◆東海地震・津波で大丈夫か 浜岡原発:中部電力「技術力で克服可能」
 (東京新聞、2005年1月22日)
 
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050122/mng_____tokuho__000.shtml


 新潟県中越地震、スマトラ沖地震津波と自然の脅威が暴れている。そうなると、いや応なく考えさせられるのが東海地震だ。特別措置法がかかる被害想定地域の中でも、特に気になるのが五基の原子炉。中部電力(中電)・浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)だ。「技術力で地震、津波は克服できる」と同社は豪語するが、専門家の間では疑問の声も。対策は万全なのだろうか。 (大村 歩)

■インドの原発は津波で緊急停止

 スマトラ沖地震津波は、インド・チェンナイ(旧名マドラス)の近郊カルパカムにある原子力発電所をも襲っていた。この原子力発電所は複合核施設で、加圧水型重水炉二基、実験炉一基、再処理施設、集中廃棄物管理施設、建設中の高速増殖炉一基がある。

 現地のインド人ジャーナリスト、シュリ・ラーマン氏らがインターネット上で公開した報告によれば、この原発施設内にも津波が流れ込み、人数は不明だが職員らが死亡。職員住宅でも六十五人が死亡した。

 別のインド国内の報道によれば、重水炉二基のうち一基は点検のため停止しており、運転中の一基は緊急停止した。各施設に損傷はなく放射能漏れなどはなかったとし、インド政府は「安全宣言」を出した。

 しかし、ラーマン氏は「実際に放射能漏れがなかったのかどうか分からない。再処理施設、集中廃棄物管理施設の安全の保証は発せられていない」という。

 浜岡原発はこのカルパカムと同様、海辺に立地している。さらに東海地震では津波の発生も想定されている。中電はこの事態をどうみているのか。

 同社浜岡地域事務所の藤明総括・広報グループ部長は「インドの原発がどんな立地にあるのか、津波対策はどうだったのか。それらが分からないので、評価のしようがない」と話す。

 同事務所によると、浜岡の場合、全長約二キロ、幅約六十−八十メートル、高さ約十−十五メートルの浜岡砂丘の一部が津波から原発を守る防波堤になっているのだという。

 一八五四年に起きた安政東海地震で浜岡を襲った津波の高さは六メートル。この高さなら、砂丘を越えて津波が原発敷地内に入ってくることはない。原発の主要な施設は六−八メートルの地点にあり問題はないとする。

 ただ、浜岡砂丘は全体として浸食されている。同社も「波打ち際の移動は若干ある」と認める。スマトラ沖地震津波では、十数メートルの高さの津波も発生した。

■「浸水しない」が施設には防水扉

 同事務所は「(波が)砂丘を越えてくる想定はしていない」とする。ただ、そうはいえ、原子炉建屋には防水扉が設置されている。

 ともあれ、浜岡原発で心配されるのは、津波だけではない。当然ながら、津波を起こすそもそもの地震の方が問題とされている。

 近年、その火付け役となったのは東海地震の「名付け親」ともいえる二人の地震学者だ。一人は地震予知連絡会前会長の茂木清夫東大名誉教授、もう一人は東海地震発生の主唱者で国の中央防災会議「東海地震に関する専門調査会委員」の石橋克彦神戸大教授だ。

<メモ>浜岡原発

 静岡県御前崎市(旧浜岡町)佐倉に立地。1976(昭和51)年に1号機が営業運転を開始し、以後、今月18日に営業運転を開始した5号機まで増設。100%出力時の発電出力は499・7万キロワット。現在1−3号機は点検中で停止、4号機は調整運転中。01年11月には、1号機で緊急炉心冷却装置系配管で、国内初の破断事故を起こした。


(提供:熱田利明)