EEE会議(Re:核燃料サイクル政策論争:再処理、プルサーマルの経済性など: 豊田氏から永崎氏へ)...................2003.9.27

標記件名の永崎隆雄氏のメール(9/25)に対し、豊田正敏氏から次のような再反論の
メールをいただきました。ご参考まで。
--KK

*******************************************

永崎氏の回答、反論に次のように反論します。不毛の議論が多いので簡単に述べま
す。 
 
1.永崎氏の反論: 「ATRはABWR先進型軽水炉がプルトニウム燃料を全炉心で経済的に
燃やせるという代替案が
出たから中止しています。又、中間貯蔵も大分前にみとめています。」

反論: ATRをやめたのは、原子力委員会が自ら決断したのではなく、電力会社からの
要請によってやむなくや
めたのである。代替案が出たからやめたと言うのはこじつけであって、A-BWRは、
ずっと前に実用化されてい
る。中間貯蔵についても、私が有力な選択肢に位置付けるべきであると主張してから
決めるまでに、数年を要
している。また、中間貯蔵がよくて、敷地内での長期貯蔵が認められないのは理解で
きない。


2. 永崎氏の反論: 「劣化ウラン弾の世論動向に注目すべきでしょう。プルトニウム
は一般世論に過剰反応さ
れています。」

反論: 劣化ウランは、濃縮をすれば大量に発生するので、もし、劣化ウラン弾を問
題にするのであれば、濃
縮を止めるべきということにならないのでしょうか。


3. 永崎氏の反論: 「豊田様の提案は全く解りません。プルサーマルがプルトニウム
を取出す再処理が高いか
らやめろなといっておられたのにプルトニウムを使うのですか。
豊田様の提案は米国第4世代炉の6候補中に入っていません。又、原子力委員会の「革
新的原子力システムの今
後の進め方」にある約40の提案炉にもありません。」

反論: 私は、再処理によって回収されるプルトニウムは、高速増殖炉で燃やすべき
であると主張しているの
であるが、高速増殖炉の実用化の見通しがない場合に備えて、再処理して回収したプ
ルトニウムを割高なプル
サーマルでなく、軽水型トリウム炉を選択肢と考えたらどうかと提案しているのであ
る。この方が経済的であ
るだけでなく、プルトニウムを生成せず、核不拡散の観点からも優れており、マタ、
アクチニド元素も殆ど発生
せず、環境負荷も小さい。米国第4世代炉の候補とか、原子力委員会の提案炉にない
ということは問題ではな
く、検討してよいとわかれば、採用すべきではないでしょうか。


4. 永崎氏の反論: 「高速増殖炉は再処理技術と一体になって増殖が実現します。で
すから再処理も要で
す。」

反論:「再処理はウラン238を燃やす技術の要である」と言っておられるので、間違い
であるといっているので
ある。日本語をもう一度勉強しなおされてはどうでしょうか。


5. 永崎氏の反論: 「即時再処理は建設費の償却が終わる15年後には再処理費が1/
3になります。30年償却
では7/10くらいでしょう。長期貯蔵後はまず技術も何も残っていません。このよう
な状況で再処理費が1/
4とは信じがたいことです。現在のコスト評価では3/10が運転費ですので、建設費
はほぼ0円になります。
運転経験もなく、改善のしようもありませんので、あまり変わらないと思います」

反論: 再処理施設の耐用年数は、20年で設計されており、現時点で何年持つか断定
できないので、30年償却
は不適切である。「長期貯蔵後はまず技術も何も残っていません。」と言っておられ
るが、高度再処理技術の
技術開発を続けることにより、より経済的な再処理技術の実現が期待できる。「再処
理費が1/4とは信じが
たい」と言っておられるが、40~50年後の再処理費を現在換算しただけの数値であ
る。


6. 永崎氏の反論: 「ウラン燃料の加工費は全体の約4%です。MOX加工量はウラン燃
料の約10%です。これ
が4倍に高くなっても全体では4%×0.1×4=大よそ1.6%の上昇に過ぎませ
ん。ガラス固化体の貯蔵
費は0.03円/kwh、使用済み燃料貯蔵は0.105円/kwhとして評価しております。TRU廃
棄物の貯蔵費は評価して
いませんでしたが、処分費0.03円/kwh以下でしょう。」

