氏は、「再処理が高い原因は、競争のない総括原価主義や割り当て発注であった
ためで、その原因は今後
の電力自由化で解消できる。」と言っておられますが、再処理プラントを再処理の専
門でない原子炉メーカー
に分割発注し、競争原理が働かなかったことも一因ではあるが、建設費低減のために
は、フランスのゴジェマ
社が採用しているように、自社で設計し、それに基づき、国際競争入札によりタンク
専門メーカーなどに発注
し、品質管理を自社の専門家が工場に常駐して行うことにしなければ安くならない
が、我が国では、このよう
な専門家の流動性が悪く、適材を雇うことは容易でないという問題があります。ま
た、原子炉メーカー、ゼェ
ネコン、セメントメーカーなどが大株主に名を連ねている日本原燃では競争入札で一
社に絞ることは不可能で
あります。また、耐震設計、飛来物(航空機衝突)対策及び国際基準より厳しい臨界防
止設計などにより、割高に
ならざるを得ません。JNCの進める高度再処理技術が何時実用化できるか不透明であ
り、また、電力会社とJNC
の出向者が大部分の日本原燃の体制では、国際価格並になる見通しは無いと考えま
す。第二再処理工場は何処
も作るところは無いと考えます。永崎氏の言っておられる「電力自由化で解消でき
る」と言うのは、全く無意
味であると考えます。

TRU廃棄物は、封じ込めの難しい揮発性I-129の沃素除去フィルターを含め、処理、処
分方法が、決まっておら
ず、容積も高レベル廃棄物の20~30倍あります。従って、処理、処分費用を正確に見
積もることは、現段階では
不可能であります。特に、わが国の場合、処分場の適地は、岩盤の強度の低い堆積岩
となる可能性が高いので、サ
イロは採用出来ず、掘削土量は、ガラス固化体の場合と同程度になるかもしれない。
処分概念が決まっていな
い現段階に、処分費や処分場面積を正確に推定することは不可能ではありますが、再
処理費やMOX燃料加工費に
比べればたいしたことはないと考えます。永崎氏のいっておられる発熱量は、TRU廃
棄物の場合、処分費には関
係ありません。

 再処理、プルサーマルの経済性については、原子力委員会が、今なお、OECD/NEAの
10年前の恣意的な前提条件に
よる試算結果を引用するようなごまかしは止めて、かって、西独の電力会社が、ケル
ン大学、エネルギー経済研究
所に検討を委託したように、中立の調査機関にわが国の実情に適合した条件で試算を
委託され、その結果を公表
されるよう要請します。問題は、原子力発電原価が、運転後最初の4~5年間のコスト
が高く、かつ、バックエンド
コストが不確実な状況では、電力自由化により、電力会社の経営者に原子力発電所を
新設するインセンティブが
なくなったところにあると考えます。

 永崎氏の言われるように、プルサーマルが経済的であるのであれば、国は、六ヶ所
再処理工場を引き取り、MOX
燃料工場も作って、MOX燃料をウラン燃料価格並みの価格で電力会社に提供すること
を提案します。
高速増殖炉の実用化の見通しが暗い現状に鑑み、プルサーマルに代わるもっと燃料利
用効率がよく、経済的にな
る可能性のある選択肢として軽水型トリウム発電炉などの採用について検討すべきで
あると考えます。

 地域住民特に知事の意向を無視して、核燃料サイクルの円滑な進展は望めないの
で、地元住民との双方向対話
は極めて重要と考えます。この観点から当EEE会議の講演、研究会に佐藤福島県知事
を講師にお迎えしてお話を
聞き、討論することを提案します。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp