050105 Re:我が国の高速増殖炉開発に関する提言案[第4次案]に対するコメント) 古川和男氏のコメント
 
標記のテーマに関する天野牧男氏と豊田正敏氏の論争に関連して、古川和男氏から
次のようなコメントが寄せられました。ご参考まで。
--KK
 
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1月3日11時の コメント: 天野牧男氏←豊田正敏氏 に対し、補足的コメン
トをさせて頂きます。
 本当は、天野氏の反論(?)を待って書きたいと思いましたが、まだ配布されてき
ませんし、10日の討議期限(と理解していますが?)が迫りましたので、一言
付言する次第です。
 豊田氏の立論に殆ど異論は御座いません。実に見事に問題の本質を整理下さっ
ておられると考えます。皆様、下記の添付を是非ご再読願いたいですが、2点簡潔に
持論を補足しますと: (これらも 殆ど同じご意見を 豊田氏もしばしばご指摘に
なっていたと思いますが)

1)project開発の真髄・成功の鍵は、責任主体の明確化(project-leader 任
命)に有ります。それが何はともあれ、要請さるべきです。
 それには、今の程度の問題整理と戦略内容では、始まりません。表現を換えま
すと「明確なと皆が思えるような経済性成立の見通し」を持った計画の確立が必要で
す。
 (「経済性」が重要かどうかの論議とは、そう言うことです。必要なのは自明
です。論議の余地はありません。ーーー他のあらゆる争点をも解決する見通しを
持っているというのが「経済的である」と云うことです。産業として成立つ、と言うこ
とです。違いますか?)

2)それは、自明的に「世界展開」を許すものです。それの期待が無ければ、始め
てはならない、と言う事だと思います。経済(産業)、まして「環境」は世界に
1つしかないのです(独裁すると言っているのではありません)。 日本のみを救えて
も、それは絵に書いた餅にすぎません。
 我々が目指さなければならないのは、「世界に通用する核エネルギー産業」で
す。  もう、国策とか政策とかの時代ではないのです。国家/政府/国際機関が
支援するのは必要ですが、主体は 企業家に 「自信と野心をもってその産業を
構築してやるぞ。」と思わせる だけの技術内容をもった「技術計画」であるか
どうかです。

 そう言うものを、見つけたかどうかで、事を構えるべきです。そう言うものは
有るのか無いのか、論議を「原子力委員会」に斡旋すべし、と要求するのが E
EE会議の務めではないですか。

 以上ですが、このような事態(時点)は核エネルギー平和利用史の上で何度も繰り返
されてきました。その一つが1987年末のフランスでした。
 その時フランスでは高速増殖炉Superphenixが完成しましたが、仏電力庁(EdF)は
「二号機を作れば国家は破産。古川案を検討したい。」と、EdFの Bergougnoux総裁よ
り松前重義東海大総長へ親書が送られ、翌年EdF・Clamart研究所(パリ郊外
Fontenay-aux-Roses)で、「Th-MSR開発計画報告書」を共同作成しましたが、仏原子
力庁(CEA) が蔭で必死に高速炉存続のための巻返しを計ったために、実を結びません
でした。 
 私も親しく語り合った事のあるProject-leader のDr.Vendriesに、日本でも「日本
賞」をやると騒いでいる頃なのですから、無理も無かったのでしょう。しかし1998年に
はSuperphenixの廃棄決定。我々は17年間、時代に先行しすぎたわけですが、フランス
 は核産業 で抜群の地位確立の絶好のチャンスを逃がしたのだと思います。彼等産業
界は既に、この先仕事が無い、とハッキリ自覚し騒いでいたのですから。
              (特別会員:古川 和男)