EEE会議(Re:パキスタンと北朝鮮核問題).................................................................................031209


吉田康彦氏から再々反論が送られてきました。これに対する小生のコメントと
共に、ご参考まで。
--KK
*********************************

金子さんのコメントに対し、以下の通り再反論します。

(1)「確たる証拠がないからといって、これを否定することはできない」からと
いって、単なる疑惑で、安保理決議に持ち込み、制裁をしてもいいのですか。論より
証拠、イラクの「大量破壊兵器開発疑惑」に対する国連査察が進行する中で、勝手に
期限を設けて開戦に踏み切ったブッシュ政権の「イラク戦争」には大義があったので
すか。北朝鮮は、確かに疑惑だらけです。しかしブッシュ政権は「外交的解決」を目
指して中国を仲介役にして粘り強く交渉しているではありませんか。

(2)拉致と核を混同しないでいただきたい。小生は「すべてを北朝鮮の犯行とは断
定できない」とEEE会議でも確かに発言しました。しかし辛光洙事件(原棘晃さん
拉致実行犯としてソウルで逮捕され、死刑判決、のちに恩赦で「北」に帰還)は既定
の事実だし、最初から否定していません。小生が最初から否定的だったのは「横田め
ぐみ失踪」だけで、13才の少女を拉致して何になるか、という素朴な疑問から否定
していました。この件については、昨年11月、テレビ朝日のサンデープロジェクト
に出演し、横田夫妻に謝罪しました。要するに、拉致の全容解明を交渉の「入口」に
おかず、国交正常化交渉の過程で解明を要求し、妥結の段階で解決していればよいと
する「出口」論を唱えていたのです。いまも、そう主張しています。北朝鮮に対する
怒りと憎しみで強気に出ても、相手は独裁国家、折れてくる保証はありません。外務
省北東アジア課も小生の立場と同じなのですが、世論が怖くて自由にものがいえない
状況なのです。現在の空気は異常ではありませんか。

(3)本論に戻ります。北朝鮮がウラン濃縮も始めたというなら、米国はもっと問題
にする筈です。あくまでも疑惑です。「北」は意図的に疑惑を作り出しているので
す。ペロー論文は、パキスタンが「北」に疑惑の口実を与えたというだけの理由で、
NPT体制破綻に加担したと「断定」し、”the criminal conduct of Pakistan
should be sanctioned by the Board of Governors, the Security
 Council........”などとナイーブな主張をしているから異議を唱えたのです。「制
裁」はあくまでも「確たる証拠」にもとづいて行われるべきです。そうではありませ
んか。

(4)「日本の安全にとって現在一番問題なのは北朝鮮の核開発であることは明ら
か」・・・・残念ながら、両国間には国交がないばかりか、相互不信と憎悪の関係に
あるからです。脅威は信頼に反比例します。だから国交正常化し、信頼を築けと小生
は主張しているのですが、残念ながら少数派です。独裁体制にアタマから不信感を抱
き、「処罰と制裁の対象」と見なしている限り、関係改善は望めません。ところが、
「日本の安全にとって一番問題」であるはずの核開発に、日本の世論がどれだけ不安
を抱き、憂慮しているでしょうか。世論の関心は拉致問題ばかり。テレビが取り上げ
るのも拉致問題ばかり。だからこそ米国が「核開発こそ最大の問題だぞ」と日本に警
告を鳴らしたのがケリー訪朝だったわけです。金子さんの主張は、もっと日本の国民
世論に向けて発信していただきたい。以上。

*****************************

金子のコメント:

逃げるわけではありませんが、明日から東北地方へ3泊4日の旅に出るため時間
的余裕がないので、簡単なコメントに止めます。 重要な論点ですから、来週以降
続きをやりましょう。

1.パキスタンを疑惑だけで制裁して潰してしまえなどと言っているわけではなく、
パキスタンと北朝鮮の関係にもっと世間の注目を集め、両者の動きを牽制するこ
とは大事だと考えます。Pellaud氏もそういう趣旨で言っているはずです。
ただ、ブッシュ政権は目下イラクやイランで手一杯で、当面パキスタンの協力も
要るから、北朝鮮との関係だけでパキスタン非難はしにくい状況にあるのは確か
です。

2.ご指摘のように、「核疑惑」というのは単なる「疑惑」であるかもしれず、確た

証拠を掴むのは容易ではありません。相手も、そう簡単に尻尾をつかまれるよう
なことはしないからです。しかし、疑惑が確認されるまで待っていてはtoo lateと
いう場合もあり、早目に対抗措置や牽制措置をとる必要があります。どういう措置
が適当かはケースバイケースですが、海上臨検などはその1つで、日本もその
程度は出来るように体制を整えておくべきでしょう。

3.拉致問題で国内が騒ぎ過ぎだというのは同感で、もっと北朝鮮問題を全体的
にバランスをとって考えるようにしないといけません。マスコミが一番悪いけれど
も、我々ももっと「啓蒙」活動をすべきで、小生も自分の出来る範囲で精一杯
やっているつもりです。今後とも大いにやりましょう。

PS:
小生の留守中も、どなたか吉田氏と論争を続けてくださるよう期待しております。

--KK