EEE会議(Re:核燃料サイクル政策論争:再処理、プルサーマルの経済性など: 豊田氏から永崎氏へ)........2003.9.23

i標記件名の永崎隆雄氏のメール(9/21)に対し、豊田正敏氏からさらに次のような反
論が寄せられました。
ご参考まで。
--KK
*****************************************************

永崎氏の反論に対して以下のようにコメントします。相変わらず、私の説明を十分理
解できていない結果とし
か考えられません。同じ説明を何回も繰り返さざるを得ないのにはうんざりしており
ます。

永崎氏のコメント:
「大停電の回避は使用済燃料の発電所内貯蔵と中間貯蔵で解決しませんか?」

回答: 現実に原子力発電所に使用済燃料が溜まりつづけており、「中間貯蔵施設」程
度では、使用済燃料の発生
量から六ヶ所再処理工場の処理量の差に相当するものしか貯蔵できず、敷地内での長
期貯蔵が本格的に出来る
までは、再処理を続けざるを得ない。原子炉によっては、既に燃料プールが満杯に
なっているものがいくつか
ある。 

永崎氏のコメント:
「再処理は天然ウランのほぼ99%を占めるウラン238を燃やす技術の要で、この技
術によって人類は子々
孫々未来永劫の安定したエネルギーを獲得できるのです。」

回答: 言っておられるのは、再処理ではなく、高速増殖炉の実用化である。私も、
高速増殖炉の重要性は理解し
ており、計画どおり全力をあげて実現するよう努力すべきであると言っているが、そ
の実現の見通しが不透明で
あるので、これに代わる選択肢として、海水からのウラン採取の実現可能性も並行的
に検討すべきであると主
張しているのである。

永崎氏のコメント:
「再処理を中止し、50年貯蔵後、高速炉用に再処理した場合はプルサーマルに比べ
て、以下の部分が追加さ
れ、0.4円/kwh位高くなると思いませんか。」

回答: これも繰り返しになるが、40~50年間、長期貯蔵した場合と即時再処理の場合
の経済比較を実質金利3%
とし、即時再処理費を1.0とnormalizeして比較すれば、表1に示すように長期貯蔵の
方が遥かに安くなる。な
お、長期貯蔵期間中の放射能の減衰及び再処理技術の今後の進歩による再処理費の減
を考慮すれば、差はさら
に広がることになる。従って、積立金としては、即時再処理の再処理費の1/3程度を
積み立てておけばよいと
考える。
  
表1 長期貯蔵後再処理と即時再処理との経済比較
        即時再処理    長間貯蔵後再処理
                   (40〜50年間)
再処理費      1.0        1/4〜1/3

廃棄物中間貯蔵費  1/5          −
使用済燃料貯蔵費  −          1/5
  合計       1.2        0.45〜0.53

高速増殖炉が実用化されれば、その立ち上げの段階に大量の初装荷プルトニウムを必
要とする。従って、割高
なプルサーマルによって燃やすよりは、高速増殖炉の実用化を待って、燃やすほうが
はるかに得策である。な
お、永崎氏の経済計算には、現在価値換算を全く考慮していない。また、MOX燃料加
工費がウラン燃料の加工
費の4倍であること、使用済燃料貯蔵費の代わりに、ガラス固化体及びその20~30倍の
容積のTRU廃棄物の貯蔵
費が必要であることを考慮すべきである。

永崎氏のコメント:
「規制改革、自由化や独立行政法人化等の体質改善のチャンスが来ているので、積極
的なよい提言をすれば安
く出来ると信じます。」

回答: 私の説明を全く理解されていないと考えざるを得ません。また、規制改革、
自由化が、再処理コスト
の低減にどのように影響するのか理解できない。
永崎氏の再処理コスト低減のための提案は、再処理技術の実態が判っておられない人
の実現の見通しの無いた
わごとであって、真面目に議論するつもりはない。
原子力委員会が、実態を十分把握して本気に再処理コスト低減策を検討すべきである
が、原子力委員会は、
JNCに任せっきりで、自ら指導力と実行力を発揮して、事態を改善しようとする気概
が見られないので、見通
しは暗いと考えざるを得ない。MOX燃料加工費がウラン燃料の加工費の4倍であるとの
前提では、再処理費は
1500万円/トン以下である必要があり、これは至難と考える。MOX燃料加工費の大幅な
低減もあわせて行う必要
がある。

