EEE会議(米国の国防予算可決と小型核兵器問題).............................................................03.11.26


新聞・テレビ等ですでに報道されておりますように、ブッシュ大統領は11月24
日、総額4013億ドル(約43兆7000億円)に上る2004会計年度の国防権
限法(国防予算)に署名しました。この法律の成立により、ブッシュ米政権がかねて
からつよく主張していた小型核兵器(mini nukes)の研究が10年ぶりに解禁され、
いよいよ同研究計画が公式に実施されることになったわけです。

米上下両院はこの5月22日、「スプラット・ファース条項」(5キロトン以下の小
型核の研究・開発禁止条項、1994会計年度の国防権限法で設定)の廃止を盛り込
んだ国防権限法を可決していました。今回のブッシュ大統領の署名で、対テロ戦争を
遂行する上で重要兵器とされる小型核研究に一層拍車がかかるものと見られます。
もっとも、議会が承認したのは、研究(research)であって、開発(development)や配
備(deployment)には議会の承認が改めて必要とされております(下院は「開発」は禁
止したままで「研究」を解禁)。

国防総省によれば、研究される小型核兵器は、(1)地上の目標を攻撃する破壊力の
低い(low yield)核弾頭t、(2)地中深く貫通して地下施設を破壊する核弾頭(いわ
ゆる「バンカーバスター」) の2つで、いずれも5キロトン以下(広島、長崎型原
爆の3分の1以下)で、同省が2002年1月議会に提出した「核戦略見直し
(NPR)」報告で研究・開発が提案されていたものです。

国防権限法には米兵の給与を平均4%引き上げることも盛り込まれており、ブッシュ
大統領は署名にあたって「この戦時下にわが軍はより大きな犠牲に直面している。軍
務に就いている男女が長い駐留を余儀なくされている」として、イラク戦争に派遣さ
れた米軍将兵の現況を改善する構えも示していますが、これはイラク戦争に対する国
内の批判が拡大し大統領選挙戦に不利に作用しないようにするための措置の1つと見
られます。

いずれにせよ、今国防権限法は、冷戦時代のレーガン政権以来では、2003会計年
度のそれを上回る規模で、文字通り「戦時下の国防予算」となったといえるでしょ
う。日米同盟の下、日本としても今後の米国の動向を引き続きしっかり把握しておく
必要があります。
--KK