◆もんじゅ改造後の展望示せ: 日経社説
 
  (日本経済新聞社説 2005/2/8)

 福井県の西川一誠知事が高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の改造工事を了解し、1995年12月のナトリウム漏れ事故で運転を停止した同炉が運転再開に向けて動きだすことになった。最高裁で設置許可無効訴訟が係争中で、再稼働にはまだ関門があるが、少なくとも計画進展に必要な条件は整う。ただ、もんじゅを運転再開するにしても、高速増殖炉は実用化の道筋が見えておらず、開発をずっと続けるのか、それとも原型炉以降は断念するのか将来展望を早急に明確にする必要があるだろう。

 高速増殖炉は核燃料を燃やしながら、核燃料となるプルトニウムを生み出す。このため、計画当初は「夢の原子炉」としてもてはやされ、もんじゅは発電炉の先駆けとなるはずだった。しかし、事故で安全性に不安を持たれたうえ、経済性の点でも建設費が約5900億円もかかり、事故で運転を停止していても炉の維持に年間80億円程度もかかるなど、魅力がかなり色あせている。

 このため、2030年ごろに目指していた実用化は遠のき、実証炉の計画は立ち消え状態になっている。原子力委員会は昨年、原子力発電所の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを利用する核燃料サイクル路線の維持を決めた。だが、プルトニウムを効率利用する高速増殖炉の実用化は、判断を2015年まで棚上げすることにし、開発計画をあいまいなままにしている。

 巨額の開発費を投じたもんじゅを放棄するのは難しく、とりあえずは改造して運転を再開しデータを集めるというのが国や核燃料サイクル開発機構の考えだが、もんじゅの位置づけはいつまでもあいまいなままにはできない。エネルギー戦略や核不拡散などの観点から日本のプルトニウム利用計画をどう考え、高速増殖炉の開発をどうするのか。政府、電力業界、原子力委員会はもっと議論を深めるべきではないか。

 福井県は改造工事了解にあたり国に安全性確認や研究拠点化への協力を求めたが、地元では北陸新幹線の延伸など地域振興策への配慮に期待が大きい。原子力立地で地元への気配りは重要だが、事故の後始末で地元対策費が膨らむと、計画推進の意義が一層問われることにもなる。