EEE会議(北朝鮮と再処理問題を考える)..........................................................03.11.09


次のような貴重なメールを特別会員の柴山哲男氏からいただきました。大変重要かつ
刺激的な問題提起であると思いますので、皆様の活発な反応を期待します。小生自身
の愚見も後日まとめてご披露したいと考えています。
--KK

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 一時活発であった原子力関連の議論がこのところ少し少なくなって来たように思い
ます。当面する問題がなくなったのか、一時的な停滞なのか分かりませんが、少し異
なる観点から問題を提起して見たいと思います。EEE会議は外交の専門家が多いの
で、御意見を頂ければ幸いです。課題は「北朝鮮と再処理」です。

1 現在の北朝鮮を巡る核問題の解決は難航していますが、何れそれほど遅くない時
期に解決されることになると考えます。何時までも放置出来る問題ではなく、北朝鮮
側にも急ぐ理由はあると考えられるためです。日本には拉致問題もあり、家族会に怒
られるかも知れませんが今回は別に考えることにします。

2 この場合、保有(?)核の廃棄、原子力施設、特に今回の発端となった再処理施
設のIAEAなどによる国際管理までは関係国(日、米、ロ、中、韓)の合意により
進められると考えられますが、次の段階として、米国は北朝鮮の再処理施設の廃棄を
要求する可能性が高いと思います。

3  これに対して日、ロ、中は賛成に回ると考えられますが、韓国は微妙な立場に
なると考えられます。表向きは反対しにくい立場ですが、北朝鮮を含む6ヶ国の中で
再処理施設を保有しないのは韓国だけであること、そのためには北朝鮮といえども朝
鮮半島に再処理施設を残すことは(将来の統一までを考えれば)考慮し得ること等に
より、運転停止の監視を強化することで形だけでも残したいという気持ちもあるので
はないかと思います。(勿論今の施設は旧式で将来の実用にはならないと思います
が、一度再処理保有国になれば将来の新設も可能との判断によります。)

4 その結果、韓国として日本の再処理、特に六ヶ所について批判を強めることも考
えられます。これに対して中国は日本の核武装に対する懸念と極東における覇権の立
場より賛同する可能性があります。ロシアは中国に対する牽制とシベリア開発、パイ
プライン敷設などの関連もあり微妙な立場。米国はブッシュ政権継続の場合は理解を
示すことも考えられるが、来年の大統領選挙で民主党政権になった場合には不確定
要素が残る。

5 これらは時期的には不明確であるが、六ヶ所再処理施設のホット試験開始乃至運
転開始前になる可能性が高い。この場合、プルサーマル、大間、もんじゅまたは将来
の高速炉などプルトニウム利用の目途が立っていれば説明もつくが、利用の目途が
立っていない場合、対応が難しい場面も予想される。最終的には何らかの形での操業
は認められると考えられるが、その段階でプルトニウムの国際管理などの方式の検討
なども含めて操業の大幅遅延の可能性もあり得ると考えられる。先日EEE会議で紹
介のあったIAEAエルバラダイ事務局長の提案も解決策の一つであろう。

6 核燃料サイクルについては、国内でも経済性を含めて種々の議論があるが、今後
国際的な対応も含めて議論が必要になると考えられる。単なる懸念だけに終われば良
いと思いますが。

柴山 哲男
tetuo shibayama
shibayama@mvh.biglobe.ne.jp