EEE会議(Re:核燃料サイクル政策論争: Re:PUREX法について)............................................................031007

標記件名の豊田正敏氏のメール(10/6)に対し、再び佐藤 治氏(原研)から次のよう
なメールをいただきました。 ご参考まで。
-KK

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豊田さんからのメールは重要な問題を含んでいますので、誤解のないように若干コメ
ントを行いたいと思います。

豊田さんから、「『フッ化物揮発法や酸化物溶融塩法は、実用化の見通しが無い』と
いうのでは、高度再処理技術による再処理費の低減は難しいということになり、再処
理・プルサーマルは永久に経済的にならないということになるのでしょうか」とのコ
メントがありました。

例示されたフッ化物揮発法、塩化物法、酸化物熔融塩法等は実用化の見通しがないの
ではなく、まだ実用化の目途が立っていない段階であると理解しています。したがっ
て、「5628」氏が主張するように、六ヶ所再処理工場を放棄して、近い将来に、その
代わりに利用できるような技術ではないというのが、前回のコメントの趣旨です。
再処理技術のコスト低減は、日本の核燃料サイクルの成否にも関わる重要な課題なの
で、早い時期にコスト低減の可能な選択肢を絞り込み、その実現に向けて強力に取り
組む必要があります。その場合に、ピューレックス法にはもはや経済性改善の見込み
がないと考えて予め選択肢から除外すべきではなく、ウラン粗分離の導入、抽出工程
の簡素化等によってかなり大幅に改善できる可能性もあるので、サイクル全体の条件
を勘案しながら改善の可能性を見極める必要があると考えています。

なお、これらに関して、再処理技術の専門家にもう少し技術的に説明してもらいまし
たので、以下に添付します。

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乾式再処理は、処理量が少量でも再処理コストを低減できる可能性があるが、まだ多
くの課題があり、実用化までには敷居が高いと判断しています。
現段階の乾式再処理で得られる燃料は、湿式法に比べ不純物が多い(すなわち核分裂
生成物などを除染できる能力が低い)ため、乾式再処理で得られる燃料が適用できる
のは高速炉だけになっています。従って、高速炉実現が見通されれば乾式再処理は再
処理技術として検討対象になり得ると思います。電解による乾式法では除染係数を上
げることは原理的に困難と考えます。実用化のための課題はいろいろ挙げられます
が、個々の要素技術の成立性確認の他、U/Puの回収率の問題、日本で実用化するには
必須のPu計量管理技術確立の問題などが残されていると思われます。
また、フッ化物揮発法が挙げられていましたが、これは純粋な乾式再処理ではなく、
後段に湿式抽出分離を組み合わせ除染係数の向上が可能で軽水炉に適用可能とされて
います。ポイントはフッ化物揮発法により、使用済燃料に含まれるウランの大部分を
分離する点で、後段のウランプルトニウム(フッ化物を)の溶解・抽出分離のサイズ
をかなり小さくすることができ、これがかなりの再処理コストの低減につながるとさ
れています。(日立殿にご説明願えればと思います。)

使用済燃料の多くを占めるウランを粗取りし、後段のプロセスを小さくする考え方
は、原研で昔提案していますし、既にJNCでも先進湿式法に適用しています。粗取り
の方法には上記のフッ化物揮発法の他、コンパクトなウランの粗取りが可能と考えら
れる、湿式法である晶析法や沈殿法なども挙げられます(晶析法については三菱マテ
リアル殿、沈殿法については東工大殿がお詳しい)。この後段にサイズの小さい抽出
分離工程をつなげます。原研の一部ではウラン粗取りの効果について検討しており、
Pu含有率の高い高速炉燃料に対してはあまり大きくありませんが、軽水炉が存在する
次世代炉の導入期では使用済燃料全体で見た場合のウランの含有率が大きいため、コ
スト低減効果はかなり期待できるのではないかと考えております。無論、後段に抽出
分離工程をつなげず、抽出分離よりもコンパクトなU/Pu回収工程を開発できればさら
にコスト低減は可能と考えております。

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On Mon, 6 Oct 2003 22:26:46 +0900
"Kumao KANEKO" <kkaneko@eeecom.jp> wrote: