050106 Re:「わが国の高速増殖炉開発に関する提言案」(第4次案)について) 天野牧男氏⇔豊田正敏氏のコメント

 

標記のメール(01/06 天野牧男氏)に対し、再び豊田正敏氏から次のような反論が寄せられました。ご参考まで。

--KK

 

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天野牧男様

 

ご回答有り難うございます。ただ、私の言っていることと擦れ違いのコメントが散見されますので、以下の反論をします。

 

1. 科学技術の振興

天野氏の「私がこの小論で意図したものは、今この国の最も必要なことは、科学技術の振興であります」という考えには私も賛成であり、バイオ、ナノ技術及びIT技術などにもっと国の資金をつぎ込んで国際的に優位に立つべきであると考えている。これらに比べて、既に40年も技術開発を進め、今なお、実用化のメドすらつかないナトリウム冷却型高速増殖炉の開発にさらに多額の資金を投入することに国民の理解が得られるか疑問である。先ず、確実に実用化できることが確認出来るプラント設計概念と納得できる説明を示すことが先決である。

 

2 21世紀のエネルギー資源

 ウラン資源は21世紀中は十分確保され、価格も250ドル/kgUを超えることはないであろうことは、EEE会議で小野氏が説明されているとおりである。従って、その緊急性はないが、資源の乏しいわが国としては、燃料の利用効率のよい原子炉の実用化が望ましく、従来の経緯から、高速増殖炉の技術開発を進めるべきであると考えている。然し、前のコメントでも述べているように、「現在のような技術開発の進め方では実用化の見通しを得ることは難しく、JNCの組織、陣容の見直しを含む抜本的改革を行った上で、期限を切って、全力でFBRの実用化のための技術開発に取り組むべきである。」そして実用化の見通しが得られなければ他の原子炉型式に切り替えるべきであり、実用化の見通しがないまま、何時までも高速増殖炉に固執すべきではないと考える。

 

3 A‐BWRとのコスト比較
 私は、「ナトリウム冷却型高速増殖炉の大幅なコスト低減の見通しは全く無い」とは言っていない。 「系統単純化とプラントのコンパクト化についてさらなるブレイクスルーによる建設費低減を図る必要がある」と言っているのであって、JNCの基本設計のままでは、軽水炉並みの建設費になる見込みはない。従って、さらなるブレイクスルーが必要であるが、今のところ、そのアイディアがないことを問題にしているのである。問題の本質を摩り替えないでほしい。

JNCが「現在の軽水炉に充分対抗できると報告」しているから信用しろと言っておられるが、プラントを設計し、製作するのは、原子炉メーカーであり、原子炉メーカーがプラントの詳細設計をし、正式見積もりをした上でなければ、信用できないことは、ATRの例を見るまでもなく明らかではないですか。

ここで申し上げたいのは、原子炉メーカーは一体どの程度この技術開発に協力しておられるのでしょうか。『もんじゅ』のトラブルの原因となった計測配管は石川島播磨が設計、製作したものではなかったのですか。貴方はその当時、部長か常務であったと考えられますが、責任を全く感じておられないのでしょうか。JNCの言うとおりに設計し、製作したので自分には責任がないといわれるのでしょうか。

また、EFNのComby 氏の言っていることのみを取り上げておられるが、何故当事者であったEDFのカール氏やRWEのアイツ氏の話を取り上げようとされないのかお伺いしたい。

 

4. スーパーフェニックスの技術的問題
 「あの小論を書いたことで、どうしてスーパーフェニックスの技術的問題の内容について説明を求められなければならないか、理解に苦しみます。」と言っておられるが、あれだけ確信に満ちた表現で実用化の見通しがあると言われるからには、先行炉の運転実績や技術的問題点について十分な検討をされているのは当然であると考える。JNCの言っておられることでは納得できないので、原子炉メーカーの優秀な技術者であった貴方の見解を聞いているのである。

 

5 開発は重点的に
 「ナトリウム冷却型高速増殖炉に開発対象を絞ることを期待する 」と言っておられることについては、「最も実用化の可能性の高い」とは考えておりませんが、「二兎を追うものは一兎をも得ず」の喩えのとおり、「当面、ナトリウム冷却型高速増殖炉に絞って期限を切って、全力で実用化のための技術開発に取り組むべきである」と考えているが、「期限を切る」ことと「JNCの組織、陣容を抜本的に見直す」ことが是非必要と考える。また、原子炉メーカーが、積極的に協力すべきであり、ある程度国による技術開発が進めば、自ら、ターンキー(一括受注)方式で赤字覚悟で受注するぐらいの意気込みと覚悟がなければこのプロジェクトは成功しないてしないであろう。   以上 
 
----- Original Message -----
From: Kumao KANEKO
To: Undisclosed-Recipient:;
Sent: Thursday, January 06, 2005 10:09 AM
Subject: EEE会議(Re: 「わが国の高速増殖炉開発に関する提言案」(第4次案)について)  天野牧男氏⇔豊田正敏

皆様
 
昨年末(04/12/25)、天野牧男氏の「日本が存続していくために―高速増殖炉をわが国
の基幹技術にする意味」と題する論文(「月刊エネルギー」の1月号掲載)をご披露し
ましたところ、幾人かの方からコメントがあり、とくに豊田正敏氏からは「技術開発
の現状認識にあまりにも誤りが多いと感じた」として批判的コメント(05/01/03 配信)
をいただきました。これに対し、天野氏から再反論が寄せられましたので、ご披露い
たします。ご参考まで。豊田氏の「EEE会議による政策提言の取り纏め方は非民主
的である」とのご批判に対しては別途後日お答えする予定です。
 
なお、最近EEE会議のメールを無断で第3者(非会員)に転送するケースがしばしば
あるようで、このため全くEEE会議とは無関係の人々から小生や特定のEEE会議
会員に直接メールをいただくことがありますが、これは明らかにルール違反で、甚だ
迷惑でありますので、今後EEE会議関係メールの無断転送は固くお断りします。
また、そのような事例を察知された場合は随時ご一報下されば幸いです。
--KK