EEE会議(Re:何故大都会の近くに原発を建設しないのか? 放射線被曝問題: 岩田修一氏)..............031019


標記テーマに関連して、岩田修一氏(東京大学大学院工学系研究科システム量子工学
専攻教授、原子力委員会試験研究検討会座長、EEE会議特別会員)から、次のよう
な2通のメールをいただきました。 ご参考まで。
--KK
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低線量に関する研究のひとつとして、「低線量域放射線に特有な生体反応の多面的解
析」 を、原子力クロスオーバー研究として来年度から開始すべく検討を進めていま
す。
これは、昨年度からの検討を踏まえて原子力クロスオーバー研究(平成16年度から
3年、延長が認められればさらに2年)の新規の2テーマのひとつとして検討が進ん
でいるもので、

http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/sikenkenkyu/indexh.htmの18ページに要

http://aec.jst.go.jp/jicst/NC/senmon/sikenkenkyu/indexh.htmの5ページ以降に
研究計画

に内容が提示されています。

事前評価はこれからですが、「低線量の被曝は、生体にどのような影響をもたらすの
か?」という素朴な疑問に科学的な答えを用意しようとするものです。下北での最近
のデータも踏まえての事前の検討が進められています。

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(1)世の中には、原子力に限らず地震予知、環境危機、経済危機、大量破壊兵器な
ど、人々の恐怖心をあおって事を起こそうとする傾向が多くあります。
日本では、「勉強しないと、良い大学にはいれなくて、うちのお父さんみたいに悔し
い思いをするよ。」といった品の悪い動機付けが多数派で、
学問や人間そのものの本当の良質な部分を理解させ、自然な形で子供達に目標を与え
ることが十分には出来ていませんでした。
「原子力を始めないとエネルギー危機で日本が衰亡する。」、「バイオ研究は世界の
主流だから、日本も頑張らなければいけない。」という構文も、
同じ思考パターンだと思います。

現実を直視し理解すること、何が大切かを深く考えること、その結果を論理的に明快
に説明すること、共通の理解に基づいて行動規範を設定し、
行動するというあたりまえのことを、「低線量問題」でもしっかりやってみようとい
うのが、上記のテーマの目的です。

(2)同じことが「高線量域」でも言えて、核燃料に関しては燃焼度にスペックに応
じて3〜6万MWD/tの制限が設けられていて利用可能な核エネル
ギーのほんの一部しか利用できていません。未知領域へのより挑戦的な技術の枠組み
を作ろうというのがもう一つの構想です。

追伸:環境に関しては、グローバルな意味での科学的な意見を調査中です。まとまり
ましたら、ご報告します。



岩田修一(東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻)