◆もんじゅ判断、最終段階に

   (朝日新聞福井県版 2005/2/7)

西川一誠知事(左)と面談する核燃機構の殿塚猷一理事長=県庁で
改造工事 知事了解へ

 核燃機構が3日、10月に日本原子力研究所と統合してできる新法人「日本原子力研究開発機構」における、高速増殖原型炉「もんじゅ」の位置づけの強化案を明らかにしたことで、県は「もんじゅ」の改造工事計画を了解するための最終調整の段階に入った。95年12月のナトリウム漏れ事故から運転を停止していた「もんじゅ」はいよいよ運転再開に向けて一歩を踏み出すことになる。
(今林弘、重政紀元)


新法人、敦賀に本社機能

 西川知事はこの日、県庁で核燃機構の殿塚猷一理事長と面談。殿塚理事長は、(1)もんじゅの安全確保対策の強化(2)2法人統合による新法人の設立(3)原子力、エネルギーに関する研究開発拠点化の推進(4)地域振興、の4点について西川知事に説明した。

 とくに、西川知事が「もんじゅ」改造工事計画の了解の条件としていた新法人の態勢については、「福井県に軸足を置いたさまざまな取り組みを進めたい」と述べ、敦賀本部に本社機能をもたせ、中部・西日本地区の研究拠点と位置づけて、引き続き、もんじゅの研究開発に力を入れると強調。「職員は新法人設立時に30人増やし、もんじゅ運転時にさらに70人増やす」と述べた。

 西川知事は「実務的なつめもいろいろあると思うので、詳細内容を精査、確認したい」と答え、面談後の報道陣の質問に対しては「話は承った。所管省庁の文部科学省にも確認したい」と述べた。記者会見した殿塚理事長は「もんじゅは国際的にも期待が大きい。安全を確保しつつ十分な成果を得られるように組織体制を整備したい」と改造工事入りに期待をにじませた。

 運転停止から10年目になり、定年退職などで経験のある技術者が減っていることについては、(1)改造工事期間中の2年間に新人に対して重点的な教育を実施する(2)以前、核燃機構に出向してもらった電力事業者に再出向を依頼する、などの対応を考えているとした。

国と「開発不変」確認 知事

 西川知事は、昨年3月に関西電力高浜3、4号機でのプルサーマル計画、日本原子力発電の敦賀原発3、4号機の建設工事について両社に了承を伝え、原発立地県としての残る大きな課題は、もんじゅ改造工事計画の了解だけだった。

 西川知事は昨年5月26日に上京し、河村建夫・文部科学大臣(当時)、中川昭一・経済産業大臣と3者で協議し、国のもんじゅの開発姿勢が変わらないことを確認した。昨年9月の内閣改造をみすえながら了解の時期を検討していたとみられるが、昨年8月9日の関電美浜原発3号機の蒸気噴出事故で検討作業を中断。

 緊急性の高い課題として、関電に対し、県内にある原発の2次系配管の緊急検査や本社原子力事業本部の県内移転を求め、国に対しては原発の老朽化対策をつくるように要請した。

 これに対し、関電は美浜3号機以外の原発の配管検査を終え、原子力事業本部の県内移転を言明。国も原発の老朽化対策づくりに乗り出し、事故後の対策は昨年12月に一区切りがついた。

 これを受けて西川知事は同12月の県議会で「年が明ければ判断できる条件が整うのではないか」と述べ、改造工事計画了解の条件として、もんじゅなどの原子力関連施設を利用して地域活性化を図る県のエネルギー研究開発拠点化計画に対する国や核燃料サイクル開発機構などの電力事業者の協力と、核燃機構と日本原子力研究所が統合して今年10月に設立される独立行政法人「日本原子力研究開発機構」がもんじゅの開発姿勢を維持することの保証の二つを挙げた。

 前者の条件については、1月29日の計画策定委員会で示された骨子の中で、国や核燃機構の協力が明示された。残る後者の条件は3日に核燃機構の殿塚理事長から前向きな回答を得た。

 西川知事はこれらの内容を精査したうえで、中山成彬文部科学大臣との面談も視野に入れ、了解の意思を表明する時期を検討するとみられている。

■新法人における「もんじゅ」の位置づけ強化■

(1)新法人で唯一の本部を敦賀に置き、経営などの本社機能を持たせる。本部長には副理事長をあてる

(2)本部長のスタッフとして経営企画部を設置する。事業計画、国際協力などの企画立案、県の研究開発拠点化構想、中部・西日本地域の産官学との共同研究を行う

(3)副理事長は敦賀本部、中部・西日本地区の事業所を統括し、理事長を補佐する

(4)高速増殖炉や原子炉廃止措置の研究開発を企画、運営するために統括者とそのスタッフ組織の企画室を置く

(5)新型転換炉「ふげん」などを利用し、高経年化研究をするための体制を強化する

(※組織名は仮称)