EEE会議(「Atoms for Peace in Japan/Asia会議」の概要:とりあえずのご報告).....................2003.10.2


ご案内のように、アイゼンハワー大統領の国連演説50周年を記念する「Atoms for
Peace in Japan/Asia会議」が、9月29−30日、日本橋東友会館にて盛大に開催
されました。「変革のとき、50年を振り返り、これからの50年を考え始めよう」
というスローガンを掲げたこの極めてユニークな会議は、日本原子力学会の主催、当
EEE会議、エネルギー問題に発言する会などの後援で開催されたものです。斎藤伸三
原子力学会長の開会挨拶を皮切りに、アイゼンハワー演説(1953年12月8日)の歴史
的背景、同演説以後50年間の日本おける原子力平和利用活動の回顧と反省、その上
で今後50年間の原子力活動はいかにあるべきか(とくにエネルギー安全保障、新型
炉、コスト、放射線、リスク、広報・教育問題等々)について、産官学の立場から縦
横無尽に議論を行いました。出席者は約150名で、当EEE会議の会員の方々も多数
参加されました。

この会議のアイディアは、昨年末から本年初めにかけての当EEE会議での議論の中か
ら生まれてきたものですが、とくに原子力学会の企画委員で当会議の特別会員でもあ
る天野 治氏(東京電力技術開発研究所(川崎)原子力リサイクルGM)の献身的な
努力によって実現したものです。この機会に同氏の創意と熱意に対し心からの敬意を
表したいと思います。また、会議開催に当たっていろいろご支援、ご協力くださった
多くの方々に対し厚く御礼を申し上げます。 

会議の概要は、電気新聞などでも報道されましたが、会議の最終セッションで天野氏
が行った「議長総括」と、小生の発表の一部をとりあえずの報告として以下に掲げて
おきます。詳細な議事録は後日原子力学会によって取り纏められるものと伺っており
ます。
--KK

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Atoms for peace in Japan ( Asia) 会議
「変革の時、50年を振り返り、これからの50年を考え始めよう」

<天野治氏による総括> 
1. RIA(リスク インフォームド アプローチ)を炉、サイクルの建設だけで
はなく、試験のための許認可にも導入できるように、規制側にテクニカルスタッフを
要望、そのスタッフには、炉、サイクルの建設、運転経験豊富なヤングオールドの活
用を。また、それを実現するために、産官学のロジステックの議論も深めよう。

2. イデオロギー的な議論から論理的に対話に、放射線を身近に感じるように工夫
する。以下の点に留意する。1mSvの影響の有無を明確にするには、一億人のデー
タが必要である(物理的、医学的に影響がないか、検出できないことを示すことは可
能)、放射線がどの程度かの相場間を持ってもらうことが大事.常日頃の自然放射線
値の揺らぎ(モニタリングポストの値)

3. アジアを含め、世界のエネルギーの需要と供給および環境影響は不確実であ
る。さまざまなシナリオ分析が必要。

4. 「エネルギー問題に発言する会」「EEE会議」のご協力に感謝、今後も是
非、連携していきたい。

(注)RIAを導入することにより、
・ 許認可プロセスが迅速で効率的になる。
・ 限られたリソースをリスクの高い所に投資でき、安全性を高めることが出きる.
・ リスクの小さな失敗を許容する。経験に学ぶことができる.
・ 運転経験をつむ理由が明確になる.

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<金子の報告の一部>

Atoms for Peace in Japan/Asia in 21st Century

1.目的と基本認識

 −まず日本自身の原子力の活性化が必要:アジアのリーダーの責任自覚せよ
 
 −日本のエネルギー安全保障とアジアのそれは一体化しているとの認識

 −原子力・エネルギー協力を通じてアジアの平和、進歩、繁栄に貢献するとの基本  姿勢
(Atoms for Peace, Progress and Prosperity)

 

2.技術・人材育成面での協力

 −日本はアジア諸国の科学技術水準の向上と人材育成の面で貢献すべき

 −それは日本自身の原子力技術水準の維持・向上にも役立つ

  −「シルバー・ヴォランティア計画」による熟練人材の活用を!

3.地球温暖化防止(CO2削減)の努力

 −原子力でアジア諸国のCO2排出を多少でも減らせば温暖化防止にプラス

 −そのためには京都議定書のCDMを原子力にも適用させるべき。そのような提案  をアジア諸国と一緒になって推進せよ(第2約束期間への対策)

 

4.原子力発電の戦略的価値の確認

 −準国産エネルギーとしての原子力の重要性

−原子力は中東石油市場における交渉のカードにもなり得るとの認識

  −非核兵器国日本が関与することによってアジアにおける「安全で平和な(核拡散  の惧れのない)原子力」の実現が可能

 

5.アジア地域原子力協力の体制作りの重要性

  NPTIAEAを補完するような地域レジーム(ASIATOM)の構築が急務

 −バックエンド(廃棄物処分)でも地域協力の可能性を探るべし

 −米国、フランス、ロシア等域外国との協調・協力も重要

 −いまこそ日本が指導力を発揮すべきとき(自力本願で活路を拓く)

 

  [詳細は、金子熊夫著「日本の核・アジアの核」朝日新聞社、1997]