EEE会議(イラン・アザデガン油田開発問題を巡る動き)........................................2003.9.22


度々お伝えしておりますように、日本の企業連合が進めていたイラン最大級
のアザデガン油田開発計画については、米国の「横やり」によって難渋しており
ますが、イランの「レサラート」紙が9月20日報じた所によれば、ザンギャネ同国
石油相の言明として、イランが日本に与えていた同油田開発優先交渉権を取り
消した、とのことです。

イランは、2000年にハタミ同国大統領が訪日した際、日本に同油田開発の
優先交渉権を与えていました。この優先交渉権は去る6月末で切れましたが、
イランは日本の優先交渉権を保留してきたとされ、優先交渉権が切れても、
日本企業連合との交渉は続けられるとされてきたものです。

周知のように、日本の「アラビア石油」が持っていたサウジアラビア・カフジ油田
の採掘権が2000年に失効したのを受けて、アザデガン油田は開発が計画さ
れたことから、同油田開発計画は、事実上日本の官民合同の国家事業と見ら
れてきたものです。

しかるところ、ブッシュ米政権は、イランの核開発疑惑を理由に、安全保障上の
見地からとして公式に日本にアザデガン油田開発計画の中止を要請してきた
わけです。イランの資源開発に投資した企業を大統領権限で米市場から締め
出すことを目的とする「イラン・リビア制裁強化法」の発動をちらつかせている
とも言われております。

同計画は本来なら、今夏に契約が結ばれ2004年中には商業生産が開始さ
れる予定でした。もし、優先交渉権失効・取り消しということになれば、それで
被る損害は、当然米政府に対し補償を要求しなければならないのでしょうが、
果たして米国がどう出るか。 

しかし、それよりもっと深刻な問題は、今回の一件により、日本政府が第1次
石油危機以来40年にわたって営々として推進してきた対中東石油外交が頓挫
すれば、日本企業は今後相当長期にわたって中東で信用されなくなるというこ
とで、この埋め合わせを、米国との関係でどう処理するかが当然問題になるで
しょう。

イランが国際原子力機関(IAEA)の強制査察に関する追加議定書をすんなり
批准すれば問題は一挙に解決するはずですが、最近のイランの態度を見て
いると、その可能性も怪しくなってきました。それどころか、イランは、すでに
日本に見切りをつけたかのように、ロイヤル・ダッチ・シェル(英・オランダ)や
トタル(仏)のメジャー2社のほか、中国石油化工集団公司(シノペック)等にも
入札参加を認めたとも報じられております(9/19 読売新聞朝刊、1面トップ)。

こういうこともあるからこそ、日本は中東石油への依存度(現在は約90%)を
減らすべきで、そのためにも極力原子力発電を拡大する必要があると小生は
かねてから主張しているわけで、これがまさにEEE会議発足当初の目的の1つ
でした。

いまこそ我々は日本のエネルギー安全保障を多角的、戦略的な観点から見直
すべきであり、原子力関係者諸氏の一層の奮起、活躍を期待する所以です。
皆様の積極的なご発言をお願いいたします。
--KK