EEE会議(北朝鮮危機のシナリオ: 池上雅子氏の意見)....................................................031017


混迷が続く北朝鮮問題の今後の動向については、いろいろな見通しやシナリオが考え
られますが、長年北欧でこの問題をフォローしておられる池上雅子氏(ストックホル
ム大学アジア太平洋研究所所長・教授、EEE会議海外特別会員)から次のような大
変興味あるメールをいただきましたので、ご参考までにご披露いたします。
--KK

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北朝鮮については、いくつかのシナリオを考えてますが、次回6者会談(仮に開催さ
れるとして)で何ら進展がなければ、経済制裁発動からルーマニアのチャウシェスク
体制崩壊のシナリオがありえるのでは、と踏んでます。チャウシェスク体制崩壊は一
般には人民の抵抗によるといわれてますが、実はルーマニアの共産党内部の事実上の
クーデターが原因だったとルーマニアの学生に聞いたことがあります。外部勢力が
クーデターの口火を切ったかもしれません。北朝鮮の場合、仕掛けるのは米国(体制
転換)か中国(体制保持のため金正日を追放)だと思います。

私見では、ハッピーエンドのウクライナ・シナリオ(米国・ロシアなどが安全を保障
し、重油供給やインフラ整備など経済的な見返りも与えた上で、ウクライナにあった
旧ソビエトの戦略核ミサイルを撤去、非核化し、ウクライナは非核国としてNPTに加
盟した)は無理なようなので、最悪のイラク・シナリオ に替わる次善の策として、
「ルーマニア・シナリオ」は米国や中国、そして韓国すら、結局受け入れるのではな
いでしょうか。因みに、米国も含めてどの国も決め手を欠いたままずるずる現状が続
けば、当事国(北朝鮮)も含めて誰も核兵器の存在を公式に確認せぬまま北朝鮮が事
実上の核兵器国になるという「イスラエル・シナリオ」の危険性もあります。短期的
には安易にイスラエル・シナリオに流れる危険性がありますが、これは中東情勢から
も明らかなように、長期的には東アジア、ひいては世界にとって破滅的な結果を招き
ます。 

日本は、北朝鮮脅威も大変ですが、このところの大地震発生、備えは本当に大丈夫な
のかしらと心配です。

池上雅子

Director, Associate Professor

Center for Pacific Asia Studies (CPAS), Stockholm University

Office E-mail: masako.ikegami@orient.su.se, Fax: +46-8-168810