EEE会議(Re:核燃料サイクル論争: 処分場の所要面積: 河田東海夫氏→豊田正敏氏)...........03.10.06


標記件名の豊田正敏氏のメール(10/1)に対し、河田東海夫氏(核燃料サイクル開発
機構理事)から
次のようなメールをいただきました。ご参考まで。
--KK

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10月1日付、豊田氏からの処分場所要面積についての報告について、いくつかコメン
トをいたします。

1.「わが国の有力な適地と考えられる海岸地域の堆積岩の場合、直接処分の処分場
の所要面積はガラス固化体の場合に比べてそれほどの違いは無く、2倍以内に収まる
見通しである。」との結論について。

軟岩の堆積岩で垂直配置を仮定した場合の結論としては、概ね同意できます。
サイクル機構のH12報告に示した代表レイアウトでも、硬岩の結晶質岩への水平、
又は垂直配置、及び堆積岩での水平配置の場合に比べ、岩盤強度が設計の第一支配要
因となる堆積岩での垂直配置は、所要面積がほぼ倍になっております。前3ケースは
熱的条件が支配要因となっており、その場合、相対的に発熱が大きい直接処分は、4
倍の面積を必要とする計算になりますが、堆積岩での垂直配置では2倍で済むという
勘定になります。ほかの細かい条件を勘案した場合、それ以下になる可能性もあると
思います。

2.処分概念(廃棄体の定置方式)
SKBの例から、垂直配置を前提とすべきであるとしていますが、特に軟岩の堆積岩の
場合には、経済性の観点から、水平配置の実現可能性を追求すべきだと思います(工
学的にどうしても無理ということであれば垂直もやむを得ませんが・・・)。現に、
スイスNAGRAでは水平配置での研究が進められており、NAGRAの専門家は、SKBの垂直
配置について「複雑すぎる」とやや批判的でした。また、SKB自身も水平配置の研究
も続けていると聞いています。

3.岩盤強度
現実的な候補岩盤は、海岸近くの堆積岩で、強度は5MPa程度と断定しておられます
が、現時点でそこまで決め付けられないと思います。海岸近くの堆積岩(新第三紀
層)のデータを見ても、確かに強度の低いところがありますが、10MPa以上の強度
のところもあります。実際問題として、岩盤強度が5MPa程度しかない場合、坑道の
コンクリート支保を非常に厚く(3m又はそれ以上?)施工しなければならなくな
り、極めて建設費の高い処分場になってしまう可能性があります。何とか、10MPa
以上の強度のところが候補地になることを祈ります。ちなみに、現在地表からの調査
を進めている幌延の場合、強度は概ね10〜30MPaの間でばらついています。

4.ベントナイトの制限温度
この辺は、使用するセメントの種類などとの関係も含め、専門家間で検討中の事項で
す。低アルカリセメントが現実に使えるようになれば、120℃にしてもよいのでは
との意見もあります。

5.アメリシウムの蓄積
再処理までに平均20年かかるとすると、その間に蓄積したアメリシウムが高レベル
廃液に移行し、ガラス固化体の発熱がその分増えます。このため、20年後再処理の
ガラス固化体の発熱を、4年後再処理のガラス固化体の50年冷却時の発熱と同じレ
ベルにするためには、再処理後の冷却期間を(再処理を16年間遅らせたにもかかわ
らず)約50年とる必要があります。実態としては再処理までの期間が長くなってし
まっていますが、処分の観点からは炉から取り出し後4〜5年のうちに再処理をして
しまうことが望ましいといえます。

6.発熱廃棄体による試験、ほか
幌延では、地元との約束との関係で、現物のガラス固化体での試験はできませんが、
発熱模擬体による試験は計画しております。頂戴したご意見も参考にしつつ計画をつ
めて参りたいと思います。

(以上)

サイクル機構 河田東海夫