050131 南アフリカで次世代発電炉の小型高温ガス炉PBMRが始動
 
核兵器開発を断念した後も平和利用の面で独自の原子力開発を続けている南アフリカ共和国の最近の状況です。本日配信された「原子力オピニオン最新情報」(経済産業省発行)の「海外の話題」に掲載されております。ご参考まで。
--KK
 
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次世代発電炉の小型高温ガス炉、発電設備の実証へ
―南アフリカ共和国―
三菱重工業、主要設備の基本設計などを受注


南アフリカ唯一の原子力発電所、クバーグ発電所
(加圧水型軽水炉、出力94万5000kW×2基)。
このサイトにPBMR原型炉の建設が予定されています。
=(社)日本原子力産業会議提供

 三菱重工業は昨年12月13日、南アフリカのPBMR社からPBMR(小型高温ガス炉)の主要設備であるヘリウムタービン発電機の基本設計と、炉内構造物の概念設計レビュー作業を受注したと発表しました。

 炉内構造物の概念設計レビューを2005年4月までに、ヘリウムタービン発電機の基本設計を2006年9月までに実施する予定です。いずれも同国ケープ州のクバーグ原子力発電所サイトに建設される予定のPBMR原型炉(出力11万kW)向けで、原型炉の運転開始は2010年の予定です。

 この原型炉の実績が、安全性と経済性を両立した小型高温ガス炉の実用化を左右するため、内外の注目を集めています。

 PBMRは商業炉段階では16万5000kWの出力が見込まれているモジュール方式(組み合わせ型)の小型高温ガス炉で、輸出も視野に入れた次世代発電炉として、南アフリカ電力公社(ESKOM)によって1993年から実用化の検討が進められてきました。

 98年には正式に開発計画がスタートし、現在はPBMR計画の事業主体としてESKOMが中心となって設立したPBMR社が、具体的な作業を進めています。PBMR社には英国原子燃料会社(BNFL)も資本参加しています。

PBMRに賭ける南アフリカ

 石炭資源に恵まれた南アフリカでは、総発電電力量の9割以上を石炭火力発電でまかなっています。しかし需要が増加傾向にあるケープタウン近郊や東西沿岸部では、東北内陸の産炭地から遠く、輸送費がかさむため、需要地に近接したところでの立地が可能な発電設備を必要としていました。そこで注目されたのがPBMRです。

 PBMRは、数10万個の黒鉛球状燃料からなる炉心とヘリウムタービンを組み合わせて1つのモジュールとし、それを需要の伸びや分布に合わせて1サイトに複数のモジュールを設置したり、1モジュールを分散型電源のように配置するなど、小回りの利く運用が可能です。炉心溶融の心配もなく、安全性が極めて高いとされています。またシステムが簡素である上に小型であるため、プラント建設など初期投資が少なく、発電コストも安いと考えられています。

 南アフリカとしてはPBMRを実用化し、国内の電力供給の安定を図ると同時に、海外諸国へPBMRを大規模に輸出して雇用確保と外貨獲得に結びつけたい考えです。

 PBMR社は市場分析の結果として、PBMRの世界市場における潜在需要を、今後25年間で最大5パックプラント(1サイトに5モジュールを設置)で235サイト、基数にして1175基程度になるとの野心的な試算も示しています。もちろんこの試算を額面通り受け取るわけにはいきませんが、PBMRは送電線が未整備な地域に適した炉型として途上国での需要が高いのは事実のようです。

((社)日本原子力産業会議 石井敬之)