反論: 経済計算手法がお判りになっていないようである。OECD/NEAの試算と同じ解
析手法により、前提条件
はわが国の現状に合わせて、ウラン精鉱費50ドル/kgU、転換費8 ドル/kgU、濃縮費
110ドル/swu、ウラン燃料成
型加工費700ドル/kgU、MOX燃料成型加工費2,500~3,000ドル/kgHM、再処理費
3,000~3,500ドル/kgHM、高レベル
廃棄物処分費600ドル/kgUと仮定し、プルサーマルと直接処分の比較をすれば、プル
サーマルの燃料サイクル費
は直接処分に比して2倍以上となる。また、上述のように、MOX燃料加工費がウラン燃
料の加工費の4倍と仮定す
れば、再処理費が1,500万円/トン以下で無ければ直接処分に比して経済的でないと試
算される。OECD/NEAの解
析手法を勉強されれば、計算の仕方に間違いがあることに気づかれると思う。


7. 永崎氏の反論: 「日本の場合既に再処理工場は建てられております。この費用を
どなたか関係責任者が自
腹でお払いになるのなら、良いのですが、再処理を中止し、直接処分するとなるとこ
の費用が直接処分にのっ
かってきます。ですから高くなるのです。豊田様は再処理を反対して止めたいのなら
退職金を返納して、自腹
を切って、責任を果たさないといけません。」

反論: 私は、原子力発電所で使用済燃料が溜まり続ける状況では、再処理を続けざ
るを得ないと考えてお
り、六ヶ所再処理工場を止めろといったことはない。私が言っているのは、「今のよ
うな状況を続けておれ
ば、第二再処理施設は誰が建設できるとお考えでしょうか。高速増殖炉の実用化が出
来、かつ、高度再処理技
術の実用化により、再処理費が安くなって始めて実現可能と考える。」と言っている
ので、相変わらず、私の
説明を理解しようとされないのは遺憾。


8. 永崎氏の反論:「何もやらなくて待っていて価格が安くなることのほうがおかし
い。」

反論:「高度再処理技術の実用化により、再処理費が安くなって始めて実現可能」と
言っているのであって、
JNCの高度再処理技術の実用化のための技術開発及び再処理プラントの建設費低減対
策の検討を進めるべきで
あるが、その努力が足りないと指摘しているのである。


9. 永崎氏の反論:「豊田様は障害の多さと前途の長さにたじろがれましたか。人は夢
も持て、困難に挑戦し、
夢を実現します。一代で無理なら事業を子孫に継承して夢を実現します。
既に化学活性なナトリウムは何十年循環を続けてきています。」

反論: 私がたじろいているのでは無く、また、技術的に安全上問題があると言ってい
るのでもなく、「大量の
プルトニウムを使う高速増殖炉、ナトリウムのボイド反応度係数が正であること、化
学的に活性なナトリウム
の使用などにより、地元住民の理解を得て立地を円滑に進めるのは、かなりの困難が
予想される。」従って、
「『高速炉パーク構想』は高速増殖炉の実用化が出来かつ、地域住民に受け入れられ
て初めて実現できるもの
であり、何れも不透明な現段階に議論するのは時期尚早である。」と言っているので
ある。もう少し相手の
言っていることを理解するよう努力されるよう望む。


10. 永崎氏の反論: 「バックエンド事業については、まず、民間の方から正式に申し
入れないといけません。
米国ではNEIが政府に積極的に要求を出します。」

反論: 意味不明。政府に要求しても、満足な答えが得られないのが実状。


11. 永崎氏の反論: 「革新炉については既にその進め方がH14 年11月に原子力委員会
から出されています。わ
が国から開発実用化と国際連携プランを世界に提示して技術、資金を募集し、国際分
担で進める。民間各社も
国に何でも要求するのでなく、自ら国際協力を求めて革新炉の世界提案をするべき時
代になっています。」

反論: 国際協力で実用化を図るのは、極めて難しく、原子力委員会の強力なリーダー
シップと調整力及び実行
力が無ければ達成できない。
民間企業に期待されても、電力会社は、軽水炉で手一杯で、電力自由化を控えて、リ
スクの大きい革新炉を自
ら手がけることは不可能であると考える。


12. 永崎氏の反論:「再処理の営利事業を新統合法人でやれるのだと思います。昔の
民活の経緯もあり、民間
事業者を募集し、民間がやらないとなったときです。ただ、原燃も電事連もこの事業
を放棄するつもりはあり
ません。」

反論: 再処理事業は、プルサーマルが思うように進まず、プルトニウムが溜まり続
け、何時停止されられる
か判らない不確定な事業であり、割高で、予想外の経済負担も予想されるので、電力
会社としては、放棄でき
るのであれば放棄したいと考えるのではないでしょうか。勿論、再処理工場が止まっ
ては困るので、責任上、
日本原燃が運転、保守を委託する必要があると考える。ただ、経済産業省が、このよ
うな不確定事業を国が引き
受けることを了承するとは考えられない。貴殿が、国が引き受けるよう働きかけるこ
とを期待する。    
                        以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp