050107 ◆IAEA:核燃5年間凍結を提案へ 国際管理確立目指す


◆IAEA:核燃5年間凍結を提案へ 国際管理確立目指す
   (毎日新聞   2005/01/07)
 
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20050107k0000e030008000c.html

 フランス公共ラジオによると、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は6日までに、核拡散防止体制立て直しを目的にした核燃料の国際管理システム確立に向け「核燃料サイクル確立を目指す国に対し、5年間の事業凍結を提案したい」と述べた。外国通信社などのインタビューに答えた。
 事務局長は、5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の席上、この問題も含め核拡散防止体制の再構築について提起したいと言明した。
 事業凍結は各国の原子力利用の権利に関わるため実現は微妙だが、この提案が今後、青森県六ケ所村に建設された使用済み核燃料再処理工場の運用に影響を与える可能性もある。
 事務局長はまた、現在、世界で30−40の国がプルトニウムを抽出できる使用済み核燃料再処理や、核燃料用のウラン濃縮の技術を有しており「数カ月で核兵器を開発できる」と指摘。北朝鮮やイランがNPT上の原子力平和利用の権利を盾に開発を進めている現状に懸念を表明、使用済み核燃料などの国際的管理システムをつくることの重要性を強調した。
 IAEAは昨年8月、核燃料国際管理のための専門家委員会を設置。今月10日から第3回会合を行い、3月には答申書をまとめる予定。事務局長の提案が何らかの形で反映されるとみられる。(ベオグラード共同)
----------------------------------------------
 
◆新規施設、5年間凍結提案へ IAEA事務局長
  (朝日新聞 2005/01/07) 

 国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は5日、朝日新聞記者と単独会見し、核拡散を招きかねないウラン濃縮やプルトニウム再処理施設の新たな建設を5年間凍結するよう、5月にニューヨークで開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議で提案する考えを明らかにした。そのうえで将来は、既存の施設を含めた多国間管理体制の導入が検討課題だと語った。多国間管理が実現すれば、青森県六ケ所村で建設中のプルトニウム再処理工場の運用にも影響が出そうだ。

 事務局長は、パキスタンのカーン博士を中心とする「核の闇市場」を通じ、北朝鮮やイラン、リビアに核技術が広がった現状を踏まえ、核不拡散体制の「構造的な調整」が求められていると主張。「NPTが(IAEAへの申告を前提に)各国に認めてきた核燃料サイクル技術保有の権利に、いくつかの制限をかけることが必要だ」として、核兵器の原料となる高濃縮ウランやプルトニウムを生産する施設の新規建設を凍結すべきだと述べた。

 凍結期間は、新たな濃縮・再処理の多国間管理体制づくりができるまでとし、「これについて5月の再検討会議で合意することは難しく、少なくとも次の再検討会議が開かれる2010年までの5年間の凍結」を提案。「すでに10カ国以上が濃縮・再処理施設を持っており、平和利用のための供給能力は十分にある」と述べ、途上国の理解を得るため、凍結期間中はIAEAが研究炉や原発用の核物質の供給を保障する体制をつくる考えを示した。

 一方、凍結実施後の核物質規制強化では「アイデアのひとつは濃縮・再処理施設の多国間管理だ」と述べ、既存の施設も含めた新たな管理体制の必要性を強調した。

 今回の提案は、約20年にわたり秘密裏に大規模な核燃料サイクル施設建設を進めてきたイランに対し、核計画の凍結を促す狙いがある。また事務局長は03年10月、高濃縮ウランとプルトニウムについて、新たな国際的な規制を実施すべきだとする構想を提唱しており、この考えに沿った提案でもある。

 日本では、六ケ所村で建設中のプルトニウム再処理工場が、先月21日に核物質を使った試験を始めたばかり。六ケ所村の施設への影響について、事務局長は「個々の施設に触れるつもりはない」と明言を避けたが、凍結の対象として「新たに濃縮・再処理に乗り出そうとしている国々を考えている」と表明。「日本にはすでに再処理能力がある」と述べた。

 建設凍結には、「核の平和利用の権利」を主張する途上国からの反発が予想される。事務局長は「核保有国が核軍縮の努力を示すことが重要だ」と述べ、00年のNPT再検討会議で約束しながら、ほとんど進んでいない核軍縮に保有国が積極的に乗り出すよう強く求めた。 (01/07 06:14)

 
(提供:熱田利明氏)