EEE会議(ベトナムの原子力導入計画と日越協力)............................................................2003.9.21


ご高承のように、本年は日本とベトナムが外交関係を樹立してから30周年で、先々
週ハノイで、また先週(9/18)は東京で、30周年記念の国際シンポジウムがそ
れぞれ開催されました。 小生も両シンポジウムに参加し、所感の一端を述べました
ので、そのスピーチ原稿の一部をご参考までに披露させていただきます。とくにベト
ナムの原子力発電導入計画と日越協力問題に関する部分は次のとおりです。 ご参考
まで。
--KK

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<ベトナムのエネルギー開発と原子力導入に関する日越協力問題>
                         
 最後に、今後の日越協力の重点課題の1つとして、ベトナムのエネルギー・電力開
発問題についてごく簡単に触れたい。
 
 ベトナムは加速する経済・社会開発の進展に伴い、近い将来エネルギー・電力需要
の増大が確実に予想されており、現在各種のエネルギー源(とくに水力、火力発電)
の開発計画が精力的に進められているが、中長期的には需給関係の逼迫が避けられ
ず、将来の選択肢の1つとして、原子力発電の導入計画が具体化しつつある。すでに
2001年の第9回共産党大会で原子力発電の重要性が確認され、ベトナム政府は、
2017--20年頃の原子力発電所の稼動を目処に、現在諸般の準備作業
(pre-feasibility studyを含む)を進めている。原子力は取り扱いの難しいエネル
ギーではあるが、正しく利用すれば多大の利益を齎すので、石油等の天然資源に恵ま
れない国にとっては極めて重要なエネルギーである。そのため、日越間ではすでに原
子力の技術協力が着実に行われている。外務省初代原子力課長時代に核・原子力問題
に深い関係を持った私自身も、過去20年来、この問題でベトナム工業省、原子力委
員会などに対し個人的なレベルでいろいろ助言活動を行っている。

 ところで、今後こうした原子力技術協力を一層円滑に実施するためには、両国間に
政府レベルの原子力協力協定が締結される必要があるが、その前提条件として、ベト
ナムが核拡散防止に積極的な姿勢を示すことが必要で、たとえば包括的核実験禁止条
約(CTBT)や国際原子力機関(IAEA)の追加議定書への早期加盟が求められる。唯一の
被爆国として、日本は核不拡散につよい関心を持っているが、ベトナムも、東南アジ
ア地域の非核化を定めた「東南アジア非核兵器地帯条約」(いわゆる「バンコク条
約」、1995年)の当事国でもあるので、とくに問題はないはずである。できるだけ早
期に上記の国際条約を批准し、正々堂々と原子力平和利用活動を行い、日本等との協
力関係を磐石のものとするよう強く期待する次第である。もし日越が原子力分野での
協力関係を確立すれば、それはベトナムのエネルギー安全保障に資するのみならず、
日越協力関係全般にも好影響を与え、さらに東南アジアの平和と安定にも大きく貢献
するであろう。これこそ21世紀における日越間の最大の課題の1つである。