EEE会議(Re:核燃料サイクル政策論争:再処理、プルサーマルの経済性など: 永崎氏から豊田氏へ)....................2003.9.28

昨日(9/27)の豊田正敏氏の再反論に対し、永崎隆雄氏より次のようなメールが寄せら
れました。ご参考まで。
--KK
************************************************

豊田様からの再反論(9月27日)に対しては、フランスCEAのMIT報告反論が
総括的にほとんど答えていると思います。
再処理経験国として豊田様の疑問の大部分に懇切丁寧に答えていますので、ご参考に
してください。
 
1.豊田氏:  「ATRをやめたのは、原子力委員会が自ら決断したのではなく、電力会
社からの要請によってやむなくやめたのである。代替案が出たからやめたと言うのは
こじつけであって、A-BWRは、ずっと前に実用化されている。」

反論:
 本年4月の原産会議年次大会で原子力委員長は、大間でのATR実証炉中止理由は
それに替わるプルトニウムリサイクル法ABWRによるフルMOXが提案されたから
だと発言しています。ABWRの実用化ではありません。ABWRでのフルMOXが
経済的な代替案として出てきたから中止したのです。

2.豊田様:「中間貯蔵についても、私が有力な選択肢に位置付けるべきであると主
張してから決めるまでに、数年を要している。また、中間貯蔵がよくて、敷地内での
長期貯蔵が認められないのは理解できない。」

反論:
 敷地内貯蔵は前から国が認めています。各電力が増設を申請すればよいだけです。

3.豊田氏:「劣化ウランは、濃縮をすれば大量に発生するので、もし、劣化ウラン
弾を問
題にするのであれば、濃縮を止めるべきということにならないのでしょうか。」

反論:
 最終的には高速炉の導入で劣化ウランを消費しないとこの問題は解決しません。
 その時は濃縮の規模は段々少なくなります。

 海水ウランが無尽にあるから直接処分法がよいと言ってる豊田様の発言に対して、
劣化ウランが無尽蔵に貯まり、問題です。対策がありますか?と聞いています。

さらに注目する点は 
ワンススルー直接処分がプルトニウムを取り出さないから核不拡散上良いという米国
MIT報告に、フランスは直接処分選択肢のウラン濃縮の方がもっと核拡散が容易
じゃないかと反論しています。核不拡散上、プルトニウムリサイクルの方がいいので
はないかと言っています。

 核不拡散対策はIAEAや各国間の国際的な保障措置の管理体制で実現するもの
で、商業利用のプルトニウムや濃縮ウランが軍事用に転用された事実はないとフラン
スは反論しています。


3. 豊田氏:「私は、再処理によって回収されるプルトニウムは、高速増殖炉で燃や
すべきであると主張しているのであるが、高速増殖炉の実用化の見通しがない場合に
備えて、再処理して回収したプルトニウムを割高なプルサーマルでなく、軽水型トリ
ウム炉を選択肢と考えたらどうかと提案しているのである。この方が経済的であるだ
けでなく、プルトニウムを生成せず、核不拡散の観点からも優れており、また、アク
チニド元素も殆ど発生せず、環境負荷も小さい。米国第4世代炉の候補とか、原子力
委員会の提案炉にないということは問題ではなく、検討してよいとわかれば、採用す
べきではないでしょうか。」

反論:
 私が言っているのは
 1)プルサーマルは世界で実現しており、
 2)他の石炭や石油や水力に比べ、高くなく、
 3)また直接処分に比べてもほぼ同じ価格であり、今後、15年の償却期間後は安
くなり、
 4)日本でも世界最新の工場が建設済みであり、
 5)この工場はプルトニウムを単体で取り出さない核不拡散上の対策も強化してい


と言うのに、豊田様は

 5)これを使用済燃料貯蔵容量不足による大停電を理由に15年だけ運転し、
   (実際は今後15年は対策済みで大停電は起こらないにもかかわらず)
 6)償却が終わり、プルサーマルコストも直接処分より更に安くなる15年後の時
期に、
 7)2015年に高速炉の経済性が実現しないなら、貴重なプルトニウムを高価な
プルサーマルで消費するのはもったいないと言う理由で 

 8)プルサーマル(軽水炉でのMOX燃料燃焼)を途中で放棄し

トリウムープルトニウム軽水炉代替案
 9)プルサーマルと何も変わらないウラン燃料系の使用済み燃料の再処理を継続
し、
   プルトニウムを回収し、
10)プルトニウムを生成しないトリウムと混ぜるため新しいトリウム燃料工業を興
し、
11)軽水炉でプルトニウムを燃やし、焼却処分し
12)厄介な高放射性U232娘核種を含む使用済み燃料を処分する
のが、
1)どうして既存プルサーマル(ウランープルトニウム燃料の軽水炉燃焼)より安く
なるのか。
2)どうしてプルトニウムがもったいないと言っていたのに消滅させるのか。
です。
 
