050109 Re:「我が国の高速増殖炉開発に関する提言案」[第4次案]について


標記提言案(第4次案)については、昨年12月23日発のメールで、コメントや追加的修正提案のある方々は1月10日頃までに提出して下さるようにお願いしておきましたところ、その後多数の方々から色々貴重なコメントや修正提案をいただきました。それらは、
目下タスクフォース(主査:柴山哲男氏)における最終案(第5次案)の作成作業上十分考慮され、適宜反映されることになっております。なお、右最終案は近日中に当会会員及び「エネルギー問題に発言する会」の会員各位に提示し、正式にこれに賛同される方々の署名をお願いすることにしております。
ところで、本日添付ファイルのようなコメントが特別会員の奥出克洋氏から寄せられました。非常に有益なコメントと思いますが、若干分量が多いので、その一部を以下のとおりご披露します。ご参考まで。関心のある方は是非全文をご覧下さい。
--KK
 
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「我々の提言に幅を持たせる必要が有るのでないか?」    
                            奥出 克洋


(3)   米国、EU内の、原子力先進国、並びに 日本、の 国々で、それぞれの国に於いて、原子力、或いは、原子力産業に与えられている地位を比較してみると、日本では、“原子力は信頼性の高い、最も重要なエネルギー源である”とは言われてはいるが、実際に与えられている地位は、“電力産業の、幾つかある発電手段の内の一つ”にしか過ぎない、とも言えるのに対し、米国、及びドイツを除くEU内の原子力先進国では、“先ず国家の安全を、直接、或いは間接に保障する手段としての地位”が与えられ、ある意味では、付随的に、“電力事業の発電手段の一つ”としての地位が与えられて来ていると考える事ができる。
即ち、日本の現状、特に、原子力発電立地点の地域の首長が、国の政策を無視して、勝手にものを申す事が出来る上、其れを、マスコミが広く議論を求める事無く、単純にバックアップしても、誰も不思議に思わないのは、むしろ、我々自身が、原子力に、“電力産業の、幾つか有る発電手段の内の一つ”としての地位しか与え来なかった事に、原因があるのではないかとも考えられる。
かかる事態の改善のために、日本の社会における原子力の地位、或いは、格付けの、向上を図るに当たっては、現存の平和憲法の下、原子力の持つ軍事力としての効用を、前面に押し出し、強調すること不可能であり、又、決して許されるべきことではない。
ある意味では、かかる、日本として与えられた特殊条件下で、既に低下し、更に悪化の傾向にある原子力の地位の向上、或いは、事態の改善を図るためには、マスコミの考え方に大きな影響力を持ち得る一般大衆を、マスコミを経由せず、直接、何らかの形で啓蒙し、一般大衆に、原子力により幅広い視野での、親近感を持って貰う必要が有ると考えられる。

(4)   世界の有力自動車メーカーは、燃料電池車をハイブリッド車の次世代の車両と位置付け、研究開発にしのぎを削り、欧米各国では、クリーン燃料である水素の、大量生産手段としての原子力の利用が研究開発の対象として取り上げられ、又これとは別に、地域分散型の水素供給を目的とした原子炉の原型ともなり得る、電気出力10MWの、30年間燃料交換を必要としない、4S型、封じきりナトリウム冷却炉を用いた発電用原子力発電設備を米国アラスカ州がレナ市に2015年頃の発電開始を目途に建設する計画が進められている。(2005年1月6日付け Nucleonics Week)

(5)   原子力をめぐる客観情勢は急速に変化しつつあり、一方その技術は過去の経験の上に一つ一つ積み重ねていくべきもので有るとは言え、一般大衆の忌避の対象となっている限り、その研究開発の継続、推進の合意形成は、非常に困難であろうと予想される。
一般大衆を、マスコミの手を経る事無く、直接、原子力に“Expose”出来る場面として、当面は、クリーンエネルギー源としての水素と、水素を燃料とする公害の全く発生しない燃料電池車の活用が、容易かつ効果的ではないかと考えられる。

(6)   我々の第4次の提言に 一般大衆に受け入れられやすい“クリーンエネルギーとしての水素への原子力のかかわり”と、燃料電池車の開発に、多大の努力を払っている自動車業界からの協力が得やすいような表現を、前文の部分に含める必要が有るように思われる。
                                                (2005年1月9日)


PS:
我々の提言が、強い影響力を持ち得るためには、自動車業界等の側面協力も必要ではないでしょうか。
一般大衆にも判りやすい、キャッチフレーズも、必要な道具立てではないかと思います。
     奥出 克洋
 

----- Original Message -----
From: Kumao KANEKO
To: Undisclosed-Recipient:;@m-kg311p.ocn.ne.jp
Sent: Thursday, December 23, 2004 4:40 PM
Subject: EEE会議(我が国の高速増殖炉開発に関する提言案[第4次案]について)  ★★重要★★


皆様

標記のメール(12/09)でお届けした「我が国の高速増殖炉開発に関する提言案」(第3次案)につきましては、その後多くの会員諸氏から貴重なコメントや修正提案をいただきました。ご協力、誠にありがとうございました。

これらのコメントや修正提案を勘案し、タスクフォース(約30名のメンバーで構成)においてさらに連日議論を重ねた結果、このほど添付ファイルのような「第4次案」を取り纏めました。

つきましては、年末年始のご多忙な時期ながら、早速ご検討いただき、何ら追加的なコメントや修正提案があれば、明年1月10日までに小生及び柴山哲男氏(タスクフォース主査shibayama@mvh.biglobe.ne.jp)宛に送信していただければ幸いです。現案に修正箇所を書き込まれる場合は、必ず当該部分を赤字にするか下線を付して下さい。

なお、前信でも申し上げましたように、今回は、当EEE会議と姉妹関係にある「エネルギー問題に発言する会」との共同作業のスタイルをとっており、同会の会員にも積極的に議論に参加していただいております。

今後の作業スケジュールとしては、第4次案に対する皆様のコメントや修正提案を取り入れた第5次案(最終確定版)を1月半ばまでに全会員に送付し、賛同される方々のご確認をいただいた上で、これを連名で公表し、関係各方面に提出する予定です。この辺の手順は前回の「我が国の核燃料サイクル政策に関する提言」(04/06/11公表)のときと同じ要領で、賛同者はあくまでも個人の資格で(つまりEEE会議としてではなく「有志会員一同」という形で)参加していただくことになりますので、お含みおきください。その他不審の点があればいつでもご照会下さい。

草々
金子熊夫拝