050121 「我が国の高速増殖炉開発に関する緊急提言」:  賛同者・非賛同者のコメント

 
標記提言は19日付けで公表され各方面に提出されましたが、この機会に、@提言に賛同された方々、及びA賛同されなかった方々からいただいたコメントをご紹介します。「取り纏めご苦労さま」「立派な提言である」というような儀礼的なコメントはすべて割愛しました。順不同ですが、ほぼ受信された順になっております。所属・肩書き等はご当人が明記されたものです。念のため。
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@賛同された方々のコメント:
 
 
藤井 晴雄氏(元(社)海外電力調査会調査部主管研究員):
エネルギー資源の無い日本にとって、原子力発電に頼る以外に日本の将来はありません。ウラン資源も、現在の軽水炉、重水炉に頼るウラン235だけに頼っていては、ウラン資源は近い将来に枯渇します。核融合に頼る以外に、将来人類が生きて行くためのエネルギーを供給する良い方法はありません。今こそ、高速増殖炉を開発してウラン資源を有効利用し、核融合時代につなぐ必要があります。今が、高速増殖炉開発を積極的に進める最後のチャンスです。
 
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斎藤健弥氏(元、東芝、原子力事業部、燃料サイクル部長):
 
再処理と高速炉は車の両輪と思っています。再処理が動き始めました。高速炉も、早く再開することを期待してます。
 

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田中義具氏(元軍縮代表部大使):
   
1. 本提言に賛同するに当たり、天野牧男氏からの1月14日付メールが非常に参考になりました。
2.天野氏の同コメントにもありましたが、原子力問題を推進するには「綜合エネルギー諮問会議」のような討議の場がどうしても必要であり、EEE会議としては、今後ともこうした会議の必要性を粘り強く主張していくべきではないかと考えます。
3.「もんじゅ」の地元市民への広報活動については、単にその重要性を提言で強調するだけでなく、深い知見を有し自由な立場にもあるEEE会議会員の方々ができるだけ多く自ら福井へ出かけて地元市民と対話を重ねることができるような機会を、EEE会議としても積極的に作っていく事を考えては如何でしょうか。
 

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中神靖雄氏(三菱重工業株式会社 特別顧問):

「実証炉の建設スケジュール」のところに、いきなり「2025年頃」と出てくるのは唐突に感じられるのでは?「2030年以降に商用炉導入の可能性を考え、それまでに数年の運転実績を有するためには」という前提が抜けているように思いますが如何でしょうか?
 
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黒木義康氏:
    
1.
今は、とにかく前に進めよとの意思表示が大切と思います。細かな事かもしれませんが、実証炉のコスト評価としてメーカに見積を取るとの提言ですがこの点に関しては必ず競争の原理を働かせて同じ機器を数社にさせる必要があると思います。価格は一定ではありませんから。

2. 先の石井吉徳先生の講演ビデオ 興味深く何度も見させて頂きました。 今回の高速増殖炉開発に関する提言もそのあのEPR手法を取り入れた評価をしてみたら如何と思った次第です。
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竹之下正隆氏(前バブコック日立):
 
将来のエネルギー資源をどこに求めるか、わが国の特殊性を考えた場合、自然エネルギーや再生可能エネルギーを考慮しても高速増殖炉に頼るしかないと思っております。難しい技術ですので、開発に際しては一般の人に安心してもらえるような慎重な努力をお願いします。
 
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八巻秀雄氏(元日立製作所):

実証炉基本仕様決定に当たり、長年にわたる世界各国で積み上げた実績を十分に考慮すること。(具体的には現状を知りませんが、机上の空論と実験室的試験で走る危険性を感じます。)

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後藤征一郎氏((株)東芝 首席技監):
 
電力業界は現在の軽水炉路線を長く維持し、高速炉路線には賛成しながらも先送りの意向が強いように見受けられますが、技術力の維持向上のためにも燃料サイクルの完結を目指して開発は着実に進めることが肝心と考えています。
 
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伊藤 睦氏(元東芝プラント建設社長):
 
実証炉の実施設計、建設は、もんじゅの運転経験(少なくとも2年間の)を十分にとりいれ、かつ新規の主要機器は確証試験を経て採用する等、着実な開発、建設計画を立てることを望む。(実証炉の建設時期を2025年とする合理的な理由はない。)
 