 豊田様のプルトニウムートリウム燃料軽水炉利用はフランスの先進軽水炉多重サイ
クルのプルトニウム消滅法=不活性材−プルトニウム混合燃料に似ています。
 フランスは、この不活性材プルトニウム燃料の開発に数十年かかるとしています。
 トリウムをこれに替えると言うことは更に開発時間がかかると思います。

 日本はプルトニウムを消滅させるのならば、このような方法を取らなくても先進軽
水炉全炉心MOX装荷の技術があり、これを適用すれば、大量のプルトニウムを早期
に焼却消滅できます。

 私が豊田様の言っていることがまったくわからないのは、豊田様があるときは
 1)プルトニウムは高速炉用に取るべきだと言ったり
 2)トリウムープルトニウム軽水炉で処分するべきだといったり
どちらなのか論理が混乱している点です。


4. 豊田様 :「再処理はウラン238を燃やす技術の要である」と言っておられるの
で、間違い
であるといっているのである。日本語をもう一度勉強しなおされてはどうでしょう
か。」

反論:
本議論は日本語の問題でなく再処理の持つ本当の意義の議論です。

5. 豊田様:「再処理施設の耐用年数は、20年で設計されており、現時点で何年持つ
か断定できないので、30年償却は不適切である。『長期貯蔵後はまず技術も何も残っ
ていません。』と言っておられるが、高度再処理技術の技術開発を続けることによ
り、より経済的な再処理技術の実現が期待できる。『再処理費が1/4とは信じがた
い』と言っておられるが、40~50年後の再処理費を現在換算しただけの数値である。

反論:
 15年で償却評価するならそれで結構です。その代わり、15年後には評価はぐっ
と安くなることを追加すべきです。
 問題は実際世界でどれくらいのプラント寿命なのかです。世界の再処理工場の実績
を示しましたが30年は十分持っています。

6. 豊田氏: 「経済計算手法がお判りになっていないようである。OECD/NEAの試算
と同じ解析手法により、前提条件はわが国の現状に合わせて、ウラン精鉱費50ドル
/kgU、転換費8 ドル/kgU、濃縮費110ドル/swu、ウラン燃料成型加工費700ドル/kgU、
MOX燃料成型加工費2,500~3,000ドル/kgHM、再処理費3,000~3,500ドル/kgHM、高レベ
ル廃棄物処分費600ドル/kgUと仮定し、プルサーマルと直接処分の比較をすれば、プ
ルサーマルの燃料サイクル費は直接処分に比して2倍以上となる。また、上述のよう
に、MOX燃料加工費がウラン燃料の加工費の4倍と仮定すれば、再処理費が1,500万円/
トン以下で無ければ直接処分に比して経済的でないと試算される。OECD/NEAの解析手
法を勉強されれば、計算の仕方に間違いがあることに気づかれると思う。」

反論:
何度言ってもお分かりにならないので、フランスCEAの以下の反論をご参考くださ
い。

コスト: MIT評価では燃料コストは直接処分(ウラン燃料)時が再処理(MOX燃料)
時の約4.5倍としている。

   これは誤解を招く結論である。本当は全体で考えないといけない。MOX燃料は
全体燃料の16%に過ぎないのでこれが4.5倍になっても0.16×4.5倍=0.56だけ
しか燃料費は上昇しない。

(下表参照)

    直接処分時      再処理リサイクル時

       単価  構成  コスト    構成  コスト

ウラン燃料: 1  100 100    84  84

MOX燃料 : 4.5    0     0     16  72

合計             100       156



更に資本費や運転費や廃棄物処分費を含めた全体コストの中の燃料コストは4%に過
ぎず、それが1.5倍の6%になり、2%上昇に過ぎない。

MIT報告はこれを注で述べ、コストは再処理でも直接処分でもほぼ同じという評価を
している。加えるにどのようなケースでも不確定性が多いとしている。

 MIT報告を公正に評価すれば、OECDが以前出したリサイクルと直接処分はほとんど
差がないということになる。

更に以下の点を評価すれば、再処理リサイクルの選択肢が利点を持つ。

1)      再処理の改善でコストが下がる

多くの再処理経験による改善、廃棄物発生の低減、G4でのアクチニドリサイクルと
システム集約化等

2)     ウラン価格が本1000GW発展シナリオでは上昇する



7. 豊田様:「私は、原子力発電所で使用済燃料が溜まり続ける状況では、再処理を
続けざ
るを得ないと考えており、六ヶ所再処理工場を止めろといったことはない。私が言っ
ているのは、「今のような状況を続けておれば、第二再処理施設は誰が建設できると
お考えでしょうか。高速増殖炉の実用化が出来、かつ、高度再処理技術の実用化によ
り、再処理費が安くなって始めて実現可能と考える。」と言っているので、相変わら
ず、私の説明を理解しようとされないのは遺憾。」

