EEE会議(余談:マハティール首相の最後の大演説)......................................................031101


世界の各地で政治指導者の世代交代が進んでおり、一時代を画した大物政治家
の引退が相次いでおります。その中でーー日本の長老政治家の話はさておきーー
とくに注目されるのが、マレーシアのマハティール首相の退陣です。 小生も昔クア
ラルンプールで直接会ったことがありますが、噂に違わぬ強力な、カリスマ的な
魅力を持った政治家だと直感しました。 

当時は日本経済の全盛期で、彼の「ルック・イースト」(日本を見習え)政策は眩し
いほど輝いていました。 その頃彼が提唱した「東アジア経済グループ」(East Asia
Economic Group=EAEG)構想は、かつての「大東亜共栄圏」にも似て、日本を盟主と
して東アジアの黄色人種が大同団結して西欧に対抗しようとする色彩があまりにも
濃厚だったがために、米英豪など白人キリスト教国の猛反対に遭い、ついに不発に
終わりましたが、その心意気に小生などはいたく感激したものです。(ちなみに、小
生は、20世紀初頭「アジアは1つなり」と喝破し、大アジア主義を唱えた岡倉天心
を昔から敬愛しています。)

ところで、今回、マハティール首相引退の花道となったイスラム諸国会議機構(OI
C)首脳会議で行った開会演説(10/16)は、まさに彼の一生一代の名演説で、
歴史に残るものだと思いますが、欧米のマスコミは「ユダヤ教(イスラエル)を誹謗
し、イスラム教による世界支配を唱導する危険思想」として激しく非難しました。
その影響のせいか、日本では新聞もテレビもこの演説の全容をありのままに報道し
なかったようです。なんとかしてこの演説の原文を読みたいと思っていましたとこ
ろ、つい最近になって同演説の全文が載っているサイトを見つけましたので、皆様
にも是非熟読玩味していただきたく、そのサイトをご紹介する次第です。 
http://www.oicsummit2003.org.my/speech_03.php

とくに問題とされた発言は、演説の中程で「ヨーロッパ人は、1200万人のユダヤ
人のうち600万人を殺した。しかし、今日、ユダヤ人は代理人を使って世界を支配
している。彼らは他の国を(イスラムと)死ぬまで戦わせる」と述べているところ
で、続いて、演説では、イスラエルと対抗するためにイスラム教徒は団結すべしと
強調しています。

この演説に対して、マレーシアを管轄する在シンガポールのイスラエル大使館は
「ヒトラー以来、こんな発言は記憶にない」と厳しく抗議するショハム大使の声明を
出しました。 「代理人」(proxy)は米国を指すと見られますが、米国務省のエア
リー副報道官も「扇動的なコメント。軽蔑でこの言葉を受け止めた」と述べ、マレー
シア政府に抗議したことを明らかにしました。このほか、欧州連合(EU)議長国イ
タリアのベルルスコーニ首相やオーストラリアのハワード首相も批判の声を上げ、
ドイツ政府は駐独のマレーシア大使を呼んで抗議を伝えた模様です。

一方、OICに参加中のエジプトのマーヘル外相は「(マハティール首相発言の)批
判者は文脈全体を読んでいない」と指摘。イエメンのアブバケル外相も「100%
支持する」と語るなど、「西欧対イスラム」の亀裂が浮き彫りになった形です。その
背後に、米英主導の対イラク戦争に対するイスラム教諸国の複雑な思いがある
ことは申すまでもありません。

皆様はこの演説をどうお読みになったでしょうか?
--KK