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天野牧男氏(元石川播磨重工業株式会社): 
実証炉の建設にあったっては、充分な資金を持って入念な建設、試験研究を行うことが、レベルの高く、コスト競争力のある実用炉の計画が可能にするという提案が採用されていないのが残念ですが、基本的に現在この提案は必要だと思いますので、賛同します。
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永崎隆雄氏(日本原子力産業会議調査役、元JNC北京事務所所長):
新しい原子力長計は人類の繁栄と幸福を目指す高い目標を持つこと,、高度の先進技術開発や知識の創造の要素を持つこと、持続可能な繁栄を導くエネルギーや新産業を生み出すことが大切である。 
新しい目標はアジアの繁栄を築く中でわが国の繁栄と安全保障を図ること。
Atoms  for Peace and Sustainable Prosperityで、アジアを日本人の豊かさに引き上げること。紛争、テロの根底にある貧困をなくし、核兵器を無意味化することである。
この目標達成には原子力の導入が必須であり、原子力は経済性、持続性、核不拡散性、環境保全を常に改善していくことが必要である。
持続可能な繁栄を築くには第一に軽水炉核燃料サイクルの確立、第二にそこから得られるプルトニウムを基にした高速増殖炉サイクルの確立、第三に核兵器転用の危険性のない高速先進炉リサイクルパークの建設が不可欠である。
高速炉開発においては我国のブランド(知的所有権)を確立することが大切である。
 
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吉田康彦氏(大阪経済法科大学教授):
<提言3>「国際協力を有効に活用せよ」という日本語はおかしい。「国際協力」というのは「行為」(action)であって、「行為」を活用するという表現は文脈上不適当。「活用」すべきなのは、あくまでも「事業」「計画」である筈。「国際協力を積極的に(あるいは「強力に」)推進せよ」と訂正すべきと思います。

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辻萬亀雄氏(元兼松株式会社 エネルギー本部):
 
化石燃料は将来の工業原料に、ウランはエネルギー資源としての観点から、次世代の有力なエネルギー資源候補の開発段階の位置づけとして、本提言に大同小異の立場で署名します。
 

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中川政樹氏(丸紅ユティリティ・サービス(株)常務取締役営業本部長):
昨今の世界のエネルギー事情、我が国のエネルギーセキュリティーに関する音痴振りから、原子力エネルギーの必要性を日本人の生き残りのために必要と感じ、そうであればこそ高速炉も当然の選択として含まれるべきと考え、賛同致します。
 
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小林 弘昌氏:
 
賛同致します。ただ、このような「提言」が、”もんじゅ”が停まった翌年あたりに出されていれば、と思えてなりません。勿論、「発言する会」も存在しないし、「高速炉開発」を口に出すのも肩身の狭い感がする時期でしたがーーー。”もんじゅ”も技術と、技術者(特にメーカーサイドの)が薄くなり、今から順調に推移しても、恐らく、出力上昇までには、さらに、3、4年は掛かりましょうから、停止後、10数年が経緯しますので、本当に問題なく立ち上がるかどうか、いささか忸怩としたところがあるのも事実です。
 
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岡部 登氏(BTC社長 ):
 
「もんじゅ」の早期再開に賛成です。ただ、工事および試運転関係者の方に 、よくよくお願いしたのですが、’95年当時から見ると、世の中のもんじゅ、あるいは原子力を見る目は大きく変わりました。この世間の変化、厳しい見方を謙虚に、真摯に受け止めて、業務を進めていただきたいと思います。万が一にも、ないと思いますが、おごりは禁物です。
 
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小山謹二氏((財)日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター客員研究員):

メディア(プレス)の賛同を得ることが肝要。
 
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匿名希望氏:
 
Pu利用はFBRあってのもの。プルサーマルだけではサイクル政策の成立はあり得ない!と当事者としてひしひしと感じております。


 
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A賛同しないと回答された方々のコメント(親展のものを除く):
 
 
石井陽一郎氏(元東電原開研、元PNC Na技術部):
 
FBR実証炉はいわば商用機であります。これまでの六ヶ所の他例があるように 電力経営の事業の一環として、完全民営の形で運営されている。FBR実証炉について提言案の、推進の考えは了解するも、国が実施の細部に入るかの提言は瑣末な問題としては、みのがせない。国が細部に入りすぎると、却って責任の不明確、時間のかかりすぎ、コスト増加になることを危惧する。国は民間と調整の上、大所からGoの旗を振ればよいと考えます。
 
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石井 亨氏(元三菱重工、(株)エナジス):
JNC開発路線を概ね追認するベースで形作られている今回の提言は、今後の 高速増殖炉開発をミスリードすることに繋がるだけで、高速増殖炉実現に向けての真に有効な提言にはなりえていない。
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神山弘章氏:
「わが国の高速増殖炉開発に関する提言」に係わる署名については下記の理由により辞退致します。
 
1. 第5次案は提出先が不明瞭である。わが国の原子力政策改善と核燃料サイクル機構(JNC)の研究実施計画の改良案などが混在している。提出先に自己裁量権のない事項について提言することは無意味である。例えば、JNCが自ら機構解体をするだろうか?「誰に」「何を」提言するかが明らかでない。
 
2. 提言の新規性が明確に表現されていない。新規性があったとしても、一般説明に埋もれて理解しがたい。既に知れ渡っている事実を述べても、提言にはならない。例えば、高速炉の早期開発については竹内氏、天野氏などが発表されている。第5次案は提言と言うには「羊頭狗肉」である。原子力の現状改善を強く望むならば、「自己表現」を犠牲にしても、「政策改善のための具申」を真剣に考えるべきではないか。
 
追伸:
私は啓蒙のために、正しい知識を繰り返し発表することには賛成である。我々の活動をより良くするために、嫌われるのを覚悟で意見を述べているのである。私の考えについて冷静な御批判を頂ければ幸いです。
 
kouyama@mri.biglobe.ne.jp
tel&fax:03-3480-2667
 
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古川和男氏:

「わが国の高速増殖炉開発に関する提言」に係わる署名については下記の理由により辞退致します。

 この件は、言うまでもなく日本社会のみというより、今世紀世界の運命を左右するものと考えます。従って、発言を急ぐよりもっと濃い内容論議が無いと世を動かすには不十分と思います。今後の運営に期待しますが、取り合えず 既に指摘してきた事ですが、簡潔に2,3点を指摘して置きたいです。専門家集団と思われる「エネルギーに発言する会」の一層のご尽力に期待したいです。

1)全ては「経済性」に帰します。 それに付き、先ず1976年のFord財団「Mitre−Report」が「研究室に戻すべし」と結論を出し、Carter大統領も賛同して福田首相に手渡し、井上五郎使節団長にも「何でそのようにプルトニウムに固執するのですか? MSBRもありますよ。」と言った訳です。最も先進的なFBRは Superphenixだった訳ですが、それが完成した1987年以後についての実用採否に関する当事責任者だった仏電力庁(EdF)Jean Bergougnoux総裁は「二号機を作れば破産。古川案を検討したい!」と古川に提案した事の意味する所は重大だった訳です。それを政治的に廃止されたと主張する最後の「天野氏の応援提言」は誠に「政治的」です。上記のような表現は、OBだからとご理解下さい。もっと厳しい論議の展開を期待するからです。

2)R&D体制については、折に触れ四十年近く云って来たことですが、「project-leader」を明確にすべしというべきではないですか。また、Na技師長を専任すべし、と言い続けてきました。豊田氏が最後まで警告された「新幹線との違い」は此処にあると思うからです。

3)もう一つ、指摘されねばならないのは、プルトニウム問題です。豊田氏(私も少し)以外には殆ど発言無く、皆さん敬遠していますが、ElBaradei提言を待つまでも無く(それが直ぐには実現しないにしても)、これからより厳しい国際話題になるのは明白です。それえの備えが聞えてきません。其処において、FBRの位置付け、他の炉型との相対評価が当然必要です。

 今は、これ以上詳しい論議は控えますが、少数意見を 軽視若しくは哀れむのではなく、厳しく受け止めて論議するのでなければ、正に地球は行詰るのではないでしょう
か。 その要を為すのが正にこの「原子力問題」である、とのEEE会議の認識を更に深めてもらいたいものです。