050108 Re: 「わが国の高速増殖炉開発に関する提言案」(第4次案)について) 天野⇔豊田論争: 天野牧男氏コメント 

標記のメール(01/06 豊田正敏氏)に対し再び天野牧男氏から次のようなコメントが届きました。これは豊田氏宛てのもので、一部個人ベースのお話も含まれているようですが、重要なポイントでもあり、他の会員各位にもご関心があろうかと思い、敢えてそのまま配信させていただきます。ご参考まで。

--KK

 

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豊田正敏様

 

早速にご意見頂戴いたしました。先の私の回答に対してすれ違いのコメントが散見されるとのことですが、幸い幾つかの点でご理解を頂いたようにも思われます。何回も繰り返してもいたし方ないように思いますが、下記にご指摘のあった2,3の点について、考えているところを申し上げます。

 

1 21世紀のエネルギー資源

 

例えば21世紀のエネルギー資源のところで、現在のような技術開発の進め方では実用化の見通しをうることは難しくとありますが、この点については、同じように考えております。これからの開発部隊は新しく設立される日本原子力機構が担当することになりますが、この組織は文部科学省と経済産業省の共管になり、特にこの高速増殖炉の開発は、文部科学省が担当するであろうとのことであります。これは以前確かご指摘になられていたかと思いますが、高速増殖炉の本体の開発もさることながら、使用済み燃料の再処理や、プルトニウムの保管に関する国際的な了解の取得が必要であります。また将来日本製のプラントの輸出などを可能にしたいと願っておりますが、このような場合、当然ながら燃料の問題などがついて廻ります。これらを一つ一つ解決しなければ、現実のものになりません。これには外務省関係の役割も多数存在しております。

さらには地球環境との関連があります。この面では特に、他のエネルギーとの関連も総合的に考える必要があります。これは主として環境省の担当部門でしょうが、CO2問題の国際的な対応をしながら、エネルギーの種類の選択をする必要があります。これらは個々の省庁だけで進められる問題ではないと思います。

サイクル機構や、これからできる新組織が充分能力を発揮できる体制にするためにも、矢張り総合的な管理体制からの指示や管理が必要ではないかと思います。この組織は大きいものである必要はありませんが、国のこの分野における経綸を行うものであります。識見と説得力のあるメンバーを、どう集めるかが問題ですが、官民の区別をすることのない、政府中枢の識見を期待します。また実力のあるシンクタンクが、この下部組織として必要であると考えております。

 

2 もんじゅの事故と開発協力のあり方

 

おっしゃるように、もんじゅのトラブルの発生した部分は私のおりました石川島播磨重工業が設計、製作したものであります。石川島播磨重工は事故が発生しました時、直ちに破損状況の調査、破損部分の改修などを、大量の人員と資金とを投入して行いました。また破損した熱電対のケースの破断原因の、日本機械学会が中心になって行われました検討に協力しました。破断の原因は巷間言われております、カルマンボルテックスなどではなく、当時知見の乏しかった平行渦による配管内円柱構造物の流力振動にあって、現在はこの現象に対する評価指針が、機械学会から発表されております。この他に設計上の配慮が不十分な点もあり、当時知見の乏しかった事象が原因であったからといって、私どもに責任がないなどとは全く考えておりません。

「JNCの言うとおりに設計し、製作したので自分は責任がないと言われるのですか」というご発言は全く理解できませんし極めて遺憾であります。事故は起きましたが、その後の対応で逃げるようなことは、何一つしてない筈です。

この話は原子炉メーカーが開発に協力していないということに続いて述べられておりますが、それぞれの企業が、高速増殖炉が国家として必要だから協力しなければおかしいというのは、相当に無理なお話のように思います。メーカーの技術を取り込んでいくためとか、メーカーが研究開発に参画するためには、それらにどう参加するかの体制や、またそれへのインセンティブが持てるような形体を作る必要があります。特に長期にわたる問題でもありますから、精神論だけで片付く問題であるとは思えません。

 

3 過去の問題点の取り込み

 

スーパーフェニックスも含めた、先行炉の技術的問題をレビューし、再発を防止することは、設計、計画での最も大切なことであります。設計や開発の段階で検討してこられたようですが、これからの設計の進展に伴って、更に確認を怠らないようにすることが大切であることは同感であります。

ただ各所でJNCの組織、陣容や対応について、ご不満の意を表しておられますが、それではどうすればいいのかのお話はないようです。若しサイクル機構の運営に改善を求められるなら、具体的で建設的でかつ現実的な提案を用意するなどが必要かと思います。

今サイクル機構の高速増殖炉の開発部隊の私どもの接触している方々は、熱意もあり、技術的にも高いものを持っておられるように思います。今回提案されているナトリウム冷却型高速増殖炉の概念などは優れたものだという評価を受けております。ご意見のように更に改善することは望ましいことでありますが、このアイディアの実証試験など、常陽や、もんじゅを使って是非早い時期から、確かめて欲しいと願っております。大切なのはそういったことがすぐ出来て、これらの方々の研究開発がやり易いバウンダリーを作ることであります。

 

4 重点的な開発

 

ことを進める場合、一つの目標にひと、もの、かねをどう集約するかが、成功の鍵でありますが、その研究が進む過程において、なるべく早い段階で、真に成功するか否かを見抜き、適切な対応をすることの重要さは、おっしゃるとおりであると思います。

先ほど申し上げた、内閣内の組織がその役割を果たす最も適当な司令塔であろうかと考えております。国としての司令塔の重要性はこの面でも考えられます。

今こういったエネルギー問題を総合的に対処する、内閣府に直結する組織の必要性について発言しておりますが、なかなか声が届きません。ご支援いただければ幸いでございます。