050106 Re: 「我が国の高速増殖炉開発に関する提言案」[第4次案]に対するコメント) 天野牧男氏・小川博巳氏←木村正彦氏
 
標記の提言案に関連する天野牧男、小川博巳氏らのご意見(いずれも01/05))に
対し、再び木村正彦氏(中部電力株式会社)から次のようなコメントをいただ
きました。ご参考まで。--KK
 
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 おはようございます。天野様・小川様の貴重なご意見に
対し、私なりの愚論を申しあげます。

 その前に、私は昨年11月に名古屋で行われた金子熊夫様の
ご講演の終了後、金子様からEEE会議の入会を直接勧誘を
受け、1日後入会したため、前後の見境なく第4次案まで討議が
進んでいるものに対して冷や水をかけるような所業は、後から
参加したものとして慎む行動であったと深く反省するもので
あります。

 ただ、私はエネルギー問題(表裏一体の環境問題)には、
非常に興味があります。後述に私のスタンスを著しました
拙文の拠り所を示します。古い文献で恐縮ですが、今も
その考えは、変わっていません。まだ、パソコンが普及
していない時代のものですので、紙ベースでしか残って
おりませんが。


 まず、このご提言案が誰に(どの階層に)提出されるか
が非常に大切な問題であると思います。釈迦に説法でも
いけませんし、猫に小判でも、折角多くの時間・労力を
費やした会員各位のご努力に報いる成果になりません。

 後から参加した特別会員として、私が先輩会員の方々に
申しあげたいことは、原子力エネルギーがあまりにも国民の
皆さんに分かりにくいブラックボックスになっているので
はないかということです。何も原子炉内部を全部公開して
下さいということではなく、原子力エネルギー技術には、
本当にたくさんの高度な技術が使われていることを、原子力
エネルギーに携わる者が、何も知らない国民の皆さんに示す
ことがまずすることではないかということです。
 技術というものは、全くの初心者にもわかりやすく説明
できて初めて本当に説明者も理解し、被説明者も納得できる
ものであると私は考えます。
 その高度かつ先進技術の集積のため、原子力エネルギーは
非常に価格が高く、完璧な安全性も要求されているという証を
一般国民に披瀝しない限り、何となく原発を反対する方々にも
合点がいかないものになってしまうと思います。

 ですから、今回のご提言案とは別にして、『原子力エネルギー
技術のユニバーサルデザイン化(ユニバーサルサービス化)』を
EEE会議の議題として提案致します。

 ユニバーサルデザインについて、若干触れたいと思います。
バリアフリーデザインと同様に使われる場合もありますが、
1985年にアメリカのRon Mace氏によって初めて定義されて
使われたものです。ユニバーサルデザインの七つの原則を示し
ますと、より理解しやすいと思いますので、以下に提示します。

【平等】
 @公平性 使う人によって不利にならないこと(例:自動ドア)
 A自由度 フレキシビリティ(自由度)があること(例:左右に
       使えるはさみ、上下裏表どちらも差し込めるキー)
 B単純性 使い方が簡単で直ぐにわかること(例:絵による説明、
       動く歩道)
 Cわかりやすさ 必要な情報がすぐに理解できること/不必要な
          情報は省略しシンプルで、直感で分かるデザ
          インであること(例:各種案内サイン、遠く
          からわかる駅・バス停)
【使いやすさ】
 D安全性 デザインが原因の事故をなくすこと/うっかりミスや
       危険につながらないデザインであること(例:誤り
       を簡単に修正できるコンピュータソフト)
 E省力性 無理な姿勢を取ることなく、余計な力を使わずに少ない
       力でも楽に使用できること(例:触るだけで点灯する
       照明器具)
【空間確保】
 Fスペースの確保 アクセスしやすいスペースの広さと十分なサイズ
           の大きさを確保すること(例:幅広な駅の改札
           口、ゆったりとしたトイレ)

 若干、原子力技術とは異なる方向性を示すものですが、これからの
高齢化社会ではこの方向に各種デザインが進むものと思います。高齢
者や身障者に使いやすいデザインは、健常者にとっても利用しやすい
もであると考えます。

 一度、高速増殖炉をユニバーサルデザインといった観点で見つめ直す
と変わった切り口が出来ると思います。ここに謹んでご提案申しあげ
ます。また、皆様のご高名なご意見を頂戴できれば幸いです。


 勝手に愚論を展開してしまいました。申し訳ございません。高速
増殖炉うんぬんでは天野様・小川様の各論議論でいいかもしれません。
しかし、もっとグローバルな視野でないと、厳しい各方面の反対意見
に耐えかねるものであると思います。なぜ高速増殖炉か、なぜ東アジ
アかという議論が絶対出てきます。昔の日本なら(欧米の尻を追って
いく)、ダメが欧米がつぶしてくれていますが、今の日本の状況は、
高村光太郎の道程の世界ですから、総論OK、各論にも十分対応できる
ものでなければ、世論は受け付けてくれません。このご時世当然、
経済性の裏付けも絶対必要です。また、両氏のご意見をお願い
申しあげます。

拙論:
 木村正彦;エネルギー分野の新技術 電力危機を回避するためにも
   「技術士」平成8年(1996年)6月臨時増刊号 pp.104〜106
環境問題は、
 木村正彦:地球環境問題概説 −環境に国境はない−
   「技術士」平成9年(1997年)8月号 pp.17〜19

 ご必要でしたら、金子熊夫様経由でご一報下されば別刷をご郵送さ
せていただきます。


(過信)
 あらゆる技術的課題に対処できるように日夜研鑽に励んでおります
(自画自賛(笑))。