EEE会議(Re:プルトニウムや高濃縮ウランを国際管理下に:IAEA事務局長の重要提案)..............03.11.06


本件IAEA事務局長提案については、これが今後どのような形で具体化されて行くの
か、我が国としても核燃料サイクル政策との関連で慎重に見守って行く必要がありま
すが、今回IAEAがこれだけ踏み込んだ提案を行なったということは大いに注目すべき
ことだと思います。

この提案を聞いてすぐ連想されるのは、アイゼンハワー大統領のAtoms for Peace提
案(1953年)の数年前、すなわちマンハッタン計画の直後に、米国が最初に考えたのが
「国際原子力開発公社」構想で、そこでは核物質はすべて一括して国際管理下に置か
れ、各国による所有、管理は認めないという、いわゆる「国際核燃料銀行」構想で
あったということです。この構想がソ連などの反対で実現せず、妥協の結果、現在の
ような中途半端な保障措置(核査察)機能を持ったIAEAが誕生したわですが、今日こ
うした在来のNPT/IAEAシステムでは核拡散は到底防止できないことが明白となった状
況において、遅ればせながらIAEAが核物質の国際管理体制の抜本的な建て直しを本気
になって考え始めた証拠だろうと思います。
 
さらに、ここでもう一つ連想されるのは、1970年代後半から、日米間の東海再処
理交渉や国際核燃料サイクル評価(INFCE)と並行して、IAEAを中心に進められた国際
プルトニウム貯蔵(IPS)構想や国際使用済み燃料(ISFM)構想のことです。これらの構
想は、その後各国の利害対立で結局お蔵入りになってしまいましたが、今回のエルバ
ラダイ事務局長の提案は、こうした過去の努力を受け継いで新しい時代の要請に応え
ようとするものであり、まさに歴史は繰り返すの感を深くします。

また、こうした核物質や再処理・濃縮の国際管理問題は、アジアという地域レベルで
も検討する価値があり、それがまさに、我々が長年提唱してきた「アジアトム」構
想、とくにその枠組みの中での「地域核燃料センター」 (regional nuclear fuel
centers)構想でもあるわけです。

当時IPS、ISFM構想や「アジアトム」構想の具体化作業に関わった人々は、我が国にも
(当EEE会議の会員の中にも)まだかなりおられるので、この際原子力外交のOBとし
て是非これらの問題について積極的にご発言いただきたい、そして、日本発の新しい
構想を世界に向かってどしどし発信して行きたいと願っております。

ちなみに、IAEA設立前の核・原子力国際管理構想とその今日的意義等については、小
生の「他力本願から自力本願へ」と題する拙い文章(9月末、日本原子力学会主催で
開かれた「アイゼンハワーAtoms for Peace 50周年記念国際会議」における基調
講演をべースにしたもの)が、EEE会議のホームページ(http://www.eeecom.jp/)の
「最新情報」欄に掲載されておりますので、関心のある方はご一読くだされば幸いで
す。
--KK