050208 「もんじゅ」改造工事事前了解に関する地元の意見(賛否両論)


「もんじゅ」改造工事事前了解に関する地元各方面の意見(賛否両論)をご紹介します。朝日新聞福井県版(2/8)から。
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地元の敦賀市長「運転再開に議論必要」

 敦賀市の河瀬一治市長は中山文科相を迎えるために出向いた核燃機構の施設で会見し、「市としては、より安全な施設にするための工事ならやってもいいとの考えをこれまでも表明している」と歓迎の意向を表明。運転再開については、「工事と運転再開は別で、再開に向けてはいろいろと議論が必要だ。工事には2、3年かかるのだから、終わってからの判断になる。(もんじゅ訴訟の)最高裁の判断の行方をまず見極めたい」と語った。


世界をリードできる・重要性高い・地元産業活性化期待

大阪大名誉教授の宮崎慶次さん
 運転再開に向けて動き出したことは研究開発の面でも非常に重要だ。計算で推測できることもあるが、高速増殖炉の運転実績を積むことが求められている。このまま運転が再開されれば、研究開発で世界をリードできる。安全性については、改造工事で、万が一のトラブルにも備えた窒素注入設備なども導入する。様々な意見に応えて本来は求められていない事項も盛り込まれている。安全性を強化したうえで、安心にも配慮しているといえる。


元白木区長の橋本昭三さん
 より安全にする工事なのだから、地元としてはありがたい。工事後に安全性が確認できれば、なるべく早く運転を再開すべきだ。高速増殖炉の研究開発が進まないまま放置しておくことは、日本の将来にとっても大きな損失だ。もんじゅは研究炉なのだから、運転を再開すれば多少のトラブルはあると思う。ただ、何かが起きたときの対処の仕方を十分に考えておいてもらいたい。ナトリウム漏れ事故の時のビデオ隠しなどの不正は許されない。


県の「もんじゅ安全性調査検討専門委員会」座長を務めた児嶋真平・福井大学長 
 世界のエネルギーを確保するのに必要な技術の研究開発が、再開に向けて動き出すことはうれしい。改造工事をすれば一段と安全性が高まるとの考えは今も変わらない。もんじゅは非常に洗練された設計で実用炉に最も近い原型炉であり、重要性が高い。小さいトラブルは全くないとは言えないが、トラブルを経験して完成された技術ができる。原子炉の放射能が外部に漏れることは起こりえない。


有馬義一・敦賀商工会議所会頭 
 知事が改造工事の着手を判断したのは喜ばしい。地域経済振興のため、直ちに実現が必要な施策として実行を要望してきた。今後、改造工事の推進に当たっては、安全・安心の確立の中で、発注情報を地元に開示し、地元用命の拡大に協力いただきたい。県の進めるエネルギー研究開発拠点化事業の中で、研究者の集積、多様化利用研究の展開、先端技術の地元企業への移転研究を中心とし、地元産業の活性化に積極的に貢献していただきたい。


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県民の世論無視・司法判断あおぐべき・地元住民が犠牲

元京大原子炉実験所講師の小林圭二さん
 はじめから出来レースでこういう結論は予想していた。県民の意思とは大きくかけ離れた結果だ。特に県の最近の動きは新幹線や拠点化構想など安全とはかけ離れたところで進められている。県として独自の姿勢も持たずに大きな流れの中で進めたという印象だ。今回一部を改造しても、最も危険性がある炉心崩壊につながる部分についてはそのままだ。構造的に地震に弱いことも指摘されており、安全とはとても言い難い。

「原子力発電に反対する福井県民会議」常任幹事の中島哲演さん
 もんじゅの安全性に不安を感じている県民世論を無視するようなことは許されない。もんじゅの設置許可を無効とした名古屋高裁金沢支部の判決後に就任した西川知事は最高裁判決を考慮すると言っていたのに、判決が出そうな段階にきて考えを覆してしまった印象がある。「もんじゅは動かすべきではない」「再び危険なことに踏み出すべきではない」というのが県民の素朴な思いではないか。

つるが草の根の会代表委員の坪田嘉奈弥さん
 最高裁判決を待つべきだ。知事は司法と行政の判断は直結しないというが、最終的には司法判断をあおぐというのが、法治国家ではないか。敦賀市民はもんじゅが軽水炉とは違う特殊な原子炉ということを知っている。改造工事をするのだから95年のナトリウム漏れ事故と同じ事故は起きないかもしれないが、それ以外の部分で必ず事故が起きるだろう。住民にとって安全性の保証はない。そんな原子炉は運転してほしくない。

つるが反原発ますほのかいの太田和子さん
 知事が県民のことを大事に考えているのなら、運転再開につながる改造工事を認めることはしないはず。改造工事を認めて、いろいろな利益を得ることが目的で、その後のことを考えていないのではないか。安全性は大丈夫のようなことを言うが、敦賀半島の先端につくったのは、危険が前提だからだ。高速増殖炉開発は多くの国がやめているのに、日本は危険だとわかっても止められない。私たち地元住民はその犠牲になっている。