永崎氏のコメント:
「プルサーマルの方が直接処分より、経済的になります。溜まっている使用済燃料
も、地元からも再処理の約
束を守れといわれますので、第二再処理施設建設という事になるのではないでしょう
か。」

回答: MOX燃料の加工費がウラン燃料の4倍であるとすれば、プルサーマルの方が直接
処分より、経済的になる
と考えている国は無いはずである。今のような状況を続けておれば、第二再処理施設
は誰が建設できるとお考
えでしょうか。高速増殖炉の実用化が出来、かつ、高度再処理技術の実用化により、
再処理費が安くなって始
めて実現可能と考える。
「高速炉パーク構想」は高速増殖炉の実用化が出来かつ、地域住民に受け入れられて
初めて実現できるもので
あり、何れも不透明な現段階に議論するのは時期尚早である。大量のプルトニウムを
使う高速増殖炉、ナトリ
ウムのボイド反応度係数が正であること、化学的に活性なナトリウムの使用などによ
り、地元住民の理解を得
て立地を円滑に進めるのは、かなりの困難が予想される。プルサーマルでさえ思うよ
うに進めることの出来な
い状況で非現実的なことを議論するのはどうかと思う。

TRU廃棄物の処分費に対する永崎氏のコメント:

私の言っている「処分概念が決まっていない現段階に、処分費や処分場面積を正確に
推定することは不可能で
はありますが、再処理費やMOX燃料加工費に比べればたいしたことはないと考えま
す。永崎氏のいっておられ
る発熱量は、TRU廃棄物の場合、処分費には関係ありません。」の意味が理解できな
いことによるものと考え
られる。再処理費やMOX燃料加工費に比べればたいした問題ではないので、これ以上
議論するつもりはない。

永崎氏のコメント:
「官民挙げての原子炉建設費低減の研究と改革の実施や、米国で行われている新設へ
の支援なども参考に革新
型原子炉の導入支援等の適切な政策を実施しなければならない」

回答: 問題は、電力自由化により、電力会社の経営者に原子力発電所を新設するイ
ンセンティブがなくなっ
ている現状をどう解決するかであって、不確定なバックエンド費用の経済的負担の軽
減などに原子力委員会は
責任を持って取り組むべきである。革新型原子炉の導入支援などについても、原子力
委員会は、指導力も実行
力も無く、JNCまかせで、実態の把握も出来ていないで、どのようにして適切な政策
が実施できるとお考え
か、お伺いしたい。

永崎氏のコメント:
「国は、六ヶ所再処理工場を引き取り、MOX燃料工場も作って、MOX燃料をウラン燃料
価格並みの価格で電力会
社に提供することに賛成であります。」
回答: 私の提案に賛成であれば、 国が再処理工場及びMOX燃料加工工場を運営し、
MOX燃料をウラン燃料価格
並みの価格で電力会社に提供することを進めるようお願いしたい。他の国で、電力会
社が再処理を担当してい
る国は無く、国営企業が担当しているので、国が手が出せないと言う心配はないと考
える。

永崎氏のコメント:
「トリウムサイクルでは高ガンマー線対策が必要で燃料は遠隔操作しないといけませ
ん。プルトニウムより遥
かに困難です。」

回答: 私の説明を全く理解出来ないためか、技術が全くわかっておられないためと
考える。   私の提案
する軽水型トリウム発電炉は、燃料がTh-Pu混合燃料であり、使用済燃料は直接処分
するので、高ガンマー線
対策は不必要である。これとプルサーマルを比較すれば、前回、説明したように、軽
水型トリウム発電炉の方
が、燃料利用効率、核不拡散、環境負荷、経済性、社会的受容性の何れの点からも優
れていると考える。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp