EEE会議(Re:核燃料サイクル政策論争:再処理、プルサーマルの経済性など: 豊田氏から永崎氏へ).........2003.9.29

表記件名の永崎隆雄氏のメール(9/28)に対し、豊田正敏氏から次のメールをいただき
ました。
ご参考まで。 
--KK

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永崎氏との討論は、すれ違いの議論が多く不毛の議論となり、他の会員の方に迷惑に
なると考え、今回は簡単に
コメントしますが、これで打ち切りにします。

1. ATRの中断は、原子力委員会が自ら決断するのは、難しいと考え、電力会社が
A-BWRの代案を提示してやめるよ
う要請したと理解している。

3. 「劣化ウランは、最終的には高速炉の導入で消費しないとこの問題は解決しませ
ん。」と言っておられるの
はそのとおりであるが、高速増殖炉の実用化の見通しが暗いことが問題である。高速
炉を導入されたとして
も、今世紀中は劣化ウランは大量に存在することになり、劣化ウラン弾はいくらでも
作れるので、劣化ウラン弾
を無くするために高速増殖炉が必要というのは本末転倒の議論である。高速増殖炉が
実用化されれば、劣化ウ
ランは必ず燃やされるので、その心配は無いし、実用化されなければ、原子力は今世
紀限りで終わりになるので
それほどの量の劣化ウランは蓄積されない。従って、このような議論は無意味であ
る。

 高速増殖炉の実用化の見通しがない場合に備えて、再処理して回収したプルトニウ
ムを割高なプルサーマル
でなく、軽水型トリウム炉を選択肢と考えたらどうかと提案しているのである。この
方が燃料の利用効率が高
く、経済的であるだけでなく、プルトニウムを生成せず、核不拡散の観点からも優れ
ており、また、アクチニド元
素も殆ど発生せず、環境負荷も小さいという利点がある。しかし、高速増殖炉が実用
化されなければ、何れにし
てもウラン資源が枯渇するので、海水からのウラン採取の実現可能性を検討すべきで
あると提案しているので
ある。技術の判らない人とこれ以上議論しても無駄である。フランスは、再処理輸出
国であるので、再処理、プ
ルサーマルを弁護するのは当然である。


3. 「ウラン238を燃やす」ために必要なのは、原子炉とプルトニウムである。主役
は、高速増殖炉であって、再
処理は脇役に過ぎず、要とはいえない。要という日本語の意味がお判りにならないよ
うである。


4. 「15年で償却評価するならそれで結構です。その代わり、15年後には評価は
ぐっと安くなることを追
加すべきです。問題は実際世界でどれくらいのプラント寿命なのかです。世界の再処
理工場の実績を示しまし
たが30年は十分持っています。」と言っておられるが、プラントを建設するかどう
かは、耐用年数期間中のコ
ストに基づいて決めるのが常識である。その後は、経済情勢の変化もあり、また、陳
腐化も考えなければならな
いかもしれない。また、「30年持つ」といわれるが、今までの再処理工場は、東海再
処理工場も含めて、定格出
力が出ないとか、稼働率が悪いとかで、UP-3やThorpになって始めて、商業プラント
と言える。


6. 経済計算手法がお判りになっていないのは、永崎氏の方である。OECD/NEAの試算
と同じ解析手法により、前
提条件をわが国の現状に合わせて、ウラン精鉱費50ドル/kgU、転換費8 ドル/kgU、濃
縮費110ドル/swu、ウラ
ン燃料成型加工費700ドル/kgU、MOX燃料成型加工費2,500~3,000ドル/kgHM、再処理費
3,000~3,500ドル/kgHM、
高レベル廃棄物処分費600ドル/kgU、燃焼度45,000MWD/Tと仮定し、プルサーマルと直
接処分の経済比較をすれ
ば、下表のように、プルサーマルの燃料サイクル費は直接処分に比して3倍近くにな
る。また、上述のように、
MOX燃料加工費がウラン燃料の加工費の4倍と仮定すれば、再処理費が1,500万円/トン
以下で無ければ直接処分
に比して経済的でないと試算される。OECD/NEAでは、プルトニウム・クレジットを5
ドル/gPuとしているのが、
−20~−31ドル/gPuとなるところに問題がある。なお、この試算には、ガラス固化体
の20~30倍の容積のTRU廃棄
物の処理、貯蔵及び処分費は、処理及び処分方法が決まっていない現在、推定できな
いので含まれていない。ま
た、回収ウラン(減損ウラン)は、燃焼度45,000MWD/T程度では、ウラン236とウラン
232が蓄積され、濃縮によって
その濃度が高くなり、濃縮費及び燃料加工費が高くなるので、天然ウランに比して割
高となる。従って、当面、
再処理工場敷地内に貯蔵することになるので、ウラン・クレジットは0とした。永崎
氏は、計算のやり方も、現在
価値換算も判っておられないようである。

  表 再処理・プルサーマルと直接処分の経済比較
     再処理・プルサーマル    直接処分
項目     (ミル/kWh)      項目            (ミル/kWh)
ウラン精鉱   1.14       ウラン精鉱 1.14
転換      0.18         転換      0.18
濃縮      1.85        濃縮      1.85
成型加工    1.94         成型加工   1.94
フロント・         フロント・
エンド小計   5.11     エンド小計 5.11

使用済燃料輸送 0.11      使用済燃料及び                   
           長期
貯蔵輸送 0.51
再処理   6.78~7.90          
             使用済燃料調整0.27~0.35
             及び廃棄物処分
廃棄物処分 0.10~0.14
バック・         バック・
エンド小計  6.99~8.15   エンド小計    0.78~0.86
プルトニウム 2.44~3.84
クレジット
合計     14.54~17.09    合計    5.89~5.97


7.「サイクル機構の高速炉や、濃縮や、ATR開発にあれほど不信を表明され批判さ
れたにもかかわらず、サ
イクル機構がやっている高度再処理技術の実用化には期待するのですか。矛盾してい
ます。」と言っている
が、私は、JNCの技術開発のスピードが遅く計画どうりに進められた例がないことを
問題にしているのである。
高度再処理技術の実用化の問題点については、「JNCへの指摘」を参照されたい。

8&11. 同じく、「JNCへの指摘」を参照されたい。

なお、これらの問題については、JNCの中神氏と議論するつもりで、人の説明を理解
しようとせず、また、技術的
に判っておられない永崎氏といくら議論しても無意味であるので、今回で打ち切りと
します。       
            以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp