◆もんじゅ改造工事実施を了解 福井県知事、文科相に伝達

        (産経新聞  2005/02/06)

 西川一誠福井県知事は6日、中山成彬文部科学相と県庁で会談し、1995年12月のナトリウム漏れ事故以来、停止したままの高速増殖炉原型炉もんじゅ(同県敦賀市)について、運転再開の前提となる改造工事の実施を了解すると伝えた。
 県は一両日中にも、設置者の核燃料サイクル開発機構に了解を伝達する方針で、核燃機構は直ちに工事の準備に入る。
 もんじゅをめぐっては、周辺住民らによる行政訴訟が最高裁で係争中だが、国が推進する核燃料サイクル実現に重要な役目を果たすとされる高速増殖炉は、事故から10年目にようやく、運転再開へ向け動きだす。
 西川知事は了解の条件として、北陸新幹線整備や原子力研究拠点づくりへの協力を要望。昨年8月の関西電力美浜原発3号機の死傷事故で、県と国などとの協議が中断していたが、年末には新幹線福井駅の工事が認可され、先月末には拠点づくりの骨子がまとまった。
 知事はまた、今月3日に殿塚猷一・核燃機構理事長とも面談。同理事長から地元に軸足を置いた態勢整備で前向きな回答を得たこともあり、了解の環境が整っていた。
 会談で、中山文科相は拠点づくりに約19億円の予算を計上し、もんじゅを研究開発の中核施設と認識しているなどと説明。これに対し、西川知事は「(もんじゅを所管する)文科省としての責任ある立場を示されたと理解する」と述べた。
 実施される改造工事は17カ月間の予定で、費用は約180億円を見込んでいる。ナトリウム漏れを早期に検出する機器を設置するほか、ナトリウムを迅速に抜き取れるよう配管を増設する。
 一方、もんじゅの原子炉設置許可の無効確認を求めた行政訴訟では、3月に最高裁で弁論が開かれることが決定。名古屋高裁金沢支部が一昨年1月に言い渡した原告全面勝訴の判決が見直される可能性が出ている。(共同)

 ■高速増殖炉原型炉もんじゅ ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用し、燃やした量以上のプルトニウムをウランから取り出すことができるため「夢の原子炉」とも呼ばれる。実験炉の次の段階に当たり、1994年4月に初臨界。ウランの有効利用が可能で、国が進める核燃料サイクル政策の中で重要な役割を担う。冷却材のナトリウムは空気に触れると燃焼するため、安全管理が難しい。(共同)

 ■ナトリウム漏れ事故 1995年12月8日、高速増殖炉もんじゅの二次系配管の内側に設置された温度計のさや部分が折れて冷却材のナトリウム約640キロが漏れ、火災が発生。ナトリウムの流れで、さやが振動した疲労破損が原因で、設計ミスとされた。当時の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)は、事故後の現場立ち入り時刻の虚偽報告や現場撮影ビデオの大幅カットなど隠ぺい体質を批判された。(共同)