EEE会議(Re:核燃料サイクル政策論争: 再処理費に関する豊田正敏氏の補足説明)............03.10.06


先週末からちょっと国際会議で京都に出張しておりましたために、いただいたいくつ
かのメールの配信が
遅延し失礼しました。次のメールは、豊田正敏氏が、10月3日付けの同氏メール
「Re:核燃料サイクル政策
論争:MIT報告とフランスCEAの反論について」の補足としてお送りくださったも
のです。ご参考まで。 
--KK

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昨日(10/3)送りましたe-mailの中、ドイツの電力会社が、何故、再処理・プルサー
マルを放棄して直接処分に
切り替えたかについての説明を次のように補足します。

プルサーマルの運転経験がそれまで世界で最も豊富であつたドイツが、何故、2000年
以降の再処理の新規契約
をペナルティを払ってまで、キャンセルし、直接処分に切り替えたかについて、ドイ
ツの電力会社RWE社の燃
料担当部長に質問したところ、ドイツの電力会社が、ケルン大学、エネルギー経済研
究所に委託して試算して
もらった試算結果によれば、MOX燃料の加工費の予想外の高騰もあり、再処理費が、
200マルク/kgHM(邦貨換算
1,500万円/トンHM)以下でなければ、再処理・プルサーマルは経済的に不利であると
の結論になったのが真の
理由であるとの答えであった。

私が、OECD/NEAの試算と同じ解析手法により、前提条件をわが国の現状に合わせて試
算した結果によっても、
再処理費の採算分岐点は、120ドル/kgHM(1500万円/tonHM)となり、一方、六ヶ所再処
理工場の再処理費は、お
そらく、3億5千万/tonHM程度であろうから、経済的には明らかに不利になる。永崎氏
の言っておられる16年の
耐用年数後でも、再処理費は、運転維持費だけで数千万円/tonHMないし1億円/tonHM
となるであろうから、こ
れから1500万円/ tonHMを差し引いた5000万円/ tonHM程度が経済的損失となり、800
トン/年に対し、毎年、
400億円程度の経済的損失が続くことになる。この試算には、県が、要求してくるで
あろう燃料税の増額、プ
ルサーマルを行う原子力発電所での物的防護対策及び保障措置の強化費用の他に、
MOX燃料の輸送途中で国際
テロ組織などによる奪取を避けるため、海上保安庁の巡視船または、海上自衛隊の軍
艦による護衛による負担
増は含まれていない。従って、今後、長期に亘って再処理・プルサーマルを続けるの
であれば、電力会社は、
これらの経済的負担増を国に要請すべきであると考える。これだけ丁寧に説明すれ
ば、永崎氏といえども判っ
てもらえるのではないかと思う。以上

豊田正敏
toyota@pine.zero.ad.jp