EEE会議(Re:イラン・アザデガン油田開発問題を巡る動き)...................................................2003.9.23


昨日(9/22)差し上げた標記メールに対し、吉田康彦氏(大阪経済法科代教授)から
次のようなメールをいただきました。ご参考まで。 小生のとりあえずのコメントは
末尾に付記しておきました。
--KK
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イランの油田開発問題について見解を表明します。

日本に原子力は不可欠という点では、私も皆さんと認識を共有していますが、イラン
のアザデガン油田開発計画が暗礁に乗り上げたことが、そのまま原油供給の中東依存
度を減らす必要に通じ、そのための原子力推進とはならないと思います。その間に他
の選択肢もあるわけです。ロシアの天然ガス確保も「その他の選択肢」のひとつで、
昨日の岡本前長官の話にもありましたが、何と言っても日本の「外交力」を強化する
ことが先決です。国連などでは、日本は米国に楯突けないナイーブな国と見られてい
ます。

イランの場合は、日本政府が米国の圧力とイランの揺さぶりの両方にさらされ、右往
左往しているわけです。まず日本が対米追随から脱却できず、ワシントンからの圧力
に弱いことに問題があります。イラク戦争における独仏のように、ブッシュ政権に
堂々と異を唱え、彼らの意のままには動かないという主体性を打ち出す必要がありま
す。他方、イラン(に限らず中東諸国)に対しては、彼らを植民地にしたことがな
く、手の汚れていないアジアの非キリスト教国としての先進国として接し、独自の外
交を展開する不断の努力が求められます。それがないから、アブラ乞いのアラブ外交
になってしまうわけです。

以上を両立させるために必要なことは、(1)外交官をはじめ政治家・学者・企業・
ジャーナリストらの重層的な人脈作り、(2)彼らを通しての不断の情報収集、さら
に将来的には情報収集・分析機関の独立、これを政策化するシンクタンクの拡充強
化、(3)長期的外交戦略の構築です。三拍子揃って初めて、米国に対しても、中東
諸国に対しても、したたかに振舞えるわけです。

日米間の人脈は太く、パイプはあるのですが、情報と戦略で圧倒され、唯々諾々と
従っているのが現状だと思います。例えばイラク侵攻のとき、あくまでも国連安保理
決議に従えと言えるような、原理原則を貫ける政治家の出現が待望されます。

イランに対して、日本は、米国がイランと断交したあとも外交関係を維持し、一貫し
て良好な関係にありました。イラン=イラク戦争では、故安倍晋太郎氏らが停戦の仲
介を試みたこともあります。独自の人脈も存在します。核疑惑払拭のための仲介外交
の出番です。元首相クラスの大物特使派遣も検討すべきです。以上。

吉田康彦

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ショート・コメント:

1.中東石油への依存度を減らすことと原子力発電の拡大がイコールであるとは言え
ないというご指摘はそのとおりですが、総発電量の35%を占める原子力発電を止め
れば(今夏の東電のケースのように)、その分だけ石油依存度が高まることは明らか
であり、原子力が現実に果たしている役割を忘れるべきではありません。また、対産
油国、
対メジャー交渉上原子力が有効なカードであることも否定できないところでしょう。

2.我が国の対中東(石油)外交と日米同盟関係をどうバランスするかについては、
国内でもっと真剣に議論すべきで、ただ対米配慮だけでなく、グローバルな観点(核

散防止、シベリア石油パイプラインの可能性等々も含め)から総合的に判断すべきで
しょう。いずれにせよ、我が国の対中東外交を質量両面でもっと強化すべきだという
ご意見には全く同感です。
--KK