反論:
豊田様がそう思われても大多数の人は豊田様が再処理中止論者と誤解しています。原
子力反対派でさえもです。
論点も矛盾しています。サイクル機構の高速炉や、濃縮や、ATR開発にあれほど不
信を表明され批判されたにもかかわらず、サイクル機構がやっている高度再処理技術
の実用化には期待するのですか。矛盾しています。新しい技術によるコスト低減もあ
りますが、六ヶ所再処理工場での商業経験の方がフランスの実例から実際効いてくる
と思います。

8. 豊田氏:「『高度再処理技術の実用化により、再処理費が安くなって始めて実現
可能』と言っているのであって、JNCの高度再処理技術の実用化のための技術開発及
び再処理プラントの建設費低減対策の検討を進めるべきであるが、その努力が足りな
いと指摘しているのである。」

反論:
 再処理は誰かメーカや研究開発者が馬鹿チョンカメラやテレビを開発してくれて、
スイッチを入れたらすぐうまくいくようなものではありません。自ら開発能力を持っ
てやらないといけないでしょう。


9. 豊田様: 「私がたじろいているのでは無く、また、技術的に安全上問題があると
言っているのでもなく、「大量のプルトニウムを使う高速増殖炉、ナトリウムのボイ
ド反応度係数が正であること、化学的に活性なナトリウムの使用などにより、地元住
民の理解を得て立地を円滑に進めるのは、かなりの困難が予想される。」従って、
「『高速炉パーク構想』は高速増殖炉の実用化が出来かつ、地域住民に受け入れられ
て初めて実現できるものであり、何れも不透明な現段階に議論するのは時期尚早であ
る。」と言っているのである。もう少し相手の言っていることを理解するよう努力さ
れるよう望む。」

反論:
開発には2通りの方法があります。

1.現実の延長線で開発を進めていく。(改良型軽水炉開発等)
2.将来の夢を描いて、必要なものを開発していく。(アポロの月面着陸)
 
高速炉は後者の夢先行開発です。
まず、将来どうなるかを明らかにして、開発しなければならないこと、地元PRの要
点等の目標を決めます。
この、パーク構想で色々の開発目標が出てきますし、技術上だけでない習熟効果等の
経済評価も正確になります。
再処理規模は年間約100トンとか、600KW級の付帯ユーティリティー開発と
か、5年後との建設とか高速炉は150万kw級を毎年建設とかです。メーカだって
単発の注文か、継続の注文かで取り組み体制、工場規模が変わります。このようなイ
メージがないとメーカの経済評価はできません。

10. 豊田様:「『バックエンド事業については、まず、民間の方から正式に申し入れ
ないといけません。米国ではNEIが政府に積極的に要求を出します。』は 意味不明。
政府に要求しても、満足な答えが得られないのが実状。」

反論:
豊田様の誤解です。
先日の遠藤原子力委員長代理の核燃料サイクル講演でもバックエンドとその政策対策
は今後検討するといていましたが。 
 又、産業省の総合エネルギー調査会も検討すると言っていましたが。


11. 豊田様: 「国際協力で実用化を図るのは、極めて難しく、原子力委員会の強力
なリーダーシップと調整力及び実行力が無ければ達成できない。民間企業に期待され
ても、電力会社は、軽水炉で手一杯で、電力自由化を控えて、リスクの大きい革新炉
を自ら手がけることは不可能であると考える。」

反論:
 困難に挑戦して、工夫してこそ、誰もが出来ない強力な競争力がつきます。
 私は自由化をむしろ競争激化を生み、技術開発競争を導き、企業は自ら革新炉開発
国際提携を進めると思います。
 米国で起こっていることやこれからヨーロッパで起こる原子炉革新の動きはそれを
物語っていると見ています。

12. 豊田様: 「再処理事業は、プルサーマルが思うように進まず、プルトニウムが
溜まり続け、何時停止されられるか判らない不確定な事業であり、割高で、予想外の
経済負担も予想されるので、電力会社としては、放棄できるのであれば放棄したいと
考えるのではないでしょうか。
 勿論、再処理工場が止まっては困るので、責任上、日本原燃が運転、保守を委託す
る必要があると考える。ただ、経済産業省が、このような不確定事業を国が引き受け
ることを了承するとは考えられない。貴殿が、国が引き受けるよう働きかけることを
期待する。」

反論:
 電力は放棄するとは言っていませんし、高いとも言っていません。電事連のホーム
ページに表明が載っています。
原燃はプールの修理等の追加工事の金額も、元の資金内で工事を実行すると言ってい
ます。
電力、原燃が無理だ、出来ない、放棄をすると表明すれば、国は引き取ると思いま
す。
ご期待の件は努力実行します。