EEE会議(原子力界の現状を憂う:山地憲治氏の講演の感想)......................................................031027

先日(10月16日)開催されたEEE会議主催の第5回講演・研究会(講師:山地憲治
東大教授)に出席された田中義具氏(元軍縮代表部大使、ハンガリー大使、EEE会
議特別会員)から、同日の会合の「率直な感想」として次のようなメールをいただき
ました。本来小生宛ての個人的なメールですが、とくにご本人のご了解を得て、皆様
にご披露します。ご参考まで。
--KK

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先日の山地先生のお話は、本当に「目からうろこ」の思いで聞きました。

小生が原子力に携わっていた1970年代は、原子力開発の将来はばら色でした。
しかし、それはどうも放射性廃棄物の処理や安全性まで含めたトータルな原子力エネ
ルギーのコストについて、十分な計算ができていなかったためではなかったのかとの
疑念がでてきました。

原子力エネルギーの開発には、すでに莫大な資源がつぎ込まれてきています。
もしそのために原子力政策の方向転換が難しくなっているというのであれば、例えば
かっての海軍が、航空機の優位を知った時にも、大艦巨砲政策の転換がそれによって
構築されてきた海軍の組織の崩壊につながるのをおそれて機敏な対応がとれず、結局
大和の悲劇へと突き進んだのと同じ過ちを犯すおそれがあるのではないかと心配にな
りました。山地先生たちの研究結果が十分な発表の機会を与えられなくなったという
話(後注1)も懸念材料でした。

最近村田光平元スイス大使(後注2)から手紙をもらいましたが、ITERの誘致につ
いてノーベル賞受賞者の小柴教授らが、実験施設そのものも含めたその恐るべき
放射性廃棄物のコストを指摘して、これに反対しているのを知りました。

第6回研究会は、残念ながらその日先約があって出席できないのですが、まさに
廃棄物まで含めた原子力の安全性コストの徹底的追求こそ、今後の原子力を考えて
いく上での最大の問題であることをあらためて認識している次第です。  
田中義具


(注)
1.山地憲治氏が代表する「原子力未来研究会」の研究論文「どうする日本の原子力
  〜混迷から再生へ〜」の雑誌連載が今夏出版社の都合で突然中止とななったこと
  を指す。 EEE会議メール(03/10/17)参照。

2.スイス在勤中から反原子力的言動で国会でも問題になった。退官後は、名古屋地
  方の東海学園大学教授として、引き続き精力的な反原発活動を行っている模様。
